帰ってきた
現在、午前7時40分。わしはせっせと自転車をこいでいる。
なぜって?
学校に行くからだ。自宅から学校までは、自転車で約20分ほどかかる。そして、わしの通っている学校は、8時15分には、準備を終わらせて着席していないと、遅刻として扱われる。入学して約1ヶ月でいきなり遅刻をする気は流石にない。なので、準備が終わっても約5分以上はゆっくりできる時間をとるようにしているのだ。
…え?なんで学校に通おうとしているのかって?そんなの、学生なんだから当然のことじゃないか。
…え?魔王はどうしたのかって?まぁ…、そのうち機会があればね。
とにかく、わしはあの異世界とよぶべき場所から帰ってきたのだ。
あっちでは、そこそこの日にち(とはいっても、半年くらい)が経っていたのに、帰ってきたときのこっちの世界は召喚された日の翌日だったのには、流石に驚いた。
そして、今日が学校のある日だということにも、驚いた。
まさか、帰ってきてすぐに授業で使う教科書等をカバンに詰め込み、家をとびだすはめになるとは、思っていなかったのだ。
そして、この登校途中に気づいたことがある。それは、何故かこっちの世界に帰ってきても、[魔法]が使えるということである。そのことに気づいたきっかけは、自転車をこぐのがめんどうになってきて、[魔法]が使えればなぁ~と、あっちの世界でやったように[魔法]を使えるか試してみたところ、普通に使えたのである。
[魔法]を試したといっても、危険なものじゃないよ?ちょびっと強めの風を背中に当てただけじゃよ?
まぁ、理由はどうあれ、[魔法]が使えるのならば、有効活用しようと思う。目立ちたくはないので、目立たない程度にの。
そして、8時00分。学校に到着。この学校を見るのも、久しぶりに感じる(実際、半年ぶり)。
駐輪場に自転車を置き、自転車の鍵を二重ロックして、校舎へ向かう。
この学校の駐輪場は、1年生が使うところと、2・3年生が使うところで分けられていて、1年生の使う駐輪場がちょびっとだけだけど、校舎に近い。靴箱に一番近いのも、1年生の使う駐輪場である。そのため、わしはそのちょびっとを歩きたくないため、2・3年生になりたくないなと思ってしまう。
いや、だって夏は20分も自転車をこいだら、汗はだくだくになるし、冬は寒いんじゃよ?そんなの、1分1秒でも早く校舎に入れる方がいいじゃないか。
靴箱で靴を履き替え、階段を登る。ここの学校は人数が多い。そして、わしの教室は5階。はぁ。朝から憂鬱になる。やっぱり駐輪場は1年生のところのままがいいのぅ。
教室に着くと、教室にいるクラスメイトは7、8人くらい。わしのクラスの人達は、部活の朝練もあるが、そうじゃない人達も、いつも遅刻ギリギリで投稿していた覚えがある。今日も多分そうなのだろう。
自分の席について、教科書やノートをひきだしに入れ、カバンをカバン棚になおす。だいたい5分くらいで終わる。
忘れずに持ってきた、読んでいる途中だったラノベを取り出し、読み始める。
続きが気になっていたため、わし、一時の至福の時間を過ごす。
「おはよう」
声をかけられて、本から視線をおこす。そこには、友達の優也がいた。
…?何でだろう?おはようって挨拶を返そうとしたのに、言葉が出てこない。
「どうした?ん?は、何で涙目なわけ?」
…涙目?わしが…?なんで?
そうか。会ったからか。友達に。帰ってきたから。また会えたから。
「いや、眠たくてあくびしただけ。おはよう」
わしはやっと、この場所に帰ってきたんじゃな。