第3話:馬車襲撃、そして撃退
異世界に来たら襲撃された馬車を助けなきゃいけない!
目を開けると、そこは自分の部屋…というわけもなく、普通に先程の大草原だった。
「さぁて、まずはステータスとスキルの確認だな」
そうつぶやいて、いろいろ、そう本当にいろいろ試した結果…
「インチキ性能も大概にしろよ…」
本当に大抵の武器が作成できてしまった。
実在・非実在関わらず、これは武器だと認識したものなら何でもである。
剣や槍、刀などの近接武器から弓矢、ボーラ、スリングショットなどの遠距離武器、ハンドガン、マシンガン、ロケットランチャーなんかの重火器に、地雷やクレイモアなんかの設置型武器も行けた。
それだけではない。銃と剣を合わせた武器や分厚すぎる鉄塊、桃姫の最強武器に宇宙海賊の左腕なんかも余裕で作成できてしまった。
しかも魔力で作ったものだから任意で消すこともできる。鹵獲されて大惨事ってこともなさそうだ。
ちなみに異世界転移パックの中身は、言語理解、鑑定、アイテムボックスのテンプレ三点セットだった。
なお、素のスペックは大体250前後、魔力だけは無限のままだった。
「まぁ一番驚いたのはこれだけどな」
「これ扱いはひどいですマスター」
俺が手にした一振りのナイフから抗議の声が聞こえてくる。俗に言うインテリジェンスソードってやつだ。
おれがかんがえたさいきょうのぶき(笑)も作れるのかなと思って試してるときにできた一振りである。
ちなみにおれがかんがえたさいきょうのぶき(笑)を装備しても使用者の能力値上乗せが発生しなかったので、結局弱いという結論に達した。
これだけ残した理由は、ぶっちゃけ話し相手が欲しかったからである。
一応自我が芽生えていたので消すのが忍びなかったのもあるが。
ついでに、いろいろ試している最中に野生動物が襲ってきたので、返り討ちにして空間収納の中に放り込んである。冒険者ギルド的なところに売れるかもしれないからな。
「さて、これからの基本方針だが…最終目標は、元の世界に帰ることだ」
「マスター、なぜそこまで帰りたがっているのですか?彼女でも残してきたのですか?」
「ゲームがしたいからだ」
「は?」
「お前発表時からずっと楽しみにしてたのに、発売日当日に異世界に送られた俺の気持ちがわかるか!?わからねぇよなぁ!おまえ生まれたばかりだもんなぁ!!」
「そのへんの機微を入れて再作成してもらってもいいですよ?」
「お前はストッパーの役割もやってほしいから流石にそれはできないな」
「クールダウン早いですねマスター…」
「まぁそういうわけで、最終目標は帰ること。で、だ。ぶっちゃけ異世界人ってことを隠す気はない」
「それは隠しておいたほうがいいのでは?頭がおかしい人と思われますよ?」
「別にそれならそれでかまわない。どっちにしろこの世界では常識知らずの変人扱いだ。だったら下手に隠し立てして取れる手段を絞る気はない」
最悪の場合は一国を滅ぼすことすら視野に入れている、ということまでは流石に伝えなかったが。
「というわけで、異世界人ということを喧伝しながら、元の世界に帰る方法を探すほうが早いと判断したわけだ」
「なるほど。で、私はやりすぎだと思ったときのストッパー役というわけですね?」
「あとはいざというときの保険、だな。精神操作だ洗脳だという魔法がないとも限らない」
「ああ、私はあくまでも「武器」なので精神操作系は効きませんものね。でも解除法がなかったら意味ないような…?」
「お前は「触れただけで状態異常が全回復するインテリジェンスソード」だから大丈夫だ」
「私も割とチート性能だったんですね」
そして…えーと、そういえば名前決めてなかったな。
聞いてみるか。
「そういえばお前の名前どうしようかね」
「マスターが適当につけてください」
「じゃ、ディ○ロスでいいか」
「せめてアト○イトでお願いします」
「冗談だ。まぁお前の希望からとってアイでいいか」
「略しただけですね、まぁいいですけど」
というわけで、アイを鞘に入れてベルトに挟み、実験のために収納していたMTBを空間収納から取り出し、空を飛ぶ手段の実験のときに確認した街道らしき道がある方向へ漕ぎ出した。
その実験の成果で空を飛ばないのかって?跳ぶのは成功したけど飛ぶことはできなかったんだよいわせんな恥ずかしい。
街道に出て、カンで方角を選んで暫く進むと、何やら怒声が聞こえてきた。どうも何らかの戦闘が行われているらしい。
この先のゆるい下り坂の先のようだ。
「これはテンプレかねぇ?」
「えー、野盗やモンスターに襲われる馬車的なやつのことですか?」
「そうそれ」
「行ってみればわかるんじゃないですか?」
「まぁ引き返す選択肢はないわな」
そのまま進み、下り坂の開始地点に差し掛かる頃には、先の方で馬車に攻撃をする男たちの様子が見えるようになった。
鑑定の結果、馬車に攻撃仕掛けている男たちの職業が『騎士』なのには正直げんなりしたが。確実に面倒ごとフラグじゃないかこれ?
というか馬車を守る側の人間が見当たらないな?とにかく声を掛けるか。
「おーい、そこの戦闘中の皆さん、加勢はいるか!?」
「ありがたい!…何だその乗り物は?まぁいい、頼む!!」
「え?」
答えてきたのが馬車攻撃隊のリーダーらしき壮年の騎士だったので少し面食らった。
「えーと、とりあえずどういう状況なのか聞いても?」
「馬車ゴーレムだ!この中には誰もいないし馬もゴーレムの一部!魔物だ!」
「えぇー?」
どうやら馬車「を」襲撃じゃなくて馬車「が」襲撃だったらしい。何だこの雑なテンプレ外しは…
「まぁいいや、とりあえず合図と同時に全員馬車から離れてください!」
下り坂を全速力で下りながらそう叫ぶ。この間に俺はスキルを発動。せっかくだから派手に行くか。
「武器生成:ポールアクス!収納」
坂を下りながらポールアクスを生成して、使用者の能力ごと装備し、MTBを収納して着地、ひた走る。
「術技再現、全員離れろ!」
ゲームで見たとある術技を再現しながら叫ぶと、馬車に攻撃していた騎士たちが全員離れていく。
そして、こちらに気付いた馬車ゴーレムが180度ターンしてこちらを向いた。この馬車四輪駆動かよ。
だが遅い!
「わが道突き進む!スパイラルクラッシャー!!」
ポールアクスを前面に構え、体ごと回転させながら馬車ゴーレムのど真ん中をぶち抜いていく。某ゲームの必殺技の再現だ。
…術技再現は版権が怖いし、あんまり多用しないほうがいいかもしれないな。
無事着地した俺はそんな事を考えつつ、ど真ん中をぶち抜かれ、崩壊していく馬車型ゴーレムを眺めていた。
そう思っていた時期が、俺にもありました。
馬車が襲撃してきてもいいじゃない、異世界だもの み○を
ダウングレードしたことによって使えなくなった魔法なんかを修正、アイちゃんはホムンクルスからナイフ型インテリジェンスソードに変更。念話も使えなくなったので吹き出しも普通に変更。
ちなみにこの先ステータスが出ることはまずありません。管理めんどいし。