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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
5/44

Present Time【遊戯開幕】

 蔑まれようが、気味悪がれようが、どのような形であれど、彼の思い残した事は果たされる。


 九死に一生を得たのであれば、他者を蔑ろにしようが、例えそれが自分の親であろうが、後悔もへったくれも存在しない。


 ────誰の物語でもない以上は。



「君ならそう言うと思ったよー!」


 実際に見えている訳ではないが、満面の笑みが目に見える。


「後の手続きはこっちで準備するから楽しみに待っててねー!わからないことは大体端末に書いてるから~!じゃあねー!期待してるよ~!」


 此方の質疑に答えず一方的に会話は打ち切られた。

 そして今までの出来事が無かった事のようにシャットアウトした。僕はちゃんと覚えている。さっき何があったか、何を決心したか。

 ……そうだ、端末は……今は何時だ?


 壁時計の方角へ目を動かせば針は両方“9”の方向に重なりかけている。つまり、もうすぐ21時(くじ)だ。


 僕のお母さんは今帰ってきたばかりで、すぐに料理の支度をする。今、彼女は台所にいる。


 決心した。心中はしないが、お母さんは殺す(救う)


 僕は僕自身をもう殺したのだから、もう母親が愛するものが戻ることはない。全身が火の中に至る前に痛み無くして。


 全部捨てれば、何かしら変わると思っていた。


 変わったのは肉体だけだ。

 本質は何一つ変わらないが、“力”が僕の本性を晒した。


 “力”は一種の麻薬(シャブ)であり、慣れれば慣れるほど、楽しくなっていく。

 やがて、楽しみの意味すら理解(わか)らず戦いに明け暮れる。


 今になって言うが、全くもって傍迷惑な人間だな、と。


 時間が過ぎるのは異様に長かった気がする。


 端末はまだかと待っている間に後ろからグツグツと、煮えたぎる音とデミグラスソースの独特の香りが漂ってくる。


 ……最後の晩餐は、ハッシュドビーフか。僕の大好物だ。


 お母さんは食事ができても、僕に対して何も言おうとせずにただ無言で運んでくるし、彼女自身何も喋ろうとはしない。


 そうなったのは……大体3ヶ月前ぐらいか。


 お母さんはそこまで抱え込む様な人間だっただろうか。

 急に、何も言わず死んだ様な目で家事をし、死んだ様に眠りにつく。

 生活そのものに変化は無かったが、無音の昼夜が幾度となく繰り返された。


 でも、大体は自分の所為(せい)なんだとは自覚していた。


 コトン


 机の上に、硬いものが落ちる音が聴こえた。


 机と平行に視線を合わせると目の前には真っ黒な正方形の端末。

よく見れば折り畳み式で、縦幅は2cm。横幅は8cmぐらい。


 開けばスマートフォンと同じような感じだが、持ちやすいように収納式の取っ手が付いていたり便利だ。


 早速開いてみれば、目に映ったものは、ゲームでもお馴染みのメニューバーと宇宙空間のような真っ暗な背景。


 【端末情報 虎龍王 様】と右上に表示され、固定される。


 その下に僕の【Real;Users(アバター)】、【虎龍王】の全体図が細く白い線で描かれている。


 ちゃんといつも通りのゲームの装備であると同時に、よく見れば主力武器である熱線の剣(ビームサーベル)の“ストーブレード”もタップで確認できた。


 どうやら、スマートフォンと同じく、指で反応するらしい。


 メニューバーには、6種類のページ。【能力】【参加者一覧】【変身】【地図】【設定】【利用規約】が表示されていた。


 ──能力?

 能力なんて言っていたか……?僕は【能力】のページを開いた。


 【固有能力】【点火】

 自分自身が視認できる範囲の物質に点火を起こす事が可能。また、自分自身に火への完全耐性を取得する。


 ただし、火力を上げる度に自分自身への体力の消費は激しくなる。


 【個人戦闘能力】

 目安:

 E…一般人レベルまたはそれ以下

 D…プロレベル

 C…人類最高レベル

 B…生物最高レベル

 A…全てを超越したレベル

 【筋力】A【瞬発力】D【一般知識】D

 【動体視力】B【判断力】D【精神】C

 【戦闘技能】A【防御力】B【容貌】E


 【固有能力】……ゲームのアバターに寄せた理由はこういうことか。

 ただ武器だけで殴り合うだけでなく固有能力を駆使した高度な戦い、それを運営は望んでいる。


 個人戦闘能力…は他の参加者とでは異なるのだろうか、次は一覧を……見てみるか。


 次に僕はそれに意識を奪われるかの如く黙々と端末を見続け、次に【参加者一覧】を押した…が、【虎龍王】のタグ以外は映っていない。


「……どういうことだ……?あっそういえば……」


 代表取締役が「他の事は端末が教えてくれるよ」と言っていたのを思い出す。


 その記憶を頼りに、【利用規約】を開き、細かい部分は斜め読みし、【参加者の情報について】のページに目を通す。


 【参加者の情報について】


 参加者同士が、半径3m以内の範囲で遭遇すると、端末がお互いの情報を自動的に共有し合います。情報はお互いが遭遇した参加者の情報全てを交換し合います。


 すれ違い通信……みたいな感じか。

 ……情報戦を強いられそうだな……


 そう、呑気に構えていた瞬間、あまりにも早すぎる宣告が出された。

 【端末情報 ブランギャズ 様が登録されました】


「……え?」


 その4秒後、デスゲームの幕が降ろされた。

◆いつもご覧いただいている皆様へ


あらすじ、プロローグ、導入の一部変更を致しました!

引き続き【Real;Users】宜しくお願いします!

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