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Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
42/44

Merger【二夜終了】

 O市南端に位置する寝殿造の中。

 そこで運営であるアンジェラ・叶が16分割したモニターを通じてデスゲームを観戦している。

 どこにカメラを設置しているのかは解らないが各自の生活、戦闘、行動は筒抜けである。


「今度は彼女の妹ちゃんか!」


 【ケモ耳大好き】に勝ち星が追加され、興奮するアンジェラ。


「二日目にも関わらず素晴らしい戦績ですね。」


 彼の秘書も円滑にデスゲームが回っていることに喜ばずにはいられない。

 デスゲームが積極的に行われている事は好都合この上ない。


「こうも効率的にデスゲームが進むとは、な。」


 そもそもデスゲームが参加者により潰される理由は“脅しを含めた”、“参加者との感情の不一致”、“契約違反”といった運営側に大きな問題がある場合が多い。

 焦点を絞る対象として“自分たちの命を脅かす障害を排除する者”、“非日常を求めるもの”、“報復や復讐に使える力を欲する者”に参加権を与えれば何も問題はない。


 そして、無理の無いゲーム設定、利用者の望むものを一つ一つ与えていれば、反感を買わせることはない。一人ずつ平等に満たされているのだから。


「まぁ、命を尊重した上でゲーム設計してますからね。」


 “命の尊重”とは上記の内容だけではない。

 このデスゲームに巻き込まれ、命を落とした一般人、【Real;Users】全体にかかる大がかりなものだ。


「“殺す”という攻撃的な精神より“生きる”という保守的な精神の方が彼らの原動力となるはずです。」


「それは人間でなくとも同じ形で、あの犬くんも相当の覚悟が必要だっただろうね。」


 いや、人にとどまった話ではない。

 【Second】もワイズも生きるために自立し、自分の障害を消していったのだから。


「私は尊重するよ、彼の自立心の芽生えを!」


 敬意を以て、尊重しなければならない。


「金沢……様はどういった処理を?」


「勿論彼の最期の言葉もしかと受け止めた。特別な処理をしたいから私の元に届けておいてほしい。」


「承知しました。そのようにおきます。」


 即刻、秘書が業者に電話をかけ、死体運搬の指示をする。


「後は……植津君に頼んでおいたもの、ちゃんと仁野君に届いてるかな?」


 仁野 次郎(にや じろう)(34)独身。職業:警視。

 出世ルートを目指し、キャリアコースから順調に上り詰め、警視にまで出世。何事にも冷静に考え、冷静に分析し、忠実に仕事をこなす人間と聞いている。


 21時を確認し、警察署から退出。

 誰かに電話をかけている様子だ。


「……左様ですか。では今からお伺いいたします。」


 その一言で電話を切った。

 停車していたタクシーに乗り、その場を去ろうとする。


 我々も停車していたタクシーに乗る。


「警察です。あの前方のタクシーを追いかけてください。」


 タクシーの運転手に我々二人は警察手帳を提示する。

 刑事ドラマのワンシーンでよく知られている為、タクシー運転手もよくわかっている筈だ。


 仁野警視の乗るタクシーに尾行が始まる。


 薬師丸ラボの前に仁野警視はタクシーから降り、警備員に警察手帳を見せた。

「藪遅く失礼。警視の仁野 次郎と申します。」


 それを聞いた警備員は敬礼した後、仁野に案内をしながら二人ラボ内へ入った。


 完全に視界から外れた事を察した我々はタクシーから降り、仁野警視が戻るまで待機する。



「初めまして、私が“薬師丸ラボ”の研究員をさせてもらっています、植津と申します。」


「警視の仁野 次郎と申します。」


 植津と仁野が挨拶を交わした後、植津は“灰色の正方形の端末”を仁野に渡す。


「では早速、例のモノについて。」


「……端末、ですか。」


 植津は全てを知らない。

 匿名の人物から“仁野”に渡すようにとしか伝わっていない。


「とあるお方から貴方に渡すように、と。」


「承知しました。丁重に預からせていただきます。」


 逆に、仁野は大体の事を把握していた様子だった。


「では本件の事はこれで……」


「はい、ありがとうございました。」


 大した関わりもない社交辞令だけの会話だった。


 仁野がラボから出た。

 我々は行動に出る。


「何かご用でしょうか。」


 服装から警察と判断できるだろうと思い、話を切り出す。


「仁野警視。あなたは金沢氏の事件の最高責任者でしたね。」


「貴方に証拠隠滅、捏造の証拠が警察署内で発覚しています。公用文書毀棄の疑いがありますのでご説明を。」


「加えて本件の死亡者である“金沢 亀成”さんの死体の場所をお教えください。」


 仁野はなるほど、と話を一旦切るように一言する。

 数秒の沈黙の後、仁野が言葉を続ける。


「確かにあの事件への担当は私です。私から事件の事について伺うのならば、まずご自身の身分の証明、警察手帳を提示することが礼儀でしょう。」


 警察二人はペースを乱されつつも、こちらに無礼があったと頭を下げる。


「……失礼しました。」


 だが、それは単に仁野が端末を取り出し、変身する時間を設ける為の時間稼ぎでしか無い。

 端末の解除パスコードを素早い手つきで入力する。


 無警戒の警察二人は警察手帳を提示し、仁野に見せようとした瞬間に端末音が鳴る。


「では再び……」


『パスコード入力認証 2・8・2・6 解除』


 特有の変身待機音声が鳴り響く。


『Access Complete ─100%─』


「再()()化。」


 “へんしん”の音声入力で変身起動。

 端末が腰に接続し、パイプのような筒がベルトのように腰を閉める。


『Merge,mermermermermermerge』


 英語と共に“Second”と類似したアーマーが仁野を包む。


『【Real;Users】Merger Second=Second』


 変身完了。

 かつて“Second”の肉体だった鋼の装甲は仁野 次郎の鎧となる。

 次世代へと再編、そして進化した──


 新たなデスゲーム参加者、【Second=Second】の誕生である。


「警察手帳の提示、ありがとうございます。」


「それは預からせていただきます。」


 急な変身に戸惑い、身を引こうとする二人を【Second=Second】が逃すことはなかった。


 命中。

 幾とどもなく撃ち込まれた無数の弾丸が警察二人の胴体を貫いた。

 口から大量の血液が溢れ、紐の切れたマリオネットの様に力無く倒れた。

 彼等が撃ち抜かれた時に何を思ったかなど証明する手段はない。

 ただ、二つの肉塊が転がっているだけだ。


 仁野 次郎の冷たい目からは正義など映らない。

 血に濡れた警察手帳を奪い、その場を去った。


デスゲーム二日目 終了


 ▼死亡者 1名


 【Wonder Fool 様 がログアウトしました】


 【Wonder Fool 様の変身者は ワイズ 様に変更されました】

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