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Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
41/44

Childhood【痴話喧嘩】

【Wonder Fool 様がログアウトしました】


 街路の端に転がる残骸。

 抉られた首から血の赤が地面に広がっていき、次第に固まっていく。


 寸白 銀、寸白 理奈(変身中)、松平 夕夏梨(変身中)の三人はこの惨状をただ見ることしかできなかった。

 “人が死ぬ瞬間”を目の当たりにしたのだから。


「……死んだ、のか」


「…………」


 銀と夕夏梨の二人はこの状況を理解したくはなかった。

 それ故に、非日常の恐怖から逃れるために“理解しないフリ”をしている。

 当然の反応だ。


 だが一人、【蛮勇】の能力を有して恐怖の概念を捨てている【ケモ耳大好き】は死体の近くに歩み寄り、背中に挟んでいたファイルをくすねる。


「おい、理奈……」


「この資料何かな?」


 なんの恐怖心もなく疑問を持ちかける“ケモ耳大好き”。

 銀も夕夏梨も【蛮勇】の能力の事についてはわかりきっている。


 だとしても、その行為に黙って答えるわけにはいかない。


「……おい。」


「どうしたの?」


「人が死んでるのに、何も思わないのか……?」


 銀としては決して怒っているつもりではない。

 ただ心配なだけなのだが、それ以上のストレスと葛藤が自制心を圧し殺す。


「んー、能力の影響で私としては別にどうも思えないんだよね~」


「ッ!」


 銀の腕が“ケモ耳大好き”の服の裾を掴む。


「ん」


「ちょっとお兄さん……!」


「何をそんな、感情的に……」


 怒りとはかけ離れた“心配”を止めることができない。

 彼女の事が心配だから、ここまで感情的に動いてしまう。


「感情的でいいだろ!」


「能力の影響なのはわかっている、わかっているから、お前自身の心の内を……能力で圧し殺してるようにしか見えない。」


「……ふーん」


「理奈、()()()そんな事を言わないでくれ」


 銀の言っていることはただの我が儘だ。

 他人を束縛する行き過ぎた心配だ。


「本当は……不安なんだろ……?」


 銀自身でもわかっている。

 中途半端な気持ちで、覚悟もしていないままにデスゲームに参加してしまったから、情緒不安定になってしまうのだ。


「変身解除。」


「……ごめんね」


 理奈の変身解除後、掴みかかっていた腕を軽く突き飛ばす。


「お兄ちゃんの期待には応えられない妹で──」


 理奈は銀から逃げるように走り去る。


「おい!何処へ行く!別に私はお前を支配しようなど──」


 釣られるように追いかける。

 行き違いを理解する間もなく二人してその場を離れた。


 2、3kmは走った。

 運動はからっきしな銀は理奈の影を追いかけるだけで精一杯。


「おい!ハァ……待て!ハァ……」


 息切れしつつも粘り強く追いかけた先には、満開の夜桜の目立つ休憩所に辿り着いていた。

 花見会場として最適な場所と(ちまた)では有名な緑地である。


「ちょっ……ゲホッ、ゲホッ」


 桜の木の近くにもたれる理奈。


「……はぁ、あのさぁ。」


「お兄ちゃん、ここ覚えてない?」


「この桜……」


 思い当たりがある。

 何年か前に運良く一番大きな桜の木の下で花見をした場所。


「ここ、家族で最後のお花見いった場所。」


 そして……最後の花見の場所、か。


「私の家族の記憶ってここのお花見までしかないんだけど……」


 反応の薄い銀に対して理奈は心底呆れた表情で変身宣言する。


「……あーもうめんどくさーい!変身!」


 “ケモ耳大好き”の姿に変身。

 相手が兄だろうが構わず、急に殴り掛かる。


「なッ……ちょっ、待て!変身ッ」


 状況に焦るも、銀も彼女に対応するように変身。


「ばーか!ばーか!あほー!」


「ちょっ、痛い痛い痛い」


 “ケモ耳大好き”の初手はかわしたものの、腕を噛みつかれる。


「なんで!そんな人間臭く悩んでんだバーカ!」


「やめろっ……て!」


 噛まれた腕を強引に引き離すと、今度は回し蹴りをかましてくる。

 命中。

 “吸血姫アナトミー”は体勢を崩して転びそうになったところを、“ケモ耳大好き”に胸ぐらを掴まれる。


「あのさ!私は!このデスゲームにクソ興味もないけどさ!お兄ちゃんがちゃんと“あの事件”の事を突き詰めるって言うから!他人の命の心配なんか捨てて!協力するって!意思示してるのに!」


「──ッ」


「なんで!お兄ちゃんは!なんでそんな覚悟も何も中途半端なんだよ!ムカつく!バーカ!バカバカバカバーカ!」


 胸ぐらを掴んだ状態で0距離の頭突き。

 命中。

 罵声を浴びながら殴打ラッシュに遭う“吸血姫アナトミー”。


「ッ折角、こっちが、心配してやってるって言うのに……!バカっていう方が大馬鹿者だろうがッ!」


 いくら妹だろうと殴られっぱなしというのは癪に障る。

 膝蹴りを撃ち込み、反撃に出る。


「このッ!スカポンタン!」


 命中。

 だが“ケモ耳大好き”はひるむことなく膝を掴んで地面に投げ飛ばす。


「黙れ!蛮勇気取り!」


 命中。

 吹っ切れた“吸血姫アナトミー”もまた痛みに一々反応していられない。

 掴まれた片足を勢い良く曲げて“ケモ耳大好き”を転ばせる。


「うっさい私より稼げてない金むしり!」


 命中。

 その後“吸血姫アナトミー”も“ケモ耳大好き”も地面から立ち上がりファイティングポーズを取る。


 双方一定の距離を保ったまま静止する。

 一瞬の沈黙の後、二人同時に攻撃が繰り出される。


「図に乗るなよ!ロクに料理も作れない癖に!」


 腹に向けて両腕でジャブを幾とどなく放つ。


「女の子になって満更でもない癖に!」


 殴り掛かった腕を足で蹴り上げてそのままタイキック。


「なっ、ちょっ、そんな事あるわけないだろ!バカ!」


 タイキックを受けたまま顎に対してアッパーを繰り出す。


 命中。

 一歩後退して双方拳を握り締める。

 数歩歩いた後、感情的な笑顔でお互いの顔面に勢いよく──


「この……」


「「馬鹿野郎がぁ!!」」


 ──拳をぶつけ合った。


「……」

「……」


「変身解除」

「……変身解除」


「……こんな歳にもなって何やってるんだろうな」


「変わらないね、私らいつだって」


「そうだな。」


 ようやく夕夏梨が夜桜咲く休憩所に訪れる。

 彼女が見たのは地面に倒れこむ銀、理奈の二人。


「ちょっ……理奈ちゃん、お兄さん……何やってるんですか?」


「ガキの喧嘩に巻き込まれただけだ。唾塗ってたら治る。」


「……はぁ。」


「んじゃ、帰ろっか!」


 ──と、理奈が今までの内容を鎌田 桐和に述べる。


「……って事があったんだけど」


「いや、なんでオレに言うんだよ」


 気怠げな表情で聞き流す桐和。

 だが、理奈の持っていたファイルには興味ありげだった。


「あ?富凍って……言えばあの【虎龍王】だな。今日殺りあったからな。」


 今日戦った【虎龍王】の変身者、“富凍”の名字が入っていたのだから。


「クッ、それでまんまとやられたんだな」


「あ?煽ってくんなボケ」


「あー面倒臭ぇ面倒臭ぇ、今日ぐらいは寝かせろや。」


 ファイルを読み終えてちゃぶ台に置いた後、(イラ)ついた態度でその場を立ち去る。

 すっかりとこの家に馴染めたのか、すぐにいびきが聞こえてきた。


「富凍……あの虎龍王か。」


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