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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
4/44

Decision【走馬灯】

 急な眠気に襲われ、その中で見た夢の内容を今でも忘れることはできない。


 夢だからなのか、何故僕は落ち着いて、都合の良い解釈がしかできなかったのか、よくわかっていない。


 夢は夢だと割り切ればそれで終わりだが、話していた内容が正夢になったからこそ、焦っている。


 もしかしたら、端から“首謀者”が僕を参加するよう意識ごと操作したのではないか、と思うぐらい不自然だったから。


 ……でも、仮にそうだとしても、結果的に僕は断罪すべき“首謀者”に救われてしまったのだ。


 本当は僕は、デスゲームを“首謀者”以上に楽しんでいたのかもしれない。

 デスゲームを善しとしない倫理観の持ち主には申し訳ないが、否定する立場に行くことはできない。



「そのテストに無事合格したら“虚無”に連れてってあげる」


 ……いやいきなり説明されてもあまりにも非現実的すぎる。


 あくまで“虚無”とは僕自身にとっての死後の世界の理想であって、本当に存在するのとでは全く別……


 この空間自体“非現実的”なのは重々承知であるのは確か……確かに今日は何があったとしてもどうでもいいと言ったのも確か……


 だが、そんなトントン拍子で夢物語を進められても意味が解らない……


 いや、でも先程からそんな状況に平然といられているのか……?情報の処理ができないのは確かだが、何故正気を保っていられるんだろう……?


「あーそれはまた後で言うよ。それで、テスト、受けたいでしょ?」


 …………本当にそこが虚無であるならそのテスト……受けてみても構わないかもしれない。

 「何があったとしてもどうでもいい」と言ったばかりだしな。


「それじゃあ、ざーっと説明するよ」


「君は今から現実世界で君のアバター【虎龍王】そのものに変身して、同じ地区で16人のアバターと……いや【Real;Users】と殺し合いをしてもらうよー」


 ……自殺する位ならお前の快楽の為の生け贄になれ、と言いたいのか?


「逆だよ逆。君が死にたいーってのはよく解ってるけど君が殺すんだよ。」


 聞いていられない、こんな話の通じなさそうな相手に対して……いや、聞きたい事は山ほどあるが……


 ……仕方ない、ここから帰る方法も解らないし聞くしかないか……


「素直だねー理解力のある良い子は好きだねー」


「ルールは簡単だよー、君と同じ【Real;Users】を何らかの方法で合計3人殺せば合格だよ。基本的にはトドメ刺した人に判定が下るけど、トドメ刺したのがトラックとかだったりしたら一番致命傷を負わせた方に優先されるよー」


 アバターそのものに変身する……だとか言ってたな……それは単純に目印的な役割か何かか……?


「いや、その辺の人よりは確実に強いよー、でも至近距離でマシンガン乱射されたり、チェーンソーで切断されたり、トラックに轢かれたりしたら死んじゃうけどねー」


「まぁ実のところステータスとかはゲームの物とはそこまで関係なく“プレイスタイルによりけり”って奴なんだけど、【虎龍王】さんはフルアーマーだしその心配は無いよねー」


「んでもう一つ大切なルールがあるよ。【Real;Users】は【Real;Users】以外の人からの視界から外れた瞬間、それに纏わる記憶は消されるよ。法律で捕まることはないし、まぁ一般人なら殺し放題だねー」


「それで、今日の21時丁度に16人全員に、自分のアバターそのものに変身できる端末をあげるよー、この端末は変身以外にも地図と全員の名前と姿、形の情報があるよー。

チャット機能作ろうかなーって思ったけど流石に荒れそうだからやめちゃったー。無くしても勝手に帰ってくるし、絶対に壊れないけど基本手にしておいてねー」


 自分が言えた事ではないとは解ってはいるが、人間性の『に』の字もない快楽犯だな。


 よくデスゲームものの創作で見る奴か、自分だけ確実に安全が保証されてるのを盾にやりたい放題してヘイトを集めるタイプの……


「そんな下らない事今聞く必要は無いよ、どうせ君も参加してみたいんでしょ?自殺なんてできっこないしねー。」


 なんだと……?


「解らないなら死ぬまでの苦しさを味わえば良いよ。」


 気持ち悪いぐらいの嫌悪感が背筋に走り、恐怖心が肩に重圧をかけていく。……いや、違う。肌が熱い。息が苦しい。


 炎に身を投げてる状態を再現している……!苦しい、くるしい、くるしい、くるしい……


 全身に火が纏い、呼吸ができなくなる苦しさ。それが延々と痛い続く。煙が体を蝕み、脳が痛い。肺が焼けただれる、腐った卵の痛いような爪の痛い燃える臭い、体が重痛い。意識が痛い消えな痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……


「どう?うっわ顔くっしゃくしゃ……」


「それで、君はこれでいいの?」


 自分自身結局どうなのだろうか?結局、言葉では言えても実際に自殺できるほどの覚悟はあるのか?

 そんな事を考えてみると、死の間際そのものが怖い。またあんな苦しみを味わいたくない、何か遺したい……


 結局、結局、結局結局結局自分は……なんなんだ?

 “罪人”と自傷しておけば、許されると……安心できると思っているのか?


 ……“虚無”にいけないと死後の世界から告げられた今。


 いっそ殺戮を重ねて悪名高い“罪人”そのものになって殺し合えと言われた今。実際に死の苦しみを味わった今。


 決断は揺らいでいく。自殺できるような自信が無くなっていく……虚脱感、という奴なのだろうか。一気に嫌気が指してくる。


 今から選択する。


 自分の決断に身を任せて一家心中してみるか。


 新たなプランを挙げられたから、それに順してみるか。


 自ら世界を閉ざし続けた僕の“最初で最後の決断”だ。


「……受ける。僕は、結局は、僕自身の事しか考えていないから。」


 僕は自己中心的だし、倫理なんて知らない。

 殺し合いに対しても肯定的だ。


 ああいう創作でよくあるデスゲームを“阻止”する側じゃない。

 堕ちる所まで堕ちる典型的な悪役みたいな奴なんだ。


 ……そして()()()言える。

 僕はどうしようもない罪人(こたつおう)だと。

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