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Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
37/44

Interrogation【不正解剖】

 昼下がり。

 亀成は自宅近くのカフェでパソコンと目を合わせながら作業をしていた。

 背後から集団の足音が聞こえたので、思わず後ろを振り返ると黒いスーツの男が5人目の前に居た。

 その後一人のゴーグルをかけた男が一歩前進し、警察手帳を見せつける。


「……警察の方ですか。」


 亀成はいつか警察が自分の元に来ることは想定していたが、殺人を犯した者は無意識にも動揺はしてしまう。

 罪の意識というものは易々とは切り離せないものである。


「金沢 鶴栄さんですね?亀成さんの件で重要参考人としてお話を聞かせてもらっても?」


 警察はあくまで事故死の重要参考人として聞きに来ただけであって、殺人とは関係は無い筈だ、“身に覚えの無い事で警察のお世話になる”から動揺しても何もおかしくはない。

 そしてオレがまだ“金沢 鶴栄”と呼ばれている以上真実は揉み消された。その筈だ。


「私……以前に亀成に何か……?」


 最後まで演技は通す。

 オレが“金沢 鶴栄(兄さん)”なんだから。


「詳しいことは署で。」


「……解りました。」


 取調室に移る。

 刑事ドラマでよく見る金属性の机とパイプ椅子。


「担当は警視の仁野 次郎(にや じろう)がさせていただきます。」


 先程のゴーグルをかけていた男だ。

 物腰良い態度で「どうぞお掛けに」と指示した後書類を机に置く。 


「昨日貴方は亀成さんのご自宅で共に食事をしたと聞いています。」


「はい、それで弟が何か──」


「昨夜、自殺していました。死亡推定時刻は21時頃。貴方が帰る段階の時間です。」


 当然の返答だ。

 偽装工作が成立していた事に内心で安心し、外向きでは暗い表情を取る。


「なっ……」


「誰が……そんな事を……」


「自殺です。遺書は預かっております。」


 書類の中から遺書を取り出す。

 トントン拍子で話を進められ、焦る“鶴栄”。

 自演であるが故にそんなに早く進められると、逆に「本当はバレているのではないのか」、と思ってしまう。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!かっ……亀成を見せてくださいよ!」


「現在薬師丸ラボにて行政解剖中なのでお見せする事はできません。上からの指示なので。」


 “行政解剖”、その言葉に違和感を持つ。

 行政解剖は基本的に殺人の関連性の少ない自殺事件に用いられる検死方法である。そこまでは良い。


(いや、待て……おかしいだろそれは……本来行政解剖は“家族”の承諾を得て行うものだろ!しかも裁判所でもないから司法解剖ではない!いくら上層部の命令だろうとそれは無理がある!)


 “鶴栄”が疑問を呈そうとする前に、仁野が彼の唇を腕で押さえつけ、閉じさせる。

 声のトーンを下げて耳元で語りかける。


「……時に金沢さん。力と心の開放に過信するものではありませんよ。」


「確かに貴方には莫大な権力を有しているかもしれませんが、それはあくまで市民的なもの。本当の権力は何もかもを食らい尽くしますよ。」


「下手な詮索、追求はただの蛮行でしかありません。自分の立場を理解してから質問なさい。」


「……失礼、昨夜の件にて質問を続けます。」


 それからは昨日の内容を捏造込みで語るだけだった。

 仁野の表情は何を言っても変わらず、さながら機械のようで気持ち悪かった。


「なんだアイツ……【Real;Users】の反応はなかったのに知った口聞きやがって…」


 その上、仁野の質問は尋問のように鋭く、肩のこるものだった。

 まるで本当に自分が犯人に仕立てあげられそうな程の威圧感があったからだ。


 O市南端にある駐車場にフェラーリを停める。

 前ドアからアンジェラ・叶とその秘書が姿を現す。


「社長、ここは……」


 周りは松や杉で囲まれた林の中。

 アンジェラの手招きの元前へ進むと、豪奢な寝殿造の様な影が見える。


 警備員がアンジェラに敬礼すると門が開かれる。

 そして奥の扉から一人の男が歩き出す。


「いやーいつもお世話になっていますよー」


「よくぞ来てくれた……いや、おかえりなさいと言った方が正しいだろう。」


「我が息子よ。そしてその妻となるべき淑女よ。」


「わ、私がアンジェラ様と!?お、畏れ多くもそのような事は……」


「いやいや、私としても君のような美しい女性となら快く結婚を受け入れるよ。」


「そんな、お戯れを……」


 立ち話を終えると、3人揃って寝殿造の中へ入っていく。

 中は見た目通りのものとは裏腹に様々な近代的な設備が揃っている。


「可愛いだろ?うちの子は?」


「長年そういった浮ついた話が無かったから心配していたのだぞ。」


「彼女の心さえ整えればいつでも挙式が挙げられるな。」


 秘書が赤面し、恥ずかしそうにやめてくださいと連呼する。


「暫くはここで家族みんなでこのデスゲームを眺めようじゃないか。勿論君もだ。食卓を囲めば皆家族、そうだろう?」


「アンジェラ様のお心遣い、誠に感謝いたします。」


「例のデスゲーム、実に良いデータが取れている。」


「Secondの件ならもう手は付けてある。直にこちらへ送られてくる筈だ。」


「助かるよ父さん。これで命を預かってる者としてルールを遵守して、命を尊重できるそんなデスゲームが完成するよ。」


 “命を尊重できるデスゲーム”。

 それを創造すべく、運営直々に動き出す。

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