表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
34/44

Disguiser【鏡面擬態】


 先程の廃ビルにまた足を踏み入れる。

 内装はどちらかと言うと立体駐車場に近い、コンクリートで組み立てられた建造物跡である。


「……よいしょっと、ここが指定の場所だね。」


 3階の左端に待つとの事。

 既に変身している虎龍王を忍ばせ、赤兎は真っ直ぐその方向へ歩いていく。


「……あぁ。」


「呼ばれたのは僕一人だ。君は扉の影辺りに潜んでいてほしい。5m圏内にも行き届いていないからバレる事はない筈だ。」


「わかった。」


 那須らしき影が見えた段階で赤兎は虎龍王を壁際に寄せて、見張る様に命じる。


「すぅ……はぁ……那須さん、迎えに来ましたよ!どこ……ってああ目の前か。」


 口、腕、足をロープで徹底的に縛り付けられた那須がパイプ椅子の上に座っている。人質を取るというには些か雑。そもそも電話の主がいないのだから。


「……っ、……っ!」


「よし、口から外しますので待っていてくださいね。」


 後頭部に結ばれたロープをほどき、那須の口を取り戻すが、その瞬間、那須は大声で言葉を発する。

 そしてその顔の方向は天井だ。


「ろっ!、()()()()()()!」


【牙狼 様を登録しました】

蒼蟲(ザイゲ) 様を登録しました】


 釣られる様に天井を見た赤兎が目にしたのは巨大なカマキリ。

 今か今かと待ち望んでいたかの如く……いや、初めからそこに居たのだ。


「ッ!!」


 初擊を先ずは回避。

 体重の重い那須も一緒に押し出したので動作が遅れたが、避けれない攻撃ではなかった。


「こっちだ、偽善者がァ!」


 だが再攻撃に多少の時間間隔は存在しない。

 腕の鎌を地面から掬い上げる様に勢いよく振り上げる。


「やれ!滉!!」


 だがその前に彼らの“スイッチ”は起動していた。


「あぁ。」


【虎龍王 様を登録しました】

【蒼蟲 様を登録しました】


「……ッ!?なんだテメェ!?」


 今か今かと待っていたのはカマキリだけではない。

 戦闘に飢えているのも蒼蟲だけではない。

 虎龍王も同じく、この瞬間を待っていたのだ。


「虎龍王……って言えば昨日から派手にカマしてた奴か……」


「初めから交渉の気は無さそうだな。」


 ストーブレードを起動し、水平に斬りかかる。

 迎撃。

 蒼蟲の鎌は肉体由来のものだが、温度すら気にしない硬度と、断熱性を誇る。


「俺は正義面した偽物の警察が憎いッ!!今お前みたいな同類と相手してる暇は無ぇんだよ!」


 次も、その次の攻撃も弾き返しと、鍔迫り合いが続く。


 そもそもカマキリの目は約20000個の小眼で形成された複眼、触覚の間に3つの単眼が存在し、360°全てを見ることのできる視界を持つ。

 それだけ眼球があれば、反射神経も動体視力も当然ながら人の倍以上保持する。言うなれば超近接戦闘特化型なのだ。


 蒼蟲にとって虎龍王の斬擊など取るに足らない。

 蒼蟲自身の()()を上回らない限りは。


「お前の正義など関係無い。」


 鍔迫った瞬間、虎龍王の体重を蒼蟲に押し付ける。

 そして、赤兎らが逃げたことを確認し、自分の背後を点火。

 ロケットを飛ばす要領で点火した炎の威力を底上げし、蒼蟲の巨躯を動かす。


「ぐぉおおっっ!?押し出さッ──」


 押し出した先は廃ビル外の雑草地帯。

 3階から二人仲良く落ちていくが、その刹那蒼蟲の左手の鎌が振り上げられる。咄嗟に点火で爆発を起こし、反動の爆風で壁に身を寄せる。


「ぬがぁああああっっ!!」


 そのまま蒼蟲は地面に転げ落ちるが、何一つとしてダメージは与えられていない。


「柔軟性に長けた身のこなしだな。」


 純粋に戦闘に手慣れている、と感じとれる。

 確かに【戦闘技能】という付加能力は変身後に身に付くものだが、実体験、鍛練の結果には劣る。

 つまる所、この蒼蟲という【Real;Users】は鎌を駆使した戦闘、断定するならば“殺人”に慣れているのだ。


 と、思案している内にある事に気づく。


「……?消えた……?」


 いや、()()()()()()()方が正しい。

 蒼蟲の姿が消えた事に違和感すら覚えなかった程、さりげなかったのだ。


『じゃあ先ずは手始めにお前だ。』


 いつの間に後ろを取られたのか、自分の想像とは逆の位置に斬擊が来る。


「ッ!」


 (攻撃を往なすだけで精一杯だ……しかも攻撃が来るまでの間隔、位置がバラバラ……どこから来ているのだ……この斬擊は)


 防御に徹する虎龍王の耳元で蒼蟲は呟く。


『善とは何か、言えよ。』


「……知ったことか。自分にとって何が正義で何が悪かなんて考えたこともない。」


 蒼蟲の顔は酷く歪む。


『話にならねぇ。開き直って悪役スタンス磨いてる奴に言うのもアレだが……その()()()、剥がせろよ!!!』


 その激昂を原動力に蒼蟲の攻撃は苛烈を増す。

 その速さは斬擊の残像が残る程。


「な……!」


 隙は与えさせない。

 鎌の尖端を立たせ、太鼓を叩く様に山なりの連打を繰り出す。


「に…………ぐわぁッ!」


 避けることができない。

 打撃の度鎧にヒビが、砕ける音が、削岩と重なって響く。

 血の代わりに漆黒の鎧の破片が飛び散る。


 その衝撃は勿論肉体にも響く。

 何発もの肉躍りをさせられ壁に打ち付けられる。


「おい!虎龍王くん!大丈夫か!?」


 那須を安全な場所に連れていった赤兎が戦線へ戻るが、目にした光景は虎龍王が独りでに攻撃されている姿。


『もう遅いッ!この兜ごと顔を剥げば一人目だ!』


 何処からの凶刃が虎龍王を貫いた。

 勢いよく飛び散った血が透明の蒼蟲の身体にかかり、ようやく姿を晒す。


 だがその命中箇所は顔にも心臓にも非ず。


「ぐ……ぐぁあああっッッ!!!」


 リスクのある賭けだ。

 刃が貫く事を知っていて、己の腕で受け止めたのだから。


 尋常ならざる痛みが神経をも震わせる。

 だが、ここで止まる訳にはいかない。たった一度与えられた命はチャンスなのだから。


『受け止め……たか。だがその腕では這いずって逃げることしかでき……」


 ボオッ。

 足下に何か音がした。大丈夫だ、わざわざ目線を集中させずとも見えている。雑草が燃えて、それを伝って……


 “点火”されたッ!

 こいつの能力は【点火】か!この体だと炎を掻い潜る術なんて無い……!

 変身解除するか?いや、ダメだ。

 こいつ……いつの間にかこの()()()()()()()()()、逃げられないように()()()()()()を作ってやがる……!


 尚更まずい、これだと熱気の揺らめき具合で背景に擬態してもバレてしまう!


「……善とは何かは知らないが、少なくとも……僕のしていることは善ではない。人の為にならない自分勝手だ。」


「ぐぉおおおおッ!消火手段が……」


 ここで慢心せず、追撃としてストーブレードで斬りつける。

 腹部に命中。


「見えない斬擊、いやお前自身が見えない……擬態能力か。【点火】は指定の位置が分からないと発動不可能。こちらにとっても“見えない”事は弱点だ。ここまで深傷を負わされるとは……厄介だ。」


「ぐぉおおおおおおおおおおっッッ!!!」


 ……と、まぁあの虎龍王(黒いの)は思ってるのだろうが、一部解釈違いがあるな。わざわざ自分の能力までご説明していただき恐悦至極だ。


 だって、俺は化け物(カマキリ)の体をしているんだぜ?生きるものは皆化けの皮も人の皮も被るもんだ。なら、“脱皮”ぐらいしても当然だよな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ