Gale of Imperial【大和撫子】
長らくお待たせしまして申し訳ございません。
今後はこのような事にならない様に、ペースを上げて投稿したい所存です。
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黒髪ロング、おどおどとした表情の、それでいても大和撫子と言える私の一番の友達。
松平 夕夏梨ちゃん。
私と同じ大学の卓球サークルの仲間なんだけど、お家がえらい貧乏で、高校の時の黒いセーラー服をそのまま着てるらしいの。
まぁ、どっちにしろ凄い似合ってるし可愛いよね!
「ごめん、ごめんってば!連絡寄越さなかった私が悪かったってば!」
と、私は念のためにと胸元にガムテープで張り付けてた“端末”が振動したことに気付く。
【帝都乃旋風 様 を登録しました】
【ケモ耳大好き 様 を登録しました】
“ゆかりちゃん”がもう気付いてるのかは知らないけど、私は抱きついた“ゆかりちゃん”を抱き締めて、人目のつかないビルとビルの間に隠れた。
「ねぇ、ゆかりちゃん?もしかして……」
「やっぱり……そうだったよね……」
松平 夕夏梨もまた【Real;Users】のデスゲーム参加者の一人。
“端末”でアバターそのものに変身し、アバター同士で殺し合う……その一人。
「ごめんなさい、こんな変なのに参加しちゃって……幻滅しちゃうよね……」
?なんで謝るの?
「ん、どういうこと?私はゆかりちゃんを幻滅するわけ……」
「だ、だって!理奈ちゃん!私、私……ひ、人を一人……殺しちゃったんだもん……」
私の胸元に涙を流して離れない“ゆかりちゃん”。
もう、泣き虫さんなんだから……
◇
時間は遡ること2時間前の AM9:00。
お茶の間では女児向けアニメ、『Feuer☆フリキュア☆第206小隊』が始まってる時間である。
……といっても松平家にテレビはない。
通ってるのは水道、ガスの二つだけ。決して節約しようとして、そうなった訳ではなく元より多額の借金を背負っていた故にこの事態である。
故に、夕夏梨は高校は公立、大学は国立大に行く様強いられ、彼女の努力の末に、国立であるR大学に入学。両親もさぞ安心した事であろう。
本人が電子機器に触れる機会はつい最近の事。
大学からの支給のパソコンが届き、漸くその“得体の知れない鉄の塊”の正体を知れた程に、彼女は電子機器そのものに疎かった。
オンラインSRPG【Real;Users】の存在もつい最近の事。
今の今までランカーや実力あるプレイヤーの事ばかり語っていたが、彼女は初心者である事をご理解願いたい。
光熱費とは無縁である松平家の照明は日の光。目覚まし時計要らずの生活により、いつの間にか一家全員体内時計で早朝に目覚めるようになっていた。
だが、“買えない”からそうできるようになった訳ではなく、元々“買う必要がない”から目覚まし時計要らずなのだ。
この一家全員、制限のある生活に馴れすぎてしまった。
借金自体も二年前に返済は終えている。(利息分は残っているが)
言うなれば、好きでこの生活をしていると言った方が正しい。極度な貧乏性が根付いてしまった一家なのである。
では本題に入るとしよう。松平 夕夏梨は昨夜から杞憂に終わって欲しい危険予知に囚われていた。
それはデスゲーム開始直後のPM21:00頃、家の固定電話で何度も寸白宅に電話をかけたが、全く応答が返ってこない。
当然ではあるが、その時寸白兄妹の身に何が起こってるのかなど、知る由がなかった。あの時理奈は家にスマホを置いていってしまい、連絡網が途絶えてしまった。
その時夕夏梨は「もしや理奈の体に何かあったのでは」と危険予知する。そう思った瞬間だった。【Real;Users】運営からメールが届いたのだ。
そして、運営と御対面。
「そういえば、理奈ちゃん……今は“ケモ耳大好き”ちゃんだったかな?彼女もこのデスゲームに参加していたね。」
【Real;Users】運営はそれとなく彼女の友人の詳細を仄めかす。どちらかと言うとデスゲームに参加させる様に誘導する為の知能戦法に近い。
「えっ……?」
突拍子も無く発せられた内輪話に思わず驚愕し、動揺する。
「参加したくなった?」
夕夏梨の耳元で囁く。発言を、解答を迫るように。
だが決断が揺らいだ訳ではない。中途半端な甘えを切り捨てた、と言った方が正しい。おどおどとした仕草表情は見映えだけであり、彼女は想像以上に芯の通った人間なのだ。
「……そうじゃなくて、知らないフリして友達続けてるのが嫌なだけ……」
「だから私は理奈ちゃんを死なせない為に、生き延びます。」
“寸白 理奈を死なせない”、それが彼女がデスゲームに参加する理由。結果的に参加する羽目となったが、彼女にとって後悔はない。
そして、虚空の彼方から現実世界に戻ると、腕には緑青の端末を手にしていた。
そして、今朝。
松平 夕夏梨は理奈の安否を確かめるために朝一で白山ヒルズに向かう。
走る、走る。
日々のジョギングで鍛えられた足腰は【Real;Users】の足腰にも負け劣らない程。ただ、高校の制服である黒いセーラー服を着ていなければ尚の事早く走れた筈なのだが。
【Wonder Fool 様 を登録しました】
【帝都乃旋風 様 を登録しました】
「……!」
走行最中に通知が鳴ったことに気付いた。
【Real;Users】である事を隠そうともせずに此方向かってきたのは、黒い大型犬の“ロットワイラー”を連れた金髪オールバックの若い男性。
粗方検討がついていたのか、セーラー服を着たまま血眼にして走る女を怪訝に思ったのか、夕夏梨にとっては知る術はない。
「……へぇ、アソコで派手にヤりあったみてぇだから、やっぱ何人かは来ると思ったぜ【Real;Users】ちゃんよ。だが可愛らしい顔であるのは好都合だぜ。舐め回してぇぐらいに……」
猥褻な発言、そして嫌らしい目付きでマジマジと見つめられては唾棄したくなるほどの嫌悪感を示すのは当然。
だが、彼は敢えてそんな態度を取る。可愛い女にはとびきり“嫌悪”してから痛め付けたいからだ。
「ま、【Real;Users】同士……仲良く殺し合おうや。俺は金沢 鶴栄こと【Wonder Fool】だ。」
「名乗る名前なんてありませんし……私の名前なんて端末で見てください……」
相手のペースに耐えられず、全身に鳥肌が立つが、それでもなんとか相手に隙を見せないためにも震える声帯で嫌悪感を示す。
「おっほっ、良い顔してるねぇ昂ってきた。」
「じゃあ、行くぜ」
二人同時に変身の宣言を合わせる。
「へ、「変身」ッ!」




