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Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
26/44

Gathering【事後被害】

 春の大学の休日と言うものは平穏極まる物である。


 そもそも人が居ない。居るとしても研究に明け暮れる教授や大学四回生と言った所。

 それ以外で人が居るとするなら大学内のコンビニ程度だろう。(日)、(祝)には残念ながら大学内の食堂、レストラン等は閉鎖されている。


 モーニングと張り切って言った筈だが、才羽教授の想像するモーニングなど、精々コンビニのツナサンドでも買って、テラスで生暖かい風に黄昏(たそがれ)ながらホットコーヒーを(すす)るだけで充分なのだ。


と、その光景を眺めながら奢りの昆布おにぎりを口に運ぶ銀。

「で、何か話があるのでは……?」


「オイオイオイオイ、まだそんな下らない(・・・・)デスゲームの話でもするのかい?」


 折角のモーニングが台無しだ、と不機嫌な顔をする才羽。


「下らないとかそういう意味ではなく……」


「そうさ、君たちは理由を求めるためにそうやって仕事だとか事情だとかに関連付けたがる。」


「年収いくら?とかお仕事は何されてる?とか交際経験は?とか……そんな下らない事ばかり聞くような下らない人間と付き合った記憶はないんだけどね。」


 ホットコーヒーのカップを揺らし、真剣な顔をする。


「飲みに行ったときでも、偶々会ったときでも、フリキュアの話とか仮面刑事の話とか、道中に居た蟷螂(カマキリ)の大きさの話みたいな……そんな童心を振り返らせるような、他愛もない話をしたいんだぜ?」


 銀はやれやれとした顔で奢りの緑茶を口に含む。


「こっちもピリピリし過ぎて、何かと冷静さ……いやお気楽さを欠けていた様だ。」


「敵わないな、教授には。」


 それから40分、本当に他愛もない話。女児向けアニメや、道中に居た蟷螂(カマキリ)や便所コオロギの大きさの話、まだ経営している近所の駄菓子屋の話やら……


 教授を崇拝する訳ではないが、教授は幼さを受け入れるが故に誰よりも賢人だ。其処らの上っ面だけの物語性の無い大人(モブ)とは立つ土俵が違う、そこが私が教授を尊敬する理由。


 閑話休題。


「……とまぁ、僕のアバターってもしかしたらいつまでも女児向けアニメ見てたり、童心を忘れないって事からあんな金髪碧眼全裸幼女になったんだろうね。」


「金髪碧眼は兎も角、全裸要素ありましたか……?」


 銀は話の持ち直しが上手いな、と思いつつも全裸要素が見当たらないことにツッコミを入れる。


「長く話しちゃったね、じゃあそろそろ行こうか。」


「……な、もうこんな時間か……!」


 腕時計を見れば正午まで約30分前。

 無駄……とは言い難い貴重な時間だったが、時間を必要以上に使いきってしまった。こんな時に妹が一人家に居て、もし【Real;Users】と遭遇しようものなら非常にまずい。


 あの大還暦爺(死に遅れ)もたかが無関係な一般市民の一人、人力を遥かに超えた【Real;Users】に遭遇して、殺され、事故処理されるなんて望んでいない。


 と、そこからは走って、走って……急いで戻ってきた。


 丁度12時ピッタシだな。

 結構全速力で走ったのに、余裕綽々と着いてくる才羽教授には驚いたが……


 戸を開け、居間に入ると、妹と、爺と、見知らぬ顔の女の子が鯛の活け作りを食していた。


「ただいま。」


「お邪魔します、久し振りですね、一色さん。」


「帰ったか銀……む、才羽氏ではないか。久うな。」


 才羽教授の顔を見て、不動住職はにんまりと微笑んだ。

 良好な人間関係である彼ら二人は、大人同士の話をしようと別の部屋へ移動する。


「おかえりお兄ちゃん!」


「あ、あの……初めまして、お邪魔……してます!」


 黒い長髪に、黒いセーラー服。大和撫子を第一に連想させる……妹の次に可愛らしい子だな、概ね妹の友達と言った所か。


「初めまして、私は……松平 夕夏梨(まつだいら ゆかり)って言います、あの、理奈ちゃんの同じサークル仲間です!」


 頬を少し赤らめて自己紹介する。理奈のサークルは確か卓球サークルだったな。


「ああ、初めまして、私は寸白 銀。理奈の兄だ。」


◆ 二時間前

 昨日は色々あって、凄かったなぁ。


 だってアレだよ!?いきなりデスゲームが始まっちゃって!お兄ちゃんがお姉ちゃんになって!ヒルズがどーん!ってなって、敵が兵器でバンバンやって!お姉ちゃんがプッツンきちゃって!


 なんだかんだでお義祖父ちゃんの家で居候してもらうことになったけど……


「はっ!こんな時間!?……って今日は日曜日かー……」


 切羽詰まった顔で目を覚ますが、咄嗟に曜日感覚を取り戻す。今日は日曜日。平穏を奪われた土曜日の次の日だ。


「今日は御寝坊であるな、理奈。まぁ休日ぐらいゆっくり休むが良かろうぞ。」


 愛いものだな、と笑みを浮かべる不動住職。だが、今日は行かなければいけない場所があるのだ。


「ごめん!お義祖父ちゃん!私、今日白山ヒルズ行かなきゃ!お昼には帰ってくるからご飯は朝昼兼用で!」


 修復工事の為に(仮)自宅の調査をしなければいけない。


 火災保険のお金を一円でも増やさなきゃいけないし……

 あ、でももしかしたらまだ火事が終わっていない、死体処理が終わっていない可能性があるけど、百聞は一見にしかず……だよね!


「あれ、お兄ちゃんどこ行ったの?」


「銀は大学の方に行った様だぞ。」


 大学?誰か居たっけ……あっ!才羽教授だ!あの人の授業面白いんだよねー、私もC言語の授業受けたけど凄い分かりやすかったなぁ!

 ……って訳でお兄ちゃんは才羽教授の所行ってるんだね。じゃ、そろそろ行くかーっ!


 白山ヒルズは跡もなく崩れていた……のはまぁ昨日の段階から解っているのだが、人だかり、野次馬の集団が凄い。

 現にお姉ちゃんが昨日其処でオスプレイを破壊しちゃったからね……


「あっ……!!理奈ちゃん理奈ちゃん理奈ちゃーーん!!」


 可愛らしい声。

 走って私に抱きつこうとしてきたのは、私のサークル仲間の中でも一番仲の良い“ゆかりちゃん”。


「昨日から固定電話繋がらないし理奈ちゃんの携帯も繋がらないし本当に心配したんだからーー!!」


 泣きながら抱きついてくる。いつものおどおどとしたキャラも忘れるぐらい必死に泣きついてくる。


「ごめんごめん、逃げるのに精一杯だったから、携帯も置いてきちゃってさ……」


「うううううう……」


 もう、ゆかりちゃんは可愛いんだからもう、ベリーキュートなんだから……

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