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Real;Users  作者: 熊蜂
二日目
25/44

Return【協定修復】

『カマエ解除』


 【牙狼(ガロウ)】のカトラスは“竹刀”の形へと戻り、仮面の色もまた無地の白へと戻る。


 そして、立ち直ろうとする【虎龍王(こたつおう)】に向かってトドメの一撃をプレゼントしてやらんと一直線に走る。


 だが、【虎龍王】はそう相手の思惑通りに崩れ去りはしない。


 ゆらり、と外傷を浴びながらも、【牙狼】の動きから目を放すことは無く、ただ一瞬の隙を狙うまで。


「「これで、終わりだ」ぁああああ!!!!」


 【牙狼】の狙いは首。牙突の様な構えのまま進む。そんなもの、初めから狙いがわかっているなら容易く回避できる──という甘い考えは捨てた方が良い。


 それに反応し、即座に避ける程の動体視力、俊敏性があれば確かに避けれるだろう。

 だが、距離はおおよそ3m弱と言った所。そして、想像以上の速さ。


 決着あり、と?

 確かに“回避”という考えは捨てろと言ったまでであって、“死ね”とは言っていない。


 【虎龍王】は崩れかけの柱に今の力いっぱいに蹴りを入れる。

 パチンコの球を飛ばすが如く衝撃に身を任せ、低空を浮遊し、前進する【虎龍王】。

 共に【固有能力】である【点火】を使う。


 何処に使用したか、足裏の直ぐ後方だ。空気を【点火】し、小規模な爆発を起こす。爆風を用いて更に()()したのだ。


 即座に熱線を射出した、【ストーブレード】の狙いは【牙狼】の(はらわた)


 二人のX軸が重なると共に最後の一撃が決まる。


「かい……じょ……」


 【牙狼】、腸を切り裂かれた感触を感じたと共に変身解除。


 変身解除によって致命傷を食らうこと無いものの、ダメージ量が多すぎる為に解除したとしても外傷が無いとは言えない。


 そして赤兎は地に伏し、無様にも倒れる。


「……当然…………ガッ…………はッ……?」


 【虎龍王】、鎧ごと左肩を砕かれる。そして全ての力を使い果たしたのか、そのまま衝撃に身を任せ、動かなくなった。


 無事なわけが無い。尚且つ変身すら解除していない。


「俺の……敗けだ敗け。…………おい、大丈夫か?」


 特に脇腹に血を垂らしつつも、赤兎は立ち上がり、【虎龍王】の方向へと駆け寄る。


 ……だが、【虎龍王】に何を叫ぼうと動こうとはしない。意識までも失ってしまったのか。


「なんで変身を解除しようとしない!」


「死にたいのか!?変身解除だ!」


 咄嗟に赤兎は【虎龍王】の端末を奪い、【変身解除】のボタンを押すのであった。


◆一色神社


 AM9:20、雲ひとつ無い晴天。


 その光に照らされ、寸白 銀(すばく ぎん)は目覚める。決して起床時間が早いとは言えないが、休日としては適切ではあるだろう。


「……此処で寝起きするのも久々だな。」


「ぐびー……ぐびー……」


 それに対し寸白 理奈(すばく りな)は寝相が悪く、そして起床時間も遅い。銀とは何処で差が付いたのか……


「……可愛い奴め。」


 だが愛すべき可愛い妹だ、大学生になろうとも可愛いげが失せることはありえない。


「起きたか、銀。朝早々に残念な報せがある。」


 と、顔を柔らかくした途端、一色 不動(いっしき ふどう)住職が障子を開け、入室する。


 そして、銀にリビングに来るよう促した。


『今日未明、■■■■株式会社が倒産致しました。その事により、日本の株価に莫大な影響が出始めています。』


『■■■■株式会社は、人気オンラインゲーム『Real;Users』の製作、運営に携わりましたが、『Real;Users』は別のスポンサーが就くまでサービス休止──』


 ニュース番組としても出来立てホヤホヤの速報。

 なんたって、あの社会現象を巻き起こした【Real;Users】なのだから、女児向けアニメなど視てる暇など無い。


「……拙僧、『Real;Users』のスペシャルサンクスでな。まさか、投資していた株が一気に無くなるとは……」


「…………世捨て人である筈の僧侶が果たして“株”なんて合法的な賭事して良いのか?」


「其は何処の時代の話か……カッカッカ、まぁ、暇ができるなら久々に一局……」


 不動住職は熱烈的な浄土宗信仰者というだけであって、世を捨てたいが故に、虚無僧の様に宗教に逃げた訳ではない。


 只、生まれてこの方、仏に身を捧げたいが故に信仰し続けたまでである。


 だが、虚無僧など存在したのは最早何百年も昔の話、銀としては只のジョークにしか過ぎない。


「悪いな爺、今日はアンタの将棋に付き合える程の余裕は無い。そろそろ外出するのでな。モーニングは他所で食う。」


「……左様か、道には気を付けるのだぞ。」


◆R大学


 少しばかり前に卒業した国立大学。

 仲の良いの教授に、『Real;Users』の内情に詳しい男が一人。


 その名を才羽 明宏(さいば あきひろ)


 彼の個室に入るには、合言葉として何故か“女児向けアニメ”の台詞を言わなければいけない。

 銀が女児向けアニメに嵌まってしまったのも彼の影響と言っても過言ではない。


「合言葉を言いたまえ。」


「……『フリッ!とヒラッ!と大()()!フリキュア・アハトアハト』……あ──」


 ここで問題だ。


 寸白 銀は“音声認証”によって変身を行っている。認証ワードは「変身」。


 だが、別にニュアンスが違おうが「へ・ん・し・ん」と続けば「返信」だろうが「その『へん、しん』じへん」でも認証してしまうのだろうか。


 答えは○。“変身”の意思がなくても「へんしん」の言葉さえ言ってしまえば銀の体は【吸血姫アナトミー】へと変貌してしまうのである。


 迂闊すぎた。

 というか考慮していなかった。

 ……と、嘆きはそこまでにしておいて、銀の体は瞬間的に【吸血姫アナトミー】の女体にへと変貌し、その瞬間ドアが開く。


【さいばぁ 様 が追加されました】

【吸血姫アナトミー 様 が追加されました】


「……ぶーっふっふっふふふふふふふふふ、ふふふ、ふふふ、ふふふふふふ」


 幼女の笑い声が聞こえる。

 女児向けアニメの台詞を叫んで本当に変身する人が居るなんて、と思いながらだろうか。


「ふふふふふふ……はぁ……はぁ……ゴメン、ちょっと迂闊すぎてお腹痛かったーふふふふふふひひひっひ……」


「…………教授?あの、その……体は……って!服!服着てください!」


 【吸血姫アナトミー】は、本人の知る教授とは似ても非なる“長い金髪の幼女”となった姿を目に焼き付ける。


 第一の感想は……まず、全裸だ。いくら中身がおっさんだとはいえ、この絵面は非常に不味い。

 顔を赤らめた【吸血姫アナトミー】は幼女に向かって羞恥的な感情を顕にする。


「えー?女の子になったら自分の裸体まじまじじまじま見るぐらいの一つや二つ男の本望って奴だろ?」


 幼女、受け取った情報としては【さいばぁ】というアバター名の【Real;Users】は『それぐらい別に良いじゃない』と言いたげな顔をする。


「私はそんなことしません!正直言って見、苦、し、い!ので服着てください!」


 ──と、自然と女性ロールの定着しかけているアナトミーである。仕草もなんだかソレっぽくなりかけているのは気のせいでは無いだろう。


「そんなにプンプンしなくてもいいじゃないかー全くー」


 つまらなさそうな顔をし、渋々とハンガーに掛けてあったダボダボの白衣に身を包む。


「……いや、でも銀君……見違えたなー!……まさか君もデスゲームに参加してるとは思わなかったよ。」


「……参加していなかったら……私はこの場には居なかった事でしょう。」


 昨夜何があったか、本当に思い出したくない。

 そもそもデスゲームなど始めなければ、こんな目には遭っていなかったのだ。満足していた日常を奪ったデスゲーム主催に微塵の容赦など必要ない。


「んまぁ、兎に角、デスゲームだとかなんだとか言ってたけど、僕は身内友人は疎か他人を殺すような勇気なんか微塵もない。だからといって巻き込まないように変に距離を置くつもりも無い。」


「……つまり、協力ならする……と?」


「そうそう、後の事は君のお家……はそういえば全焼したなぁ。」


「今はあの爺の家にいる。」


「あー、一色さん家かー。んじゃあ今日はそこでお邪魔させてもらうよ。今後の話だとかはそっちでもいいんじゃない?妹さんもいるだろうし。」


 人間国宝である不動住職の存在はこの近隣では知らないものが居ない程であり、教授にも保護者という立ち位置としても何度か立ち会っており、友好的な関係を結んでいる。


「……解った。変身解除、じゃあ早々と向かおうと──」


「変身解除、いやー僕の奢りで良いからさ、先ずは大学でモーニングでも戴こうじゃないか。」


「……教授がそう仰るなら。」


 と、男二人、大学のテラスにてモーニングを戴く事となった。

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