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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
20/44

The One Day Ending【一夜終了】

◆ 道中

「ハァ……ハァ……」


 忍者のように屋根を伝って跳び舞う【吸血姫アナトミー】は気絶状態である妹、【ケモ耳大好き】を姫抱きし、走る。


「……あれ?おにぃ……お姉ちゃん?どうしたの?そんな顔で」


「理奈ッ!?無事か!?」


 屋根瓦を削るほどの急ブレーキを掛けて、屋根の上で立ち止まる。


「え、だから言ったじゃん死んだフリするってさー」


「いやー煙がものッ凄く臭かったから死にそうだったけど一酸化中毒には至らなかったよー」


「……良かった……良かった……」


「え!?なんでお姉ちゃん泣いてるの!?ガチ泣き!?」


 寸白 銀(すばく ぎん)は変身してから、薄々とではあるが何かと感情的になったり、涙脆くなったりしている事に気付く。


元より感情が無いという訳ではないが、一般人的な思考への理解、客観性の理解に関しての感情の起伏が少なかった事に自覚はあった。


 対して寸白 理奈(すばく りな)は変身してから、恐怖の概念が無くなった故に思考力がAI並に上昇した。そして、感情、人間性とはかけ離れた、“蛮勇にして万有を有する”様な【Real;Users】に成り果てた。


 ひと安心した二人はとある神社を目の前にし、変身を解除する。


「んー……匿ってくれるかな?」


「あの大還暦爺なら状況理解もしてくれるだろう……と願いたい。」


 本殿より右端に設置された和モダンなテイストの民家。民家にしては広大。そして豪邸にしては貧相。大きさはおおよそ4LDK程と見える。


 少なくとも一般人にはローンを組んででも手の届きそうにない家である。

入口に向かい、軽く二回のノックを鳴らす。


「待っておったぞ、拙僧の大事な大事な孫二人よ。テレビで状況は概ね承知している。」


 法衣に身を包んだ、バーコード頭の老人。名を一色 不動(いっしき ふどう)。去年120歳に到達し、現役で浄土宗とインターネット事業への架け橋を作った男、人間国宝の一人でもある。


 寸白兄妹とは育て親と拾い子の間柄で、関係は良好。盆以外でも頻繁に会う様な関係だ。


「……「ただいま」ー」


 応接間には二人用に座布団が敷かれ、全ての準備が整っていた。


「晩御飯はもう食したか?」


「あぁ。」


「うむ、宜しい。まぁ、茶でも呑んで、まずは心を落ち着かせるべきだな。」


 熱い煎茶で一服。二人の緊張の根は多少(ほぐ)れた事だろう。という事から、話題を切り出す。


「……して、白山ヒルズにて何が起こったのだ?」


「…………小型航空機(オスプレイ)がいきなり突っ込んで来て、大量に人を殺した……と言っても信じるか……?」


 非日常的、そして理解不能だとは解っているが、真実を告げる。


 彼にとって不動の知らないことは無い、という認識が強いからこそ【Real;Users】の根幹までもは語らなくとも、伝えておくべきだと。


「信じるともよ。銀、お主が嘘を吐いたことなぞ今の今まで無かっただろう。同じく理奈もそうであるようにな。カッカッカ。」


「それともう一つ、少し向こうにある民家の話なのだが……」


 テレビを点け、録画してある“富凍家が家事”になったニュースを見せる。


「火事、だそうだ。」


「悼ましい限りだが……なんだ?」


富凍 滉(ふとう こう)という行方不明者、某ゲームランカーだそうだ、恐らく拙僧もそなたらも知っておるゲームの、な。」


「……【Real;Users】?」


「うむ。リアルユーザーズだな。3chのスレッドにて今祭りになっておるぞ?」


「……お爺ちゃん若者嗜好ありすぎない……?」


「カカ、何、最先端を往く若者と比べれば拙僧もまだまだよ。」


「クッ……何?【虎龍王(こたつおう)】だ、と!?」


 銀と理奈は不動に聞こえないようにコソコソと相談する。


 端末は極力隠すように、面倒事に巻き込まれている事を知られない為に、そして仮に不動が【Real;Users】だと疑い始めた時にはいつでもカマをかけれるように。

 細心の注意を払うことを共通認識として。


「……!悪いが大還暦爺、ちょっとパソコン貸してもらうぞ……」


「ム、まだ日課が終わってないのだが……まぁ良いだろう。」


◆【Real;Users】サーバー1 大繁華都市ラジニアス


 【吸血姫アナトミー 様 がログインしました。】

大繁華都市ラジニアス。【Real;Users】のサーバー内でも屈指の大人気サーバーであり、よく荒れることで定評のあるサーバー。


 そして、現サーバー内は【虎龍王】の自殺(?)で持ちきりだそうだ。


「おっ、アナトミーじゃん」


 【吸血姫アナトミー】もランカーとしてはちょっとした有名人であり、呼びやすい名前で親しまれている。


「……虎龍王の自殺、本当か?」


「虎龍王がファスタルダで自殺宣言した30分後ぐらいになんか虎龍王宅焼けたらしい」


「でも行方不明扱いだから逃げた可能性もあるゾ」


「確かに白骨死体ごと焼けるなんて事あんま無いと思う」


「虎龍王マッマの脳天に直撃した銃弾あったって事は虎龍王が射殺したんじゃね?」


「ガチ犯罪者で草」


「……なるほど」

「他に変な事は無かったか?」


「今日は浄土の光早めに落ちたよな」


 浄土の光、サーバー1、大繁華都市ラジニアス内でのレート最上位を計測したユーザー。


 基本何でも屋の仕事をしており、レイドバトル等にも率先して参加し、メイン盾をしてくれるユーザー。ほぼ決まった時間にログインし決まった時間に落ちるタイムテーブルでやっているので時間を早めたりする事は滅多に無い。


 現実内……実は隣に居る不動住職がその人なのだが。


「……今日はここぐらいで落ちる。」


 チャット欄に「おやすみ」と書かれたイラストスタンプを送信し、「乙」のメッセージを読み上げ、【吸血姫アナトミー】はログアウトした。


◆ ■■■■株式会社

「……なるほどね。【吸血姫アナトミー】……中々見処のあるユーザーだね。」


「一緒に居た【ケモ耳大好き】も中々だね。」


「じゃあ、そろそろこの会社畳もうか!」


 秘書は驚いた顔で「えっ」の言葉を漏らした。

「それは……どういう?」


「君は一緒に居て欲しいな。とりあえずこの会社は倒産させるよ、倒産って言っても計画倒産だけどね。大丈夫大丈夫、他の【Real;Users】にバレない為に別の場所に引っ越すだけだって!」


「手続きは一ヶ月前からしていて、もうそろそろ全部無くなるよ。あっ!そろそろ引っ越し業者が来るねー。」


 その言葉を告げた数時間後の深夜、■■■■株式会社はもぬけの殻と化した。今まで置いていたパソコン、電子機器、も全て何処かの闇へ消え失せた。


デスゲーム一日目 終了


 ▼死亡者 1名

 【Second 様 がログアウトしました】

一章の一日目、終了しました!

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