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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
18/44

Compared Wisdom【徹底戦略】

 冷たい夜のコンクリートに転がる屍肉共の散乱は【Second】の足跡である。


 嫌と言うほどの死臭香るその道路に純白の僧衣の大男が足を踏み入れた。

 虚無僧の様に顔を多数の面布で隠している。

 服装は多少あり得ようが、少なくとも面布で隠し通すのは奇怪。


 このような不気味な格好の者はそうそう街には居ない。

 ただ一つ、【Real;Users】を除いて。


「カッカッカ……恐ろしきかな恐ろしきかな……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。主旨奉る■■4月○日崩御……往生なされ往生なされ幾数の霊魂よ。浄土へ還りたまえ……」


 この惨状を見て第一に経を述べる。そして……


「カッカッカ……魂さえ無くなれば“肉”でしかないな?先ずはこの【生殺与奪】……とやらの検証もしなくては、な。」


 虚空にその語を響かせても返事など無いが、能力発動を意識すれば、肉体で返事が帰ってくる。蛾も、カラスも、人も、目に見える“死体の山”が独りでに起き上がった。


「嗚呼、なるほど、なるほど……カカカ、カッカッカ……面白い。拙僧も大いに楽しめそうだ。」


 この夜、知らずと大勢の動死体(ゾンビ)が街を徘徊し、生き血を残し姿を眩ませた。果たしてこの残骸が何処に消え失せたのか。誰も知る術はない。


 ただ一人、【生殺与奪】を司る死霊術士(ネクロマンサー)の【Real;Users】、そのアバター名を【末吉(すえきち)】を除いては。



 平地。死角の無い砂利の地盤。

 それ以外に眼に映るとするなら、象の体を模した滑り台、ジャングルジム、塗装の剥げかけたシーソー、木製のベンチ……何珍妙な箇所も存在しないただの公園。


 だが、こんな夜中に公園に行く人なんて、()()うは居ない。ましてや、そこで戦闘を繰り広げるなんて思いもしないだろう。


 灰髪の吸血姫も、白髪の蛮勇も殺戮兵器の奇襲を無事掻い潜り、ようやく目的地の公園へとようやく足を踏み入れた。


「……ハァ……ハァ……」


「クッ……何とか生きてる……な。」


「お兄ちゃん、なんか言うこと無い?」


「……あぁ。先程は本当に助かった。もう一足遅かったら私の命はどうなった事か……」


「まっ、その後のお姉ちゃんの行動にも助けられたよー、私だけでも対処できたかもしれないけど、あそこまで速いスピードは難しかったかも。コンビネーション能力ってのが高いのかもねー、私たち」


「クッ……何年の付き合いだと思っている……」


 ニヤリと目を細め、“当然だ”の一言を付け加える。


「じゃ、そろそろ本題に移ろうか。」

 生き血で汚なく塗り付けられた【Second】は、ポタポタと道路に塗料を溢しながらも、標的が居るであろう公園へ到着した。所在はジャングルジムの上。見覚えのある影が二つ。


 先程は分析が遅れたが、【吸血姫アナトミー】という【Real;Users】は【温度】を操作するらしい。【標的1】に設定。


 次に【ケモ耳大好き】という【Real;Users】は【恐怖】を無効化するらしい。【標的2】に設定。


 【能力】【戦闘データ】【思考】其れさえ解れば所詮は人間の範疇。


 【Second】は自身の分析を確信し戦闘体勢へと入る。

 確実に殺せるという、確固たる自信を背に。

 顔面部をバルカン砲に変え、剥き出しにする。そして目前の仇敵二体に向けて発砲。


回避。


 一人、【標的1】。真っ直ぐ飛び上がり、此方の頭部を狙うと推測。


 ──対策法、頭部にバルカン砲の追加、【温度変化】の範囲に入らないように重警戒 【標的1】との距離4m。


 斜め方向に撃ったバルカンの銃身から、まるで木の幹からキノコが生えるかの様に、更にバルカン砲が生えてくる。そして、【標的1】に向けて発射。

 防御、回避に成功した場合急速な後退を選択します。


 もう一人、【標的2】。ジャングルジムをそのまま下へ。


 ジャングルジムには【温度変化】によって氷が貼ってある事を確認。

 【標的1】が離れたことにより自然的に溶けると推測。


 視界に外れないように氷を破壊するよう行動を起こします。


 氷に対して銃弾での攻撃、小型油性焼夷(ナパーム)弾は悪手。


 小型ミサイルでの爆破を承認します。

 ──発射。爆発確認。


 【標的2】の姿が見えない場合、二機目の小型航空機(オスプレイ)で退避することを選択します。


「……理奈の言った通りだな」


 【吸血姫アナトミー】は空気中の水蒸気を【温度変化】で氷に昇華。

 人一人すっぽりと入る大きさの立方体に変化。


 摩擦力の低い氷の前では銃弾は無意味。いくら撃った所で砕けはしない。

 だが、そううまくはいかず、【吸血姫アナトミー】の視界に入る前に【Second】は一定の距離を保つように離れていた。


 そして、全身を小型航空機(オスプレイ)に変化させる。


「クッ……行動が速いな……今のうちに……」


 空中で氷の立方体から、滑り台の方へ向かって飛び降りる。


 【Real;Users】特有の筋力により、怪我も無く着地。滑り台の下へ隠れる。


 【Second】は【標的1】の所在を見逃すことはなく……呑気に隠れる一部始終を見守った。勝利を確信した故に、最後まで相手に油断させる必要がある。“自分は気づいていない”、と。


 AIも進歩し、嘘をつく、見抜く能力が身に付くように成長を始めた。

 もはや、思考だけで見るのなら人と大差の無いほどにまで。


「……つまり奴は確実にお前から潰す……と?」


「そう。お姉ちゃんの能力は致命的に不利。先ず私を狙うと思うの。」


「あの殺戮兵器は多分兵器って言うぐらいだからナパーム弾とか確実に持ってると思う。白山ヒルズになんかねばねばーってしたものが壁辺りに垂れてたし、かすかにアロマっぽい香りもしたし……」


「……ナフサは一般普及されてるし、作ろうと思えば作れる……で、敵の方はどうするつもりだ?」


「ナパーム弾で公園全体が燃えればもうお姉ちゃんの勝ちみたいなものだよ?あー……私はそうだね、再起不能のフリでもしようかな。」


「…………どういう事だ?……あと命を軽々しくするな……本当に頼むから……命だけは大切にしろ……」


「すぐに解るよ!ホラホラ、そろそろジャングルジム凍らせて!」


 【Second】は予想した通り、空中から液体のような物を散布する。


 地面にベットリとこびりつき、離れようとしない。そして、引火させた大量の爆薬を地面に叩きつける様に落とす。


     爆発。

      炎上。

       大爆発。

        大爆発。


 ハリウッド映画の様に派手な大爆発が。


 ──果たして結果は。


 この状況を切り抜けられる策があるのか。


 ──人とAIとの()()()()といこうか。

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