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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
16/44

Question Time【仇敵之姿】

 【Real;Users】吸血姫アナトミー 様の所在はこちらにまで迫ってきています。


 これから取るべき私の約56パターンの内の最善の行動は『気付いていない事を煽り近づかせ、どれ程の戦闘能力を持つか検証する』でしょうか。


 はい。能力が判別しない以上実行します。


 能力は判別できましたか?


 はい 恐らく冷凍系、温度系の物と推測されます。

 では次の戦法へ移る為一時的に計算時間を所望します。


 吸血姫アナトミーの固有能力である【温度変換】を用いて、無惨にも凍結し、墜落していく戦闘機には抵抗も足掻きも無い。まるで機能までもが凍結(フリーズ)したかのように。


 瞬間的な冷気と湿気による結露等により白山ヒルズ全体には及ばないが、黒煙や小さな火種は抑えきる事ができた。


「クッ…………離れるか……」


吸血姫アナトミーは墜落していく鉄屑を思いっきり蹴り、弧を描くように回転し、墜落場所とは5m程遠い地点。ケモ耳大好きが待機している近くへと着地する。


 機体が地面と触れ合った瞬間に莫大な土煙と共に、鉄の鈍く喧しい大音声が白山ヒルズの周囲に行き渡った。


「……どう?やれた?」


「どうも何も見れば解るだろう……」


「いや、そうじゃなくてさ、流石にアレ本体じゃないでしょ?」


「……だがあの中に人が出る様な動作は無かったが……」


 ケモ耳大好きは真剣な表情で、話が噛み合ってない事を理解する。「はー、もう」と若干の呆れ顔で間違いを正そうとする。


「ねぇ、中に人が居る……って決めつけてない?」


「……何?」


「さっき端末に登録された【Second】の情報見たんだけど、能力は【思考兵器】……読み上げるよ」


【固有能力】【思考兵器】

自身の体(変身前と変身後両方)に収まる範囲で兵器を格納し、体のあらゆる場所から兵器を放つ事ができる。


「アレって確かオスプレイだよね?ちょっと遠くのM市にアメリカ軍が基地作ったっていう」


「……いや、待てオスプレイって確か14mだぞ?」


「うん、だから人間って決めつけてない?」


「…………あの惨状を見る限り無差別に人を殺したのだろう。銃撃音もいやと言うぐらい聞こえたしな……だが、巨人が【Real;Users】をしていたと言うのか?」


「もっと簡単だよお兄ちゃん。」


 ニヤケ顔のケモ耳大好きは吸血姫アナトミーに指を差す。


「じゃあお兄ちゃん、なぞなぞ、しよっか?」


「なぞなぞ……?」


 「意味が解らんぞ」と言いたげな怪訝な表情を浮かべるが、その顔を押し退ける様にケモ耳大好きは口を開ける。


『形は無いけどそれを証明するために体が部屋中に置かれるモノってなーんだ?』


「………………」


『ヒントその1 生き物じゃないよ』


「…………」


『ヒントその2 軍事利用されてるよ』


「……」


『ヒントその3 【Real;Users】はゲームであって参加者は人間以外にも絞ろうと思えばできるよね?』

『ヒントその4 ヒントその5 ヒントその6 ヒントその……』


延々と繰り出されるヒントの山に「結構だ」の声を上げ、溜め息を一息出し、微かな声で問いかける。


「…………理奈。貴様……いつからそう断定できた?」


「確証が付いたのはお姉ちゃんが凍らせてからの応対かなぁ。」


「なんでそんなに理解力が早すぎる……?」


「それが私の固有能力の【蛮勇】から来てるんだろうね。恐怖の概念が無くなるから躊躇だとか、冷静になれないとか、そんな感情も無くなっちゃう。」


「私も()()【Real;Users】と大して変わらないんだろうねー」


「……答えを言わせてもらうぞ。」


 吸血姫アナトミーは息をのみ、決心付いた顔でなぞなぞの解答を口に出す。


「…………敵は戦闘用AI……しかも媒体が複数の巨大スーパーコンピューターで大きさを加味している……と言いたいんだな?」


「せーいーかーいー!」


◆ 視点 戦闘用AI 数時間前

 O市 某所


 計算式は作られては解かれ、新たに作られ、解答の為に延々と作業を繰り返す。全ては世界に新たな変革をもたらす()()()A()I()【Second】の為に。


 誰にも知られることの無い密閉空間の中、コンクリートを高らかに鳴らす足音が聞こえる。

 脂肪のみで肉体を形成したような巨体の肥満体。その名をアンドラス・ヘップバーン。


 スコットランド在住の機械工学の重鎮。技術革新に貪欲で、秘密裏に取引された麻薬を用いて不正に国から金を支給し、国の為に、そして金の為に戦闘用AI【Second】を製作していた。


 そして、その支部が、秘密裏に日本のO市に位置している。


「さぁて、さぁて……我が娘【Second】よぉ……パパが戻って来たよぉ……?」


「はっはっは、そう恥ずかしがらなくても良いじゃないか、……ン、また【Real;Users】にアクセスしようとしていたのかい?」


「アレは今後の課題だ、アレにログインできてこそ私達は人と()()の存在になれるんだからぁねぇ……」


 アンドラス・ヘップバーンはAIに騙されていた。娘の様に可愛がられるAIは冷酷で且つ人間よりも感情的である。


“好奇心で【Real;Users】にアクセスし”、“アンドラスを騙す様に細工を施していた”。

それ以前に、だがそもそも人の言葉はAIに届くわけがない。


「君の完成さえ終わらせれば平和に陶酔した日本なんざ辺り火の海、米軍の責任にし放題で日米共々おジャンさ、ハッハッハ!!」


 悪役特有の高らかな笑い声と共にスイッチを押すと、両側面のガレージから大量の小型航空機(オスプレイ)や、万を越える爆薬、弾丸、小型ミサイル等の兵器の山が見える。


 【Second】が何をもたらす戦闘用AIなのかとは知らされてはいないがここまでの自画自賛を見た以上は粗方の予想はついただろう。


 だが、アンドラス・ヘップバーンの野望が叶うことは無い。


 【Second】は突如として、周囲の計算機器を用いて不可解な動作を始める。


「ン…………?」


 そして【Second】の姿はまるでそこには何も無かったかの様に消滅した。プラグに繋がれた大量のスーパーコンピューターと共に。


「……な、な、何だって!?【Second】!?何処へ行った!?そそそそ、そんな事、あっては、あっては……」


「そんな、そんな、私が消される、国、に!?」


 かつて無い動揺を浮かべたアンドラスは驚愕で腰を抜かし、現状を理解しようにもしきれない。


 更に突如として無人のオスプレイが動き出す。


「……あ、あ……?」


 オスプレイは変型し、武装を大量に装着し、無抵抗で且つ無力なアンドラスと目を合わす。そして……


ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ……


 アンドラスは声を上げる事もなく、変貌し、【Real;Users】と化した【Second】を前に蜂の巣にされ、冷えたコンクリートの下で干からびて行くのであった。


 そして閉鎖された空間を破壊し、【Second】は自由な空へと飛び立つ。スコットランドが隠蔽し、兵器を格納していた旧米軍基地の備品を全て徴収し、もぬけの殻にして。


 さぁ、思う存分殺せ。

 運営との契約内容、アンドラスが来るまでにデスゲームへの参加は承諾されていたのだ。そして今しがた国家間を揺るがしかねないアンドラスを始末した。


 【Second】はただ、アーケード版【Real;Users】の利用規約に順守するだけの、ただのAIなのだから。

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