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Real;Users  作者: 熊蜂
一日目
13/44

Metamorphosis 【寸白姉妹】

◇ 視点【寸白兄妹】


 このデスゲーム(仮称)には穴がありすぎると私は推測する。


 本人に戦う気が無ければ……意味を為さない。具体的に戦わなかったから、という理由から何も起こるという訳ではない。


 確かに未知なる15……いや、妹も外すと14か。


 それも含めたとして、一番危険に及ぶのは紛れもなく無知なる一般市民だ。


 ……悼ましい限りだが、私は危険に首を突っ込むつもりはない。私と妹さえ無事であれば最低限は充分だ。


 ……仕方あるまい、このO市から遠く離れた地に事が終わるまで静かに暮らす……そう決めよう。“好奇心は猫を殺すか”、なんて言葉もある。


「……近い内にこの近隣から離れる。」


 妹はやっぱりという反応をした後に顔を暗くする。


「……死人ってやっぱり出るの?」


「……間違いなく出るだろうな。一般人を巻き込めば更に、だ。」


「でもさ、どっか静かなところ行くためのお金って足りる……?」


「………………」


 ……急ピッチでどこか遠くへ行き、停泊するほどの金はない。加えて言えば近隣以外の人脈もない。このマンションの賃貸料と、大学の入学費の所為で事故で貰った保険金はほぼ消え失せた。


『何事も無かったかのように、振る舞うしかない』ね」


 ……最終的な妥協案はこうなる。起きるかすら解らない殺し合いだが、先程の不可解な出来事や、端末等が配られている以上……本当に有り得るかもしれない。

 仮に私たちの命に関わりなんてすれば堪ったものではない。


「あのさ、お兄ちゃん。変身……的な奴?一回試してみたいんだけど……一緒にやらない?」


 私の持つ変身用の端末のカラーは灰、妹は白。

 恐らく参加者一人一人端末の色が違うのではないだろうか、と推測する。


 だが元より手にした時点で、変身はしたくなかった。


「嫌だ」


「えーなんでさ?」


「……お前はお前のアバターに変身してもまぁそれは良いだろう。だ、が、な。」


「……私の場合女性アバターだぞ。」


「それがどうしたの?」


「……一から十まで言えと?」


「可愛いからいいじゃん!」


「嫌だ」


「そんなこと言わずにー」


「嫌だ」


「あっ!あれ何!?」


 妹が窓の方に指を差すとそこには……何もないが……

 気を逸らした瞬間、半ば強引に私の端末を奪う。


「変身ボタンこれかな?ポチっと!」


「やめろ!怒るぞホンっ……!」


 目の前には今までに見たことの無い、純粋無垢に目を輝かせる妹の姿があった。


 そして、下半身にはあって然るべき()()の感触が無くなり、背中辺りの肌にはサラサラしたものが、胸部にも少しの膨らみを感じた。あと……スースーする……


「かっ……可愛いぃいい!」


 ……のわっ、なんだこの感触……!?

 急に妹は私に抱きつく。……何故抱きついたか、なんて解りたくない。


「…………やめっ……」


 なんて声色を出している……私は、そんな声を出さない筈だろう。

 あぁ、クソッ!これ以上にない屈辱だ!心臓が……止まりそうだ……妹にこんなに抱きつかれて満更でもないこのもやもやした……あぁ……クソ……


「……離れろ!」


 私は我に帰ると反射的に妹を私の体から引き離した。

 覚悟はできた。鏡を見たい。吸血鬼は鏡に映らないと言うが、そこまで不便な能力は得ていないだろう……


「……鏡は……あるか?」


「洗面台の方ならあるけどー?」


 洗面台に向かうと、親の顔より見たことのある妖しげで艶やかな女性が視界に映っていた。私が長い灰髪に手をやると、シンクロするように彼女は同じ動作をした。様々なポーズを何度決めても、その女性は私と同じポーズのハンドマイムを繰り返した。


……全身が女になってしまった。

嫌だ、堪らなく嫌だ。凄い……下がモジモジするし……


「お兄ちゃ……いや、お姉ちゃんって呼んだ方がいいの?」


 ようやく落ち着いた私の方に来た妹は、ニヤけ面で性転換してしまった私を煽りに来る。

 顔でもう判断できるが、これでもかという程弄り倒してくるのは目に見えていた。


 ……後で考えてくれ。

「あぁ、五月蝿いな!もう!」

               

「本音と建前逆になってるよ!」


「それでさ決めておきたい事があるんだけど、お兄ぃ……お姉ぇ……オネェちゃん?」


「それだけはやめろ。なんだ?」


「お姉ちゃんの姿の時はさー、女の子言葉で話してよ!」


「……何故そのような愚かな考えに至ったのか教えてもらおうか。怒らないから」


「いや、確実に怒ってるよね?……でもさ、これからこの姿に変身したときに今の言葉で話しちゃうとさ……割とお兄ちゃん喋り方独特だし……本体と変身体とバレちゃうと思うんだよね。」


「あと私としても女の子の姿でその喋り方はちょっと……その……気持ち悪い、から」


「なッ……」

 気持ち……悪い……?


 心臓に風穴を開けられるようなショックを受けた。


 妹に対して絶対的信頼と、心の安らぎを置いていた自分がよもや気持ち悪いと言われる日が来ようとは……やめろ、やめてくれ、これ以上は病みそうになるから……


「……やめてくれ、解った、解った。善処す……善処、します……わ?」


「なんでお嬢様言葉なのさお姉ちゃん」


 本当に屈辱的だが、私の物語はそんなこんなで始まって行く。

 ……理奈には……敵わないな、本当に。

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