Now Loading【事後物件】
◆視点 明王宅
富凍 明王は富凍 滉の前では平気な顔をしていたが、実際は不安で締め付けられそうだった。真実を知らなくとも、絶対に良いことがあって来たわけではない、そう思っていた。結果なんて知りたくはなかった。
それでも、テレビのリモコンをニュースチャンネルの番号へと入力した。
「速報です、今晩21時半頃、O県O市住宅で大規模な火災がありました。」
ニュースキャスターが深刻な表情で真相を伝え、モニターが現場へと切り替わる。
「えーご覧ください、この一軒家の火災は今、消し止められました。ですが、周りの住宅密集地にも火が燃え移り、今も消防隊が隈無く注意を払っている現状です。」
現地キャスターが現状況の詳細を伝達し、事態の深刻さを報道している。
「今、調査されました警察の情報によると、一軒家には富凍 芽依さん(42)と富凍 滉さん(18)が住んでおられて、芽依さんは頭部が欠如した白骨死体、滉さんは現在行方不明だそうです。原因はコンロの引火により、火が燃え移り火事になったと、状況証拠で明らかになりました。」
解っていた。解っていたが、最後まで大した事ではなかったと信じたかった。
心に開けられた風穴に凍える山背が突き通る。
これからは私一つの手で滉を育てなければいけない。これからは私が養うための金を更に稼がなければいけない。周囲の目から滉を隠し通さなければければいけない。
自分は……この義務に耐えきれるのだろうか?
◇視点 ■■■■株式会社
アンジェラ・叶は秘書と共に自室へ戻る。
「じゃあ、そろそろ皆さんのご活躍を見てみますか」
アンジェラはこの一日での変化を心待ちにしていた。運営として、彼の本能としてこのデスゲームに於いての参加者の行動全てに期待しているからだ。
そりゃあデスゲーム運営ほど人の命を大事に取り扱う者は居ないからね。仮に命を蔑ろにするようなデスゲーム主催者がいるのなら……それは神聖なデスゲームを穢す行いだ。
「先ずは……ふむ、【虎龍王】と【ブランギャズ】が戦い始めて……ふむふむふむ、ふふふ!なるほどねぇ!」
何処かに取り付けられたカメラを利用して彼等の戦いの映像、その後炎上した富凍家から、忍者のように屋根で移動する【虎龍王】、トラックの上で難を逃れたブランギャズの姿を確認する。
「次に……おお!もう一人殺してる子いるじゃんか!」
別のモニターに映っているのは一人の女性【Real;Users】が何やら刃物を用いて別の【Real;Users】の首を勢いよく切り裂く姿が映っていた。
これこそアンジェラの求める【Real;Users】。生死の概念を真に理解し、判断力、思考力、戦闘技能をこのデスゲームで養い、殺人も、全てに於いて躊躇をしない完璧な【Real;Users】。
「今日はこの子を観察してみようか……!」
◆ 某所
恐らくここは公園。遊具などは見えないがベンチやゴミ箱などは見られる。そこには三人の人……いや、【Real;Users】が音もたてずにいた。
一人は妖しげな服装……さながらどこぞの魔王のように、形容し難い形状のバトルドレスを着た灰髪の女性。
次に地面に突っ伏して気絶しているのは、獣らしき耳の見える白髪の少女。見た目的にはファンタジーの勇者のような姿だ。
最後に首から焦茶色の血を溢し、動かなくなった全身機械。
つい先程まで漏れ出たオイルと、火花が接触しかけて、今にも炎上しそうだったが、急激に全身が冷えて、火花は発しなくなった。
妖しげな服装の女性【Real;Users】は溜め息を吐きながら、ゆっくりと殺し終えた【Real;Users】の素肌に手をかざす。
真っ青な冷たさ。生の無い冷たさが指先から感じ取られる。
数秒前に端末からは振動が鳴ったのは恐らく【Real;Users】を一人殺したから……なのだろう。
今私の感情は人を殺した恐怖心などを書き消す“妹を傷付けた事”への怒りで囚われていた。
殺しただけでは許しはしない。四肢を砕き、全て解剖しつくし、部屋のインテリアとして永遠にその汚ならしい肉片を飾ってやる。
長い灰髪の【Real;Users】はこの死体を、何処からか取り出した黒い納体袋の中に詰め込む。そして、見た目に反した怪力で持ち上げて、ベンチの下に、雑に隠す。
そして、気絶した獣耳白髪の【Real;Users】を姫抱きし、闇夜へ消えていった。
彼女はこのデスゲームで、多大な変化を与えるであろう存在。アバター名を【吸血姫アナトミー】。
今宵はもう一人の一人称視点から彼女……いや、彼の話も始めるとしようか。
【吸血姫アナトミー】の話を終えた後、【第一章】の【一夜目】は終了します。




