一章
「うお~、まるで王宮の様だな……」
これが一目見た時の率直な感想だ
外観の立派さや建物の綺麗な壁、そして何より玄関口を含め警備やメイド、執事などの使用人も気品が際立っており、明らかに自分が場違いだという感覚を覚える
「そこのもの!止まれ!何者だ」
俺は門前で呼び止められた
「ザックといいます。冒険者ギルドで指揮官募集の仕事を凱旋していただいたので、面接に来たのですが」
「おお、ザック殿か。話は主より伺っておる。案内させていただこう」
「ありがとうございます」
道すがら俺は疑問に思ったことを聞いてみることにした
「すみません、失礼かもしれませんが、この家はだれのものなんですか?」
「うむ、ザック殿ならばよかろう。この家はな表向きは誰か貴族の持ち家のように見せかけたものなのだがな、実は私たちが住む王国の帝国への抵抗策を練る軍事機関なのだ」
背筋に嫌な汗をかいた。理由は簡単だ。こんな情報を一般人に教えていいわけがないからだ。知っていいとすれば王族や貴族、そして関係者のみだ......
「あ、あの」
「はっはっは、なぁに気後れすることはないぞ。なんせ君はもう既に、私たちの一員なのだからな」
屈託のない笑顔、白い歯がまぶしかった
こうして俺は、すでに逃げられなくなっていたのである