一章
「あぁ、最悪だ……」
あれは昨日のことだった―
俺、ザックは幼いころから冒険者を夢見て鍛錬を続けてきた。来る日も来る日も、自分でもなぜここまであこがれていたのか、それすらも忘れてしまうほどの年月を……
12の時、冒険者ギルドに加入しそこから7年間たった1つのスキルを頼りに頑張ってきた
そう、指揮官スキルだ
当然冒険者という人種は荒いものが多く、指揮の重要性がわかるものや素直に指示を聞こうとする理性が備わっているものも少ない
俺は運が悪いことに、そういった人とかかわる機会がなかった
これまでの冒険者人生を振り返ると、とてもじゃないが誇れるものはないだろう
冒険者としての俺は新人を見つけては、ためた知識を披露しながら荷物持ちなどの雑用をこなしていた。最終的には毎回捨てられるのだが……
そして昨日、またPTから追い出されてしまった
彼らも最初はアニキなどと言って慕ってくれていたものの、最終的に俺のことは利用価値がないと判断したのだろう
まったく……、なんて世知辛い世の中なんだ
俺も19になった。いい加減定職につかないとなくなった親に背を向けられない
そう思い、俺は仕事を探すことにした
「ミレイさん、何か俺でも受けられるいい仕事はないか?」
俺は齢40ほどのギルド受付嬢であるミレイさんに尋ねる
「おお、ザックじゃないか、さてはあんたまた捨てられたね」
小笑いしながらからかってくるがまったくいやな気がしない。俺がガキの頃からお世話になっていることもあるだろうが、こんな使えない俺にも仕事を回してくれる、今となっては得難い理解者の一人なのだ
「よしてくれよミレイさん。見たらわかるだろう」
「ははっ、ごめんねザック。ちょいとお待ち、今探してきてやるから」
待機室で5分もするとミレイさんからお呼びがかかった。いつもなら30分は待たされるので不審に思ったが、その時は対して気にならなかった
それどころか少し高揚していたのかもしれない
今となっては少しは疑うべきだったと思うが、ミレイさんから渡された紙には、「指揮官大募集中!初心者歓迎!みんなでこの国を守りませんか?」と書いてあった