色々
「どうだった?」と送る。
「決まったよ」と返ってきた。
(…ばーか)心のなかでそう呟く。連絡は送らない。
「ほんとバカ」
何年の付き合いだと思ってるのだろう。そんな嘘、すぐわかる。
あの人は昔から見栄っ張りだった。小さな頃、鉄門に手を挟んでしまったことがあった。挟んだ指の爪が紫色に変わっていて、絶対痛かったはずなのに、駆け寄った私に大丈夫って笑った。
真っ赤なマフラーをしたあの人を見つけた。暗い色の多い雑踏の中で、赤いマフラーは少し目立つ。
何となく、あの人を観察をする。疲れた顔をしてる。うっすら隈もあるかな。やっぱりダメだったのだろう。ちょっと気持ちが引っ張られる。
「今日は焼肉いくよ!」
ブルーになりかけた気持ちを振り払うように、大きな声をかけ腕を引く。たぶん私に直前まで気がつかなかったのだろう。吃驚して、目を白黒させながらも引かれるまま歩き出す。
ふと「内定祝い?」ときかれる。
もちろん「100回落ちましておめでとう記念!」と返す。
何でわかったのだろう、というか数えてたの?と言いたいみたい。顔に書いてある。
私は夢を持ってない。だから分からない。心は応援したいと思ってる。夢を追うあの人をずっと見てきたから。
応援の言葉、励ましの言葉をかけたくなる。でも、もう充分頑張ってる。励んでる。
私があげるのは安らか日常と休息。そう決めてる。
「罰として焼肉おごり」と言ってみた。苦笑と共に「仕方ないな」と言葉が返ってきた。
食べ過ぎて値段がとんでも無いことになった。真っ青な顔で財布を確認する姿を見て、ちょっとだけ反省した。




