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3 新しい朝

 翌日の朝、起きて窓を開けると、暖かい春風が入ってきた。

 今までは朝を迎えるのが苦痛でしょうがなかった。だけど今日はいつもと違い、とても気持ちのいい朝だった。

 まるで生まれ変わったみたいだ。


 俺はその日から、会社で働きつつ、帰宅後は執筆をする為にパソコンに向き合った。

 とにかく今は小説を書きたいという強い衝動が俺を突き動かしていた。

 仕事だって全力で取り組んだ。何事に対しても中途半端は嫌だった。

 もう一度、俺だけの世界を書いて見せたかった


「最近、頑張っているじゃないか」

 仲のいい上司はそう言ってくれた。

 小説を書いている事を伝えると

「それじゃあ完成したら見せてくれよ」

 そう言って上司は笑った。


 あのとき一人の作家は、小説は誰かを救うと言ったけれど、音楽だってきっとそうだ。

 あの歌を聞いてから歯車が回り出すように俺の人生は変わった。

 ――ありがとう

 俺は心の中で、顔も歳も分からない一人の女の子に礼を言った。


 ある日、小説の新作をアートメイカーに投稿しようとすると、SAKIの名前を見つけた。どうやら彼女も新しい曲を発表したようだ。

 あれ以来すっかりファンになった俺はすぐにクリックを押した。

 パソコンから流れてくる彼女の歌は相変わらず素晴らしい。

 優しい歌い方なのに、どこか哀愁を感じる。


 歌を聴き終わる頃には、また少し涙腺が緩んでいた。どうも彼女の歌を聴くといつも泣いてしまう。

 居ても立ってもいられなくなった俺はメッセージ欄に感想を書き込み始めた。

 アートメイカーは投稿者にメッセージを送る事が出来る。投稿者と視聴者のお互いの距離が近いこともサイトの人気の一つだった。


 前曲、君の言葉でファンになりました。今回の曲もすごく良かったです。貴方の歌のおかげで、僕は自分を取り戻せたような気がします。

 素敵な曲をありがとうございました。 MASAKI


 そう打ち込み、送信ボタンをクリックした。

 別に返事欲しい訳じゃなかった。

 おれの様に感想を送る奴は、星の数ほどいるのだろうから。

 ただ、感謝と称賛を伝えたかっただけだ。


 後日、いつもの様にパソコンを起動させると、一通のメールが届いていた。

 メールを確認すると目を疑った。

 メールの差出人はSAKIと書かれていたのだった。

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