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私が異世界に行ったなら

 ついこの間、夢を見たんです。


 舞台は異世界で、中世っぽいファンタジーの世界観。

 私は剣士でした。歳の頃は四十手前、黒髪の長髪は後ろで一つ括り、妻子ナシ。目立ったイケメンではなく、あっさりとした容貌。


 なんかよく分かりませんが、剣士の団体に所属してましてね。騎士団かなんかでしょうか。傭兵の集まりかも。その中でも地味な感じでした。年齢は下から二番目あたりで腕はそこそこ。


 魔王との戦いはひと段落した後の話だったんですよ。

 和平条約かなんかそんなものを結んだみたいなんですね。

 しかし、魔王の息子に代替わりしてしまったら、新魔王が「やっぱり前の戦いで俺の大事な部下を殺した落とし前をつけさせなければ気がすまねえ、和平条約は守って人間には手を出さないが、お前らだけは見逃すわけにはいかねえ」てことになりまして。

 私たちが普段から根城にしている山奥の城に「今から2日後、お前らやっつけに行くから覚悟しとけ」と、ご丁寧にわざわざ連絡が入ったんですよ。




 皆殺しにされるのは確定なんですね。

 絶対に敵うわけないし、100%死にます。




 今からでも近隣の国に応援を頼もうか、とも考えて伝書鳩みたいなものを飛ばすんですけれども、まあ、応援が来ても間に合うわけは無いんです。助けに来た時には、私たちの死体の山、みたいな。


 剣士団の空気は、最後に華々しく戦って散ったろかい、みたいな空気になりまして。

 年配の剣士は剣を研ぎだすわ、一番年少の剣士は一番強い剣士に稽古をつけてもらうわ、一番の頭脳派は作戦を考え出すわ、剣士団は最後のクライマックスに向けて一丸となっているんですけど。


 私はひたすら一人で逃亡することを考えてました。


 新魔王たちに敵うわけないし。みんなで逃げようぜ、と言ってもそうする人は誰もいないことは、長年の付き合いでもうわかってます。


 「俺は勘弁、逃げます」と自分が言ったら皆さん許してくれるような感じではなかったんですね。



 冷静な顔で、作戦に自分から意見を出すなど、皆と混じって決戦に向けて準備をするふりをしながら、ひたすら頭の中では逃亡について考えていました。


 一人、抜け出して山の中から近くの人里までどれぐらいかかるか、食料、水はそれまでどれぐらい必要か、など。


 あとは抜け出すチャンスなんですけど。

 今か今かと機会をうかがって、よし今がチャンス! という時になって、いつも邪魔が入ります。

 何回か機会を逃し、やきもきしてるところで目が覚めたんですが。



 夢の続きでは逃亡に成功したことを祈ります。




 起きてしみじみと感慨深くなりました。


 ああ、私、異世界だったらそんなキャラなんだなあ、と。


 赤穂浪士だったら、一人参加しなかった浪士、といったところでしょうか。鬼滅隊なんか絶対無理。


 私の中でこのキャラは現実的で個人主義で。結構、気に入りました。


 やはり、これは自分は組織に属す会社員ではなく、個人事業主に向いてる、てことを示すのだろうか? と考えたり。


 主人(船乗り=組織の歯車会社員代表)に聞いてみたくなりました。主人なら私の状況下になったら一体どういう行動を示すのか。夢の話をして聞いてみました。




「いや、逃げるだろ」



 ですよね。




 うーん、夢の中でも私以外の剣士は戦いに向けて頑張っているようでしたけど、それは見かけだけで年配の騎士も若い騎士も心の中では私と同じように逃亡することを考えていたのかもなあ。




 あなたなら、どうしますか?











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― 新着の感想 ―
[良い点] 青瓢箪さんの生存確認。 [気になる点] そんなこと考えてたんすか(笑)。 [一言]  義理と人情秤に掛けりゃ、義理が重たい男の世界ってなもんで。  女房子供が居りゃ、おいそれと逃げられませ…
[一言] 『逃げます』  命は一個、人間は生き返れない。  ささやかだれども、小さな楽しみにすがって生きる人生捨て難し。  けれども、剣士団に惚れた女or惚れた男、なんぞが居れば、はて……?  で…
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