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Copy soul〜複製された魂〜

作者: 桂 ヒナギク

「間違い無い、あの娘だわ」

 短髪の少女が双眼鏡を覗きながら言った。

 その少女が見ているのは、表札に<斉藤>と掘られた家の二階で少年の隣で眠っている少女だった。

 双眼鏡を退かして腕時計を確認。時刻は午前4:30。日の出が始まり、明るく成り掛けている。

 少女は双眼鏡を懐に仕舞い、木で出来たステッキを取り出した。

「私達には貴女が必要なの」

 言って少女は、ステッキを少女に向けた。

 細い光りの線が飛び出し、ガラスを透過して少女に当たる。

 少女の体から魂が抜け、その魂がガラスを透過して少女の下に引き寄せられて行く。

 少女は瓶を取り出して魂をその中に入れ、蓋をして閉じ込める。

「流石にこのままにしとくのは問題よね」

 少女はステッキを少年に向け、極細の光線を放った。

 光線が当たり、少年は光りに包まれ、その光りが少年から剥離して球体に変化し、少女の体へと入って行った。



 夏のある日の事。

 俺は今、鏡の前に立っている。鏡には俺の交際中及び同棲中の彼女─白石しらいし 早百合さゆり─がパジャマ姿で写っている。

 そいつはつり目で茶色掛かった黒の長い髪が背中まであり、頭の天辺にアホ毛が生えている。

「何でお前が鏡の中に?」

 俺がそう言うと、鏡の中の彼女が俺の声に合わせて……否、俺の声じゃない。女性の、早百合の甲高い声だ。

 この状況から察するに、どうやら俺は、早百合に成ってしまったらしい。その証拠に、俺が手を動かすと鏡の中の早百合も同じ動きをする。やっぱり。

 どうしてこうなったのだろうか、皆目見当も付かない。

「鏡の前で何踊ってんだよ?」

 そう言って現れたのは、とてもイケメンで女なら誰でも虜になるであろうと思われる人物─斉藤さいとう 裕助ゆうすけ─彼は俺だ。

 俺は驚いてビクッと背筋を伸ばし、首を後ろに向けた。

「お、お早う!」

 元気良く笑顔で挨拶してみる。

 彼は戸惑いながらも「お、おう、お早う」と挨拶を返す。

 コイツ突っ込まんのか? 俺が早百合なら、早百合は俺に成っている筈。だが──

「それにしても今日はヤケに早起きだな。何かあったのか?」

「何かあったのか? じゃねえよ! とっとと気付けこの馬鹿たれが!」

 言って俺は目の前にいる俺の頭に軽く拳骨をくれてやった。

「痛っ、何すんだよ早百合?」

 その瞬間、俺のハードディスクはフリーズした。

 今コイツ、確かに俺の事を早百合と呼んだ。どう言う事だ、疑問符。

 えっと、先ずは整理しよう。俺は今、何処からどう見ても早百合だ。と言う事は、目の前にいる俺は俺では無く早百合な訳だ。だからつまり、二人の体が入れ替わったと見るのが筋だろう。

「早百合はあんただろ?」

 俺の問いに彼は目を点にした。

「はあ? 何言ってんだオメエ、頭大丈夫か?」

 刹那、俺の見解は変わった。これは夢だ、と。

 俺は屹度きっと、夢を見ているんだろう。取り敢えず、今は早百合を演じておくとしよう。

「ゴメンゴメン、冗談よ」

 言って俺はクスッと笑った。

「なっ、からかったのか!?」

「だからゴメ──」

「許すまじ!」

 俺が言い終わる前に、裕助がそう言って攻撃を仕掛けて来た。

 動きが単純過ぎる。

 俺は素早く攻撃をかわし、アッパーを繰り出す。

 裕助は宙に舞い、床に仰向けに成って落ちた。

「あれ、腕上げた?」と裕助。

「アンタが鈍過ぎんのよ。と言う事で、朝食の準備宜しく」

「一寸待て! 今日は早百合の番だろう!?」

「何言ってんのよ? アンタ今、私に負けたんだから当然でしょ。解ったらさっさと起きて顔洗って準備する!」

「はいはい」

 言って裕助は起き上がり、洗顔を済ませてキッチンへと向かった。



            *



 香ばしい匂いが漂うキッチン。そこでは、裕助が早百合の大好物であるハンバーグを焼いていた。

 一方俺はと言うと、食卓に着いて出来上がるのを未だか未だかと待っていた。

「出来たぞー」

 裕助がそう言って、二人分の飯を持って来てテーブルの上に置いた。メニューは炊き立ての白米、ハンバーグ、レタス、味噌汁だ。

「今日は早百合のハンバーグ(大好物)だ」

 否、俺の大好物は唐揚げなんだけど・・・って、今は俺、早百合だった。

「いただきまーす」

 俺は早百合の箸を手にし、飯を口内に運んで咀嚼する。

 我乍われながらとても美味い。

御馳走様ごちそうさまでした」

 完食した俺は箸を置き、手を合わせてそう言った。

 ふと時計を見る俺。時刻は午前7:15、学校へ行く支度をしなくては。

 俺は立ち上がり、部屋へと移動した。

 部屋の右奥の角にはベッドが二つ、くっつけて置いてある。そしてその手前、つまり入って直ぐ右にクローゼットが一つ。そこには俺と早百合の学生服が入っている。

 俺はクローゼットを開け、着ていたパジャマを脱いだ。

 胸にはブラ、下半身にはスパッツを穿いている。昨日、早百合が着用した物だ。

 早百合がスパッツを穿いている理由は、ただ単に動き易いから、である。

 あ……俺、女子の服の着方を知らない。相部屋なのに早百合の着替えを見ていなかったからなあ。と言うか見せてくれなかった訳だが……。

 仕方が無い、こうなったら適当に着る!

 俺はクローゼットから女子の制服を一式、取り出して着用する。

 Yシャツを着、スカートを穿いて専用のベルトで固定する。

 多分これで良いだろう。

 俺はクローゼットを閉め、ふと後ろを向いた。その先には、裕助がいた。

 コイツ、早百合のを見たな。一寸からかってやるか。

「見たわね?」

 裕助は顔を真っ赤に染めて「見てない!」と否定した。

「良いのよ? 正直に言って。で、実際どうだったの? 私の裸」

「……次は脱衣100%で──」

 俺は裕助の股間に膝で制裁を加えた。

「うっ!」と呻いて股間を押さえる裕助。見ていて痛いのがよく解る。女が羨ましい……って、俺は女だった。

「あんたが悪いんだからねっ、そこで反省してなさい!」

 俺はそう言い放ち、早百合の鞄を手に取って部屋を出て行った。



            *



 家の外で裕助を待っていると、未だに痛そうな表情をしている彼がドアを開けて出て来た。

 施錠する裕助。

「未だ痛いの?」

 頷く裕助。少し強くやり過ぎたか。

「ゴメンね、行きましょう?」

 言うと、俺達は学校に向かった。



            *



 自宅から近い所にある古びた学校。今年で創業250周年を迎える伝統のある高校だ。

 そんな学校の校門を、たった今、俺達は通過した。

 その瞬間、俺達の下に大勢の男女が押し寄せて来て、女子の軍勢が裕助、男子の軍勢が俺を囲み、彼と離れ離れにさせられてしまった。

 俺は学校では全ての女子において一番人気があるらしく、ほぼ毎日、女子の軍勢にセクハラを受けている。そして早百合もまた、全ての男子において一番人気があり、俺と全く同じ扱いを受けているのである。

 取り敢えず今の状況を切り抜けて裕助と合流しよう。

 しかし周囲は敵に完全に包囲され、逃げ出す術が無い。となれば……。

 上を向いた。逃げるなら上しか無い。

 俺は足を曲げ、地面を思いっ切り蹴って上に跳び上がった。そして群がる男子共を踏み倒して包囲網から脱出した。裕助も同様に、上へ跳び上がって女子共を踏み倒して包囲網を脱出。合流した。

 だがしかしである。安心したのも束の間、男女の残党が俺達に近付いて来る。

「逃げるぞ!」

 言って裕助は、俺をお姫様抱っこして駆け出した。

 俺が俺に抱かれている・・・。

「二人とも待ってぇ〜」と連中が追い掛けてくる。

 校舎入り口に辿り着くと、常時開放のドアを潜って土足のまま廊下を駆け抜け、階段を駆け昇って屋上へ。

 振り返ると、我を忘れた傭兵共が間合いを詰めていた。最早逃げ場は無い。

「斉藤くん、観念するのね」と一人の女子が言った。

 裕助はニヤリと口元に笑みを浮かべ、転落兼自殺防止の為に設置されてある有刺鉄線付きフェンスを跳び越えた。

 傭兵共は驚いてポカーンと口を開けている。

「お前らと遊んでる暇は無えんだ、じゃあな!」

 裕助が言うと、俺達は引力の法則に従って真下へ落下し始めた。

 この高さから落っこちたら大怪我所では済まなくなる。と言うか確実に逝く──そう思っている方の為に説明しておくが、俺と早百合に限ってそれは99.9%有り得ない。仮に着地に失敗したとしても、体に痣を作るか足を捻挫する程度である。

 着地に成功した裕助は屋上を見上げる。傭兵共は未だに、呆気に取られた様な顔でたたずんでいる。



            *



 正午0:00。

 午前の授業が終わった。これから地獄のお昼休みが待っている。

「何処行こうってのかなぁ?」

 教室を出ようとした裕助が、女兵士Aに行く手をはばまれた。

 裕助は困った顔で「売店に行くだけだって」と言う。

フューィ!──女兵士Aが指笛を吹くと、1、2、3年の全学年から女傭兵共がやって来た。

「皆、取り押さえるわよ!」

「イエッサー!」

 女子が一斉に動き、裕助を取り押さえた。そして、裕助は女子共に何処かへ連行されて行った。

 俺は席を立ち、奴らを追おうとしたが、男兵士Aに行く手を阻まれた。

「テメエの相手なんかしてられっかよ!」

 言って俺はそいつを張っ倒し、傭兵共の後を追う。

 辿り着いた場所は、常時開放されている体育館だった。

 俺は女子の軍勢に捕まると、何時も此処に連れて来られていた。そして身ぐるみを剥がされ、あんな事やこんな事を好き勝手にやられるのである。

 それはもう、セクハラの域を超えている。強いて言うなら性的虐待だ。

 と・・・兎に角助けなくては!

 俺は女子共の渦の中へ飛び込み、脱衣率100%の彼を渦の中から助け出した。

「何よ白石さん、独り占め?」

 リーダー格っぽい女子がそう言うと、渦の中からもう一人出て来てこう言う。「斉藤くんを返しなさい!」

 俺は首を振った。勿論、横に。

「へえ〜、拒否するんだ?ならば貴方にはそれなりの罰ってのが必要よね」

フューィ!──リーダー格っぽいのが指笛を吹き、男子の軍勢を召喚した。

 拙い、逃げなければ!しかし今逃げ出したら確実に裕助が女子共に犯される。

 クソッ、逃げられ無え!けど逃げなければ俺が男子共に犯される。

 これが所謂いわゆる、二重の拘束。二重拘束ダブルバインドって奴だ。

 はっ、絶望した! どちか一方を選択するとどちらか一方が得られないと言う二重拘束ダブルバインドに絶望した!

「早百合、俺の事は良いからお前は逃げろ!」

 俺が絶望感に浸っていると、裕助がそう言った。

「で、でも逃げたら裕助が!」

「五月蝿いっ、早く逃げるんだ! Early go!」

 Early go・・・早く行け、か。

「嫌だ!」

 俺は断った。

「あんたがやられるくらいなら、あたしが身代わりになる……。だからあんたは早く逃げて!」

 言って俺は、傍らに捨てて在った服を裕助の上に投げた。

 裕助は素早く着用し、正面に回って俺を抱擁する。そして耳元でこうささやいた。

「愛してるよ、早百合」

 その言葉にトキめいた俺を尻目に、裕助は体育館から脱兎の如く駆け出した。

 同性且つ自分自身にあんな事言われてトキめく俺って一体・・・?



            *



 昼休みが終わり、男女の軍勢は去って行った。

 当の俺は、体育館の真ん中に全裸で横たわっていた。男共に脱がされ、犯された後である。

 早百合、お前の苦労が何と無く解った気がする。

──所で、俺は何時になったら戻れるのだろうか。




 To be continued...





 おまけNG、朝風呂タイム


 毎朝、起きると俺はお風呂に入る。だから今日も全裸に成ってお風呂に入ったんだ。そしたら目の前の壁に設置された縦長の大きな四角い鏡に、早百合の姿が映っていたんだ。

 見ると、俺の股間にアレが無い。つまり、俺は今、早百合に成っている訳だ。

 試しに体を動かしてみると、鏡の中の早百合も同じ動きをしてくれる。

ガチャ──ドアが開き、全裸の少年が入って来た。昨日まで俺はこの少年だった。

 その少年が、俺の全裸を見て興奮し、鼻血を噴き出してお風呂場を血の海に変えた。

 これ、蹴り飛ばした方が良いよな? 一応俺、今は女なんだし。

「キャーッ、裕助のエッチ!」

 言って俺は、裕助の股間に膝で制裁を加えた。

 衝撃で鼻血が止まり「うっ!」と呻き声を上げて股間を押さえる裕助。見てるこっちも痛くなりそうだ。



血の海と言う事もあり、苦手な人にはやっぱりキツイので変更しました。



 後書き


書く事がありません。取り敢えず、続きます! とだけ言っておきましょうか。




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― 新着の感想 ―
[一言] なんてカオスな世界!!まさしく作者の妄想の垂れ流しの結晶だぜ!! 好きな人にはたまらんでしょう。もっと話がカオスなら「おもしろさ」って項目に☆5つ入れるね! でも駄作には変わりないと思うので…
2007/11/19 14:13 退会済み
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