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60 黒ネコと女ハンター


 前を走る女について行くBJ。

 両手にハンドガンのガンブレイドを装備する女は黒いネコを伴い、立ちはだかるグールを一掃していく。


「左の通路からハウンドが2体駆けてくるぞ」


「了解!」

 女は右手のガンブレイドを連射して1体のハウンドを狩り、左手の銃で近くの倒れたグールを斬り伏せてからその銃口をもう1体のハウンドに向ける。

 ダダダダダ!と5発撃ち左手のガンブレイドが再装填に入る。

 ハウンドは健在で女に飛びかかろうと跳躍する。が、右手のガンブレイドの銃口を向けると宙に浮いたハウンドに火を噴く。


「ハウンド排除確認。グールの掃討完了、この地帯の安全を保障する」

 黒いネコがそう言うと女はガンブレイドをクルクルと回して鞘に収めた。


「あんた一体何者だよ…」

 BJがそう言うと女は、彼が頭に被ったガンズマンハットに触れて"似合ってる"と笑みを浮かべる。


「私はナナ。BJ――あなたにコレを言っても信じられないかもしれないけど、私たち知り合いなの、そうね…"友達"と言ってもいいわ」


「友達?俺とキミが?」

 BJが戸惑うのも無理はない。

 彼の記憶にはナナという存在はいないのだから。


「そんなことよりナナ。今は"抗血清"を手に入れるべきだろ?」


「そうね」

 BJは黒いネコが言う"抗血清"の言葉で、自分が今なにをするべきか思い出す。


「そうだ!抗血清だよ!もしかしてあんた…ナナがそれを探してるってハンターなのか?」


「確かに私は抗血清を探しているけど…ひょっとしてBJも?」

 BJが事情を話すとナナは快く同行を許した。



「な~ナナ…その、そいつはなんなんだ?」

 BJは黒いネコを指差す。

 指を指された黒ネコはナナの肩で仁王立ちすると自ら名乗った。


「我が名はシャドー!この世界で唯一真実を知る者だ!そしてナナの恋人である!いずれはナナとけk―――」

 ナナの指が黒ネコの口にスポッと収まると黒ネコは赤ん坊のように吸い付く。


「コレは…あれよ。私が捕まえた真祖のペットよ。でも安心して、今は私のペットだから」


「ペット……。そいつ見えない壁の向こうのハウンドを言い当ててたけど、周囲のことが分かるのか?」


「うん。10メートル範囲でならモンスターを探知できるらしいわ」

 BJは、「便利な奴だな~」とシャドーを突く。

 しかし、その黒ネコはナナの指に夢中の様子だ。


「で、ナナは工場がどこの辺りか知っているのか?」


「残念だけど現在も探索中なのよね。こっちは時間がないってのに――」

 ナナは手首に付けた時計を見る。

 BJは、「俺も似たような感じだぜ」と言って屋内から外を見た。

 すると、その視線の先に複数のリリアックたちが止まった電線を見つける。


「あの電線どうやら送電されてるみたいだな……もしかすると工場に繋がってるのかもな」


「…あの電線?どうして送電されてるって分かるの?」


「え?だってリリアックが止まっているだろ。あいつらが電気に集まる習性を持っているのを知らないのか?」

 ナナは、「へ~そうなんだ」と呟く。

 BJの言う通りリリアックのそれは常識といってもいい知識だ。

 しかし、ナナはそれを知らなかった。


「記憶がない方がこの世界の知識に詳しいのは当然だ。それに関しては諦めるべきだなナナ」

 肩に乗った黒ネコがそう言うとナナは頷く。


「BJあの電線を辿ってみましょう」


「お、おう!」



 BJの前を走るナナは黒のジャケットに黒のパンツに黒のブーツを見に付けている。

 そのパンツは右側はブーツインしているが、左側は生足を尻の付け根から露出している。

 ついついBJの視線はそこへと向かう。


「見て!BJ!」


「へ?見てるけど(?)」


 ナナが示す方にファクトリーの文字。

 BJも笑顔を浮かべるが、その中をうろつくグールに顔を顰める。

 グールは元々モグラだった者たちだ。


「もしかすると…モグラ狩りってのはただグールに成っちまった――ってことなのかもな」

 その独り言にナナは、「何か言った?」と言う。


「BJ油断しないで、この辺には眷属がいるかもしれないから」


「おうよ!」

 ガンブレイドのスコープ越しに額を狙うと次々にヒットさせるBJ。

 ナナは口笛を吹いて驚きを現した。

 キメ顔のBJにクスクス笑うと自らもガンブレイドを手にグールに突撃する。


「やぁぁああああああ!!」

 右で撃ち、撃ち尽くすと左で撃つ。左が撃ち終わる頃には右が再装填されて再び攻撃可能になる。

 接近でも右に左にガンブレイドを振ってグールを圧倒する。


「とんでもね~腕前だぜ!」

 飛び回るクローを次々撃ち落とすBJ。

 殆どのグールを掃討した2人は物々しい工場へと足を踏み入れた。



 ナナはBJに今どこで住んでいるのか、今後どうするのかなどを聞く。

 BJは素直に答えながらも、ナナが時々口にする聞き覚えのない名前に戸惑うのだった。


「マリシャもきっと驚くだろうな。BJがモテモテ何て聞いたら」


「…その~マリシャってのはナナの友達か?」


「そうよ。あなたの友達でもあるわ」


「な~…俺の記憶にはその名前に聞き覚えが無いんだが…。それは俺がおかしいのか?」


「……ヤト、BCO、マリシャ、始まりし街。どれか聞き覚えがない?」


「……………さっぱりだ」


「ならファミリアは?オツイチって名前は?」

 ナナは足を止めて必死にBJに語りかける。


「無意味なことだぞナナ。前にも言ったが、彼らは自身の記憶を遮断されている。キミだけは私の対抗策がうまくいって記憶を保っているが、彼らが記憶を思い出すことは今は無理だな」

 黒いネコのシャドーの言葉にナナは、「ごめんBJ…忘れて」と顔を背けた。

 BJは黒ネコの言葉が理解できず、ナナを慰める言葉も見つからなかった。


 そして、BJとナナと一匹の黒ネコは工場内へと足を踏み入れる。


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