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58 ゲイル一家


 28番街は線路と下水道の街で現在クロウ一家とゲイル一家の睨み合いの最中である。

 クロウ一家は、クロウを筆頭に強面揃いの集団。クロウとその右腕のエイリーンという黒い肌に茶色い瞳、ドレッドヘアーの美人な厳つい女が男たちをまとめている。

 ゲイル一家は、ゲイルを筆頭にこちらも強面揃いの集団で、ゲイルの左腕のワイアットは金の短髪に細めのつり目、会話の最後に"ケヒ!"という笑いを入れる危ない奴。


 クロウがBJとドミニクを連れて28番街に入るとエイリーンが早速顔を出す。

 BJを見たエイリーンは少し驚いたが、それよりもとクロウにとある状況変化を言う。


「何?ゲイルが交渉だって?」


「はい、さっき突然あっちから交渉を持ちかけてきました」


「……妙だ。向こうからしたら、例の用心棒を使えば簡単にこっちに攻め込めるだろうに」


「ですね。何かの罠である可能性もあります。十分注意した方がいいです」

 エイリーンの言葉にクロウは頷く。

 それからクロウは周囲で警戒態勢を維持する自分の部下の1人1人に話しかけ始めた。


 その目を盗むようにコソコソとエイリーンはBJに近づく。

 BJも近づいてきたエイリーンに言われるまま建物の影に隠れた。


「3年振り…今まで何してたの?」


「ちょっと子どもの世話で忙しくてな~16番街に住みついちまったのさ」

 BJの言葉にエイリーンは呆れた笑顔を浮かべる。

 そして、唐突にBJの頬にキスする。


「クロウに見つかると怒られちゃうから行くわ」


「ああ、そうした方がいい」

 エイリーンとBJの関係はクロウには秘密で、友達関係という訳ではなさそうだった。

 そういったBJの複雑な女性関係もシステム的に作り出されている。そう考えると斬新の言葉につきる。



 現在のクロウ一家とゲイル一家の境界線。その前に立ったクロウ、その隣にエイリーンも並ぶ。

 そして、ゲイルが部下を連れて反対側に並ぶ。


「相変わらず綺麗な顔してんなクロウよ~」

 垂れ目にブラウンの瞳、不気味な笑顔に真ん中分けの長髪はチンピラという風貌。


「そっちは相変わらずの見た目だね」

 クロウの返しにゲイルは唾を吐く。


「で、交渉ってのは?」


「ああ、それはなクロウ…ここらで互いに手を結ばないか?」


「手を?どうしてさ――」


「最近30番街の向こうがざわついていてな~もうそろそろこっちにも手が伸びるだろうから…その前にってなわけだ」


「…………」

 クロウにとっては悪くない話であった。確かに、30番街からは勢力図が複雑でそれぞれに強大な戦力を有している。

 例えクロウといえど目の前のゲイル一家程度で同等の戦力。

 30番街のどの勢力が相手でも簡単に負けるのは目に見える。

 なら、どうして30番街の勢力が29番街側へ攻めてこないのかというと、29番街と30番街との間にはジャンクの量が倍ほど違うからだ。

 なにせ、30番街の頭上は元研究所や元工場が乱立する工業地帯。マンホール一つに複数の組織が命をかけて奪い合う。


「で、どうだ…クロウ――悪い話しじゃねーだろ?」


「確かにね……でも、同盟ってことになるならこっちとしては色々と守ってもらうルールがある」


「おいおい、そんなの当たり前だろ~。でもな、こっちからも条件を一つ出すぜ」


「条件?……どんなんだい」

 クロウは嫌な予感がしてならないようで腕組みをする。

 ゲイルは薄ら笑顔で言う。


「俺とお前の"契り"が条件だ」


「……は?」

 予想外な言葉にクロウは眉を顰める。


「だから、俺とお前が夫婦になりゃクロウ一家はゲイル一家の一味になって全てが丸く治まるだろ」


 クロウは腕組みを解いて、ガンブレイドに手をかける。

 剣状態のそれをゲイルに向けるとトリガーを引いた。

 音を立てて大剣が銃の形に変わる。


「な、何のつもりだクロウ!!」


「……誰が?誰の嫁だって?この垂れ目ヤロー!こっちが下って訳じゃねーんだ!舎弟にってならしてやってもいいけどな……調子に乗りすぎたな――ゲイル」

 クロウの言葉でゲイルもガンブレイドを抜く。

 長剣が銃へと変わる頃には一触即発になる。


 ゲイルが、「ヤローぶっ殺してやる!」と言った瞬間銃声が鳴り響いた。


「な、なに!ガ、ガンブレイドが――」

 ゲイルやその一味のガンブレイドが次々と弾き飛ばされた。

 クロウは笑みを浮かべるとゲイルに銃を向ける。


「悪いがゲイル…こっちには凄腕のハンターが"帰ってきた"んだ。なんなら、そっちの用心棒とも戦ってあげるけど?」

 首を左右に振るゲイル。


 クロウの後方数百mの距離で待機していたBJは、大剣を変形させた連射性能の高い遠距離型のガンブレイドでゲイル一家全員の武器を撃ち抜いたのである。

 そのガンブレイドはBJ本来のメイン武器。

 BJがどうしてこうも銃の扱いに慣れているのかは謎だが、その腕は"凄腕"と呼ばれるだけのことはある。


 その後ゲイル側の用心棒が出てくることはなかった。

 なぜなら、その用心棒はすでに30番街へと向い別の仕事についたからだ。

 元々、ゲイル自身その用心棒を雇っている間にクロウ一家を追い詰めるつもりだったが、クロウがそれなりに粘ったために雇った期間内でそこまでいけなかったのだ。

 結果的に"今も用心棒がいるかの如く振る舞い"ブラフを用いた交渉に出たのだ。

 が、彼はBJの存在を知らなかった。いや、知っていたが"帰ってきている"とは知らなかったのだ。


「どうだった?放っておいた相棒の使い心地は――」


「ああ、昔のままだ。手入れもよくされていたしな」


「手入れにかんしてはあの子に礼を言っときな」

 クロウはエイリーンをアゴで指してそう言う。


「エイリーンが……ったく色々と迷惑をかけちまってんな」

 頭を掻くBJは、大剣のガンブレイドと一緒に受け取ったガンズマンハットを手前に下げる。


 クロウはゲイル一家を傘下に入れることを決めたが、ゲイルに関しては1人25番街の"検問所掃除係り"を命令した。

 勿論不満が出ないわけがなく。しかし、ワイアットとの交渉で彼にゲイルに代わって29番街をクロウ一家名義で治めるように言うとあっさりと受け入れられた。

 どうやらワイアットの方がゲイルより信頼が熱いようだった。人は見かけによらないなとクロウは思いながら29番街の状況を見に足を運んだ。


 BJはクロウの後を追う前にエイリーンに礼を言っておこうと寄り道するのだが…。


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