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54 囚われ続ける者


 アトリアン歴2308年6月。


 メトロと呼ばれる地下の街を拠点に生活をする人々。

 モグラと呼ばれるNPCとヴァンパイアハンターと呼ばれるプレイヤーが、元地下鉄の路線の一部に電線を引いて電気を流し、水路を引いて水を流した。

 元は高度な文明都市だったサイデルだが、今では廃れた都市になってしまった。

 その原因の一つが人の作り出した人工生命体である真祖の出現。

 人が作り出した真祖は人の領域を外れた肉体を得た。


 作り出された8体の真祖は、一つの都市を廃墟と化して人類の半数を土塊へと成した。

 サイデルはその周辺を1kmの高さがある壁で覆い残り半数の人類を守るために隔離する。

 その時に取り残された人現がモグラとヴァンパイアハンターの祖先に当たる。

 例え真祖といえど、外壁を破壊することはできず、現在も"壁をどうするか"が真祖唯一の敵であると言える。


 基本的に生きるために真祖が必要とするのは空気だけとされ、人の血を求めるのは吸血衝動からだ。

 真祖が血を求める理由は定かではないが、当時の研究者によると"人になりたい気持ちが残っているから"だそうだ。


 彼らはその"設定"を信じて疑わない。



「BJ~ベロニカ~ミチルが帰ってこないよ」

 青い瞳の少女が電球の薄明かりの中を慌てて走ってくる。


「何!?ミシェル!ミチルの奴どこへ行ったんだ?!」

 BJは少女をミシェルと呼ぶとその肩を掴む。


「確か…13番街だったと思うけど」


「13番街だ~?だったらGの領域に入ったのかもしれねーな」


「どうしたのBJ、ミシェル?ミチルは?」

 奥の部屋から現れたミシェルはエプロンをその身に付けている。


「どうやらGの領域に入ったらしい」


「第7真祖のテリトリーに?どうして?」


「トーマのためだよ。薬を買うお金が必要だからってミチルはジャンクを集めに――」

 ジャンクとは文字通り廃品のことだ。

 廃品といえど、モグラたちに売ればそれなりの値が付く。


「ミチル1人でなんて危険だわ」

 ベロニカがそう言うとBJはすぐに扉を飛び出した。


「ちょっとBJ!」

 後を追うつもりのベロニカは、水色のエプロンを傾いた机に放り投げた。


「ミシェル、戸締りして他の子たちにも外に出ないように言っておいて。それと――」


「知らない人を中には入れない!でしょ」


 ミシェルの言葉にベロニカは笑みを浮かべ壁にかけてあった剣を手に取る。

 そして、飛び出したBJの後をベロニカは追っていく。



 13番街は下水道だった名残から丸みを帯びていて、時折地上への梯子や階段がある。

 その地上を治める真祖は第7真祖と呼ばれる女性型の真祖である。

 エリー・ラカ・G・ハモンズ。それが第7真祖の名前である。


 眷属の数は30ほどで、人への警戒心が薄く、ジャンクを集めるには比較的安全な場所とされている。

 しかし、どの真祖のテリトリーにも隷属下にある化け物たちが徘徊している。

 ハウンドやグールは地上を徘徊し、リリアックやクローも空を飛んで襲い掛かってくる。


「……くそ、女の子1人で歩き回るとしたらどこをどう行ったのかさっぱりだな」

 13番街の下水道でどの階段から地上へ出るか悩むBJ。


「BJ、きっと道具屋の裏手の梯子からよ」

 追いついたベロニカがそう言うと、「どうしてだ?」と不思議そうなBJ。


「あそこは建物内に出ることができるわ。空を警戒しなくて済むからよ」


「そうか!よし!ってか頭いいんだなミチルは」


「どこかの誰かさんよりはね」

 跋の悪そうな顔をするBJは頭を掻いて道具屋の裏手へ向かう。


 地上へ出るとそこは駐車場だった。

 それが駐車場であることは彼らも理解している。

 BJは最小限の物音でマンホールから出ると柱の影へと移る。

 BJに手招きされたベロニカも後を追う。

 蛍光灯が点滅する中を移動するBJは、出口に向かうよりも高い位置から周囲を見えないかと階段を上ろうとする。

 ハンドサインの真似事でベロニカにそれを伝えようとするも、それが彼女に伝わることはなかった。

 見かねたベロニカはBJに近づいて直接聞く。


「なに?!」


「分かれよ!俺は上の階から地上を見渡すって言ったんだよ!」


「なら口で言って!手をバタバタされても意味分からないわ!」


「バタバタって――…まぁ、それは後回しだ」

 そう言うとBJは階段を上がり、ベロニカは出口の確保に向かった。


 5階まで上ったところでBJはコソコソと地上を見渡す。

 空は黒く、黒い雲に覆われているが常に薄明かりに照らされたように地上の視界はとれる。

 日に約1時間の日差しで植物は成長し、その光りを隷属下の化け物は嫌がる。


「日の出まではあと10分ぐらいか――」


 BJは近場から人影を探す。すると、一匹のハウンドが不自然にうろつく建物があった。

 腰に吊るされた剣を鞘から引き抜くBJ。

 剣を引き抜くと柄の近くに付いているトリガーを引く。すると形状が銃へと変わる。

 この世界の武器は全てが剣であり銃でもある。

 所謂"ガンブレイド"と呼ばれるそれでしか真祖に列なる存在を傷つけることはできない。


 形状が変化したそれにBJはバックパックから取り出したパーツを取り付ける。

 遠くを見るためのスコープ。

 それを付けて覗き込むとハウンド周辺を窺う。

 ハウンドのうろつく建物の屋上を見るとそこに人影が見えた。


「アレは!」


 黒髪のポニーテール。スカートの中にズボンを穿いている。

 手には小さめのガンブレイド。


「ミチルだ――」

 BJはすぐに階段を駆け下りた。ベロニカと合流すると状況を説明してミチルを助けに向かう。


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