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38 餞別


 リザルトを見終えた俺たちは、カイトに沢山の感謝の気持ちを言われた。

 BJなんかは照れてしまっていたが、「俺たちは同じ境遇の言わば同士じゃねーか。当然のことをしたまでさ」とキメ顔で言って誤魔化していた。

 マリシャはカイトの頭を撫でてお姉さんぶって見せた。リアルに姉のいるカイトは、「もう1人お姉ちゃんができたみたいだ」と言って笑った。


 ナナはカイトと抱き合って何かを話していた。

 それに関しては、俺もBJもマリシャも聞こえないよう一歩退いた。

 2人が何を話しているのかは聞き取れないが、かなり長い時間何かを話し合っていた。


 カイトはちゃんと理解している。

 ここにいる5人の中で一番帰還できる可能性の高いのは自分であるということを。


「いい経験ができただろうか、これは彼女にとってプラスになったか、俺と彼女に確かな繋がりができたか―――と考えているのかキング・オブ・ジャスティス」


 唐突に話しかけてきたのはシャドー。

 一体今の今までどこに姿を隠していたのか。

 もしかするとそれはマリシャの胸元か、それとも誰かのアイテムストレージにアイテムとして収納されていたのか。


「何が言いたい――」


「ジャスティス……カイトにすがっても構わない。人は常に強者たりえない。ゆえに"すがっても"仕方がない…しかし、"甘えるな"」


 小さいウサギは元は俺のコピーのコピー。

 元を辿れば、起源は俺であるわけだ。

 しかし、ウサギに説教されるいわれはない。


「お前もナナに甘えるなよ」


「……え!!」


 戸惑うウサギを拾い上げるカイト。


「どうかしたのかい?」


 カイトは硬直したウサギにそう問うが、さっきの言葉が響きすぎたのかウサギはそのまま動かない。


「気にしなくていい。それより随分とナナと話し合っていたようだが…聞くのは野暮かな?」


「野暮?…………!まさか、ボクがナナとそういう関係だと思っているのかい?!」


「ナナはとても整った顔立ちの女の子だ、カイトが惚れこんでも仕方ないと思ったのだが――」


「ごごご誤解だよ!確かにボクは可愛い綺麗な女の子が好きだけど!」


「悪い、カイト――冗談だ」


 カイトはキョトンとして、「冗談?ヤト…キミが冗談を言うなんて」と言う。


 さっきのウサギの言葉が俺にそれを言わせたとすでに理解している。

 甘えるな…か。


「カイト、前に話したこと覚えているか?」


「この前の話かい?もちろんだよ」


 俺はそれを聞いて安心した。


「ならいい――」


 そう言った俺にカイトは拳を突き出す。


「いい思い出になったよ」


 拳と拳を合わせる。

 これでカイトは1人向こうに帰っても、ここにいる全員と繋がっていられる。

 それが、俺の思い込みや自己満足であったとしても今はそれで構わない。



 その後、ナナは第9エリアの街シトリーへと帰り、俺たちも始まりし街へと帰路につく。


「なーヤト坊…この先どうなると思う?俺たちがさ残されてさ…それからBCO(ここ)はどうなる?」


 BJの不安は分かる。しかし、それは誰にも…俺にも分からない。


「…さー、どうだろうな。ジョーカー側の思惑が少しでも分かれば推測もできたんだろうが…。しかし、悲観することでもないだろ?」


「攻略不可能って分かっているゲームに残されるんだ…そうなっても仕方ないだろ――」


「何だ…らしくないことを言うな。…お前まさか、(キャット)(・ハンド)と別れるのが辛いのか?」


「な!んなこたね~よ!俺にロリコン属性付けようーとすんじゃね。こんにゃろ」


 BJにワシャワシャと髪をいじられるがそれほど抵抗感がない。

 本当の兄がいる俺としても、"兄とは本来こういうものなのか"と思わせる。

 正直、実の兄とは仲がよかったわけじゃない。


 母に過度な期待を込められて育てられた兄と、母に無関心を貫かれた弟。

 劣等感が生まれるとしたら互いにか弟の方に生まれやすいその生い立ちで、俺と兄はそうはならなかった。

 それは父の存在がそうさせたのかもしれない。


 父に過度な期待を込められて育てられた弟と、父に無関心を貫かれた兄。

 そう、母と父どちらも兄と俺に期待をかけた。

 しかし、その期待のかけ方は一方は"厳しく"もう一方は"甘やかし"で、どちらがより辛いのかと聞かれると前者と言うしかない。


 兄と遊んだ記憶はないが、兄に怒鳴られた記憶はあった。

 広い屋敷の廊下で、「お前は遊んでいられていいご身分だな!」と吐き捨てられた。

 俺は小学生だったが、「ヒステリーを起こす歳でもないだろうに」と吐き捨てたことを覚えている。


 それが小学生らしからぬ返答だったのは理解している。

 が、そう言ってしまうほどあの時の俺には兄が子どもに見えた。

 それ以来、兄とは顔も合わせていない。


「BJ兄貴ってよんでもいいか?」


「…どうした~ヤト坊!そんな子分みたいな呼び方したがるなんて……」


「冗談だ、本気にするなよな」


「……ヤト坊――野郎のデレツンは求めてないんだが――」


 BJの言葉に俺は声を出して笑っていた。

 そして、BJも俺に釣られて笑っていた。

 後ろを付いて歩くカイトとマリシャが首を傾げているだろうことは見なくても分かる。




 そうして始まりし街の近くまで着た時だった。

 BJが何かに気付いて指差す。

 指された方へ視線を向けるとそこには人だかりができていた。


 何の変哲もない人だかり。

 それがBCOで比較的安全な圏内ならそうなるのだろうが、ここは始まりし街から少し離れている。

 モンスターもウロウロする外周だ。その異状性の高さは言わずとも分かる。


「あんなに人が集まるなんて一体何があったんだろう?」


 カイトがそう言うと、俺とBJは目を合わせて頷きその人だかりに駆け寄った。


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