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24 BCOの外


 2077‐May


 世界規模で発表された新技術、外視覚投影技術。これによって外部映像を視覚野に取り込み、目に障害のある人に視覚を与えることができる。

 さらに、外部との接続が可能なものの映像を視覚野に取り込むことができるようになった。


 現在HMCに付属的な外視覚投影技術に必要なハードを取り付け、そのHMCをPCやTVに取り付けるなどするだけで映像も見ることが可能となるのだ。

 日本などでは新幹線などの販売機にVRにリンクする機器を導入しているが、それらもいづれは無用なものとなることだろう。

 しかし、一般に販売されている携帯できるHMCはスペックが足りないため、据え置きのHMCからの接続か高価な最新のHMC、価格的に100万円以上するものを購入する必要があるため。まだまだ一般に普及するには時間がかかる。


 問題視されていた視覚情報の漏洩は、HMCがセキュリティーとして働き、脳とのリンクだけで済むために心配は無い。

 さらに進歩すれば、いずれは電波だけで視覚野に外部の状況を取り込むことも可能になるだろうと専門化が言う。


「ともかく、視力の悪い人間がメガネではなくHMCを頭に載せて働いたりする光景もいづれは日常になるに違いない……おーいアレキサンダー!これどうよ!」

 ブロンドの上半身裸の男は鍛えられた体に更なる筋肉を付けようと、首から提げた携帯の端末で目の前に表示させた映像を見ながらダンベルを上げる。

 そんな金髪の男が呼んだアレキサンダーなるものがスケボーに乗って現れる。

 床から数センチ浮いたスケボーから飛び降り現れた男はブロンドの長髪を靡かせて言う。


「クラーク、それジャパンの記事かい?だとしたらナンセンスだね。そんなことよりも軍事的な観点で技術を進歩させないと」

 男はニヘラと顔に笑みを浮かべてモニターがいくつも置いてあるPCの前に座る。


「しかしなアレキサンダー、こういった技術も軍事的なものの転用なのかもしれないぜ」


「確かに、VRを確立しているジャパンならVR内で軍事的な実験を外部に漏らさず試作できるからね」


「それはウチも同じだと思うがな。いや、現実でも同時に試すことができるウチの方が確実性で上回っているか」


「技術的に現実で作れない物をVRでいくら作っても無意味だからね」

 長髪ブロンドの男は、PCモニターに移る映像をジッと見つめて声を上げた。


「おい!クラーク!依頼が入ってるぜ!」


「依頼?俺たちプロゲーマーは基本ゲームのことしか受けないぜ」


「そう!ゲームの依頼だよ!内容は…なんだこれ――」


 ダンベルを床に置いて目の前の映像を消すと、鍛えられた体つきの男はモニターを見る。


「………これは例の5万人以上がVR内に囚われてる事件に関係しているんじゃないか?」


「まさか!BCOはこの国を含めて関係国が情報共有して解決に取り組んでいる大事件だよ!死亡者だって日に日に増えているって!」


「でも、これはどう考えてもそれ以外ありえないだろ。なにせ、このメンバーにはゲーマーの名前も多いし、それに――」

 髪の短い筋肉の隆起させた男がモニターに映る名前を指差した。


「Mr.ルーカス!ここ半月どのゲームでも名前を見なくなったこの国NO.1のプロゲーマー……ネットではBCOに囚われてるって噂が広がってるけど」


「他にも、リ・ユンホ、ヤン・ヨンヒュン、リ・ミンチョルこの辺は韓国のプロたちだろ。アレクサンドル・クリヤノフもロシアのプロだ」


「ルーカスと同じく、彼らもネットでゲーム大会にここ半年出ていないよね。これはもう確定じゃないかな」


「俺も一歩間違えばこのリストに並んでいただろうさ、現に購入してないHMCの付属パーツにBCOの無料ダウンロード案内が送りつけられていたんだからな」


「"賞金の出ないゲームに用はない"ってすぐに投げたけどね」


「……おい!ちょっと止めろ!」

 筋肉男がマウスでモニターをスクロールする長髪男の髪をグイっと引っ張る。


「アウチ!ちょっと!髪を引っ張るなよ!」


「コレを見ろよアレキサンダー!このプレイヤーネーム―――」


「……これって"あの"かな」

 モニターの一つの名前に注目する二人。


「間違いないだろ。Y・A・T・O…………ここ数年いろんなVRMMO内で噂されるジャパンのプレイヤーだ」


「クラークが前にStreet(ストリート) Fighting(ファイト) Revolution(レボリューション)でボコボコにされたっていうチーターだね」


「ああ、とてつもない反射神経をしたプレイヤーだったぜ。倒してやろうと思って色々と試したが一度も勝てなかった。3ヶ月ぐらいで勝ち逃げしやがって――」


「ひょっとして…参加しようとしてる?こう言っちゃなんだけど、これは囚われたプレイヤーとの一騎打ちだ。つまりクラークが勝ったら相手は――」


「別に殺そうってんじゃない。ギリギリで止めればいいだけの話だろ?」


「絶対止まらないと思うけどね」


「コレを考えやがった奴はまともじゃねー。クレイジーだぜ…だが、これも何かの運命だろうな」


 モニターには、"single game(個人戦)"と書かれた欄にいくつも名前があり、VRの環境状況が記載されていた。

 時間帯の記載とVR内環境の記載。対戦相手の選択ができるようにリンクが張ってあった。


「どうやら本物のようだね。本当にこれを考えた人間、犯人は狂っているよ。VRで人に人を殺させようとしている」


「ひょっとすると10代の少年がすでに何人もVR内での殺人をしてしまっているかもな。政府は気付いてないらしいし」

 ダンベルを再び持ち上げた男は口元に笑みを浮かべて言う。


「ゲームの中で死ねるんだ。ゲーマーなら本望だろうな――」

 その言葉に長髪の男はニヘラと笑みを浮かべて言う。


「ほら、やっぱりその気じゃないか――」


 モニターの中に書かれた国名の横に書いてある"death"の文字の数字を見て、長髪男はマウスポインターを乗せる。

 現れた数字を見ながらさらに笑みを強めて言った。


「ま、もう1千人以上死んじゃってるし…今更数人増えても問題ないでしょ」


 互いに顔を見合わせた男たちは笑い声を上げる。


「とにかく、それを見る限りこっちが指名したプレイヤーと対戦できるようだな」


「名が通っていればいるほど敵が多いってことだね。プロたちは大変だね――」


「一番大変なのは…恨みを買ってしまった奴だろうな」


 本当に楽しみだ。そう言った男は、ダンベルを持ち上げながら過去の屈辱のイメージを睨みつける。


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