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9 エリアボス


 BCOにある大陸は5つ。一つの大陸は6のエリアに分かれていて、さらに10~12の小さいエリアが存在する。

 一つのエリアに20のボスがいることはヘルプで確認している。テスト時はそうだった。

 小さいエリアには少なくともボスが必ず一体はいるってことになり、複数いる場合もあるということだ。


 大陸最南端のエリアのさらに小さい第4エリアのエリアボスのフィールドの目の前。

 俺は1人でウィンドウと相談中。

 装備は現状最強のもの。アンプルは満タン。負ける気はしない。


 ウィンドウにはこう表示されている。



 LV:24

 HP:4371(4896)


 STR:98(203)

 VIT:50(195)

 DEX:60(102)

 AGI:80(138)



 第4エリアのエリアボスの推定攻略水準レベルは22から24。



 武器

 1:レイブンソード【片手長剣】STR85 HP12%


 防具

 1:バトルアーマー【鎧】VIT125 STR20 AGI3 DEX2

 2:猫の腕輪【腕】VIT5 DEX33

 3:殺人者の足袋【足】AGI30 VIT10

 4:アレインの冠【頭】AGI5 VIT15 DEX5


 装飾

 1:絆創膏【ユニーク】DEX2 

 2:fの系譜【古文書】AGI20

 3:最高級の…【称号】



 レイブンソードのスキルはツイストストライク。

 ステータスにネガティブでない装備を選び。

 装飾には現在唯一のユニークアイテム絆創膏に、テストの時にボスのレアドロップで手に入れた"最高級の…"は称号。

 その効果はおそらく回復アンプル効果をランダムに上げる。

 殺人者の足袋にもスキルがあり、効果は殺人者の足袋のステータス2倍上昇。時間は60sと短く、リチャージは300s。


 戦う前の高揚感からくる武者震い。


「やはり、こうでなくてはな!」


 1人声を発するのは虚勢か他の何かか。

 フィールドラインを越えると戦闘が開始されるまで数十秒。

 出現したエリアボスの演出を見終えるといよいよ。


「よう、少しは楽しませてくれるんだろうな――」


 その名はバーバリアン。

 背中に複数の武器、想定STR300~400、AGIが低いと推測。

 モンスターというより、本当に人と戦うみたいだ。

 BCOでのボス戦において意識する点は4つ。

 一、敵の大振り以外での攻撃は控える。

 二、全方位の強攻撃がスキルの可能性が高い。

 三、ヘルス半減時のステータス変化あり。

 四、瀕死時の発動スキルの威力が高い。

 今はまだこれだけだが、いずれは変形や複数のボスだってありえる。

 しかし、モンスターは所詮システムに縛られている。

 ある一定戦っていると戦闘中にいくつかのルーティンが見て取れる。

 それらはプレイヤーにとっては隙となり、ヘルスを減らす上で大事なポイントになる。


 単純な攻撃は!防がれてしまう!だから!!


 BCOのボスは、プレイヤーの攻撃が単調になると高い割合で素手でパリー、もしくは武器でのパリィを行う。

 その行動はプレイヤーに対しての大きな隙を作る。

 硬直は3秒間。決して長いという訳ではないが、攻撃を受けるには十分すぎる。


 バーバリアンのルーティンである"水平の大回転切り"の後、必ず武器を持ち上げる間に隙ができる。

「ここ!」

 構えから発動まで0,2秒。


「はぁああああ!!」


 白いエフェクトと青いエフェクトが螺旋を描き。

 バーバリアンに剣先が当たると赤いエフェクトが飛散する。

 突き抜けた軌道にTWIST STRIKEの文字が浮かび、バーバリアンの頭部の右上にTOTAL:1076の文字。

 バーバリアンのヘルス、HPバーの20分1を削る。

 すでに削っていた分を合わせると半分を切った。


「……っ」


 口の端に刻まれたものが、自身の感情表現で一番多い"優越感"のそれだった。

 その時、バーバリアンの体が赤く蒸気を上げる。


 ステータス変化――


 戦士風だった姿が鬼の様に変わる。

 動き出し。速過ぎて剣でガードするだけしかできなかった。

 確実にAGIが上昇している。おそらくSTRもだろう。

 この手のタイプの変化は何かしら他のステータスがネガティブになる。

 VITであると推測する。

 もし、武器に何らかのデバフ効果が付与されていた場合厄介になる。

 しかし、バーバリアンの大剣にそれらしき変化は見られない。


 用心深い俺は、殺人者の足袋のスキルを発動させる。

 AGIの上昇は単に移動速度の上昇ではない。

 例えば、野球などのスポーツでバットを振る。

 AGIが低ければ、ボールが投げられてからバットを一度振りその勢いで回るか、動きが止まる。

 AGIが高ければ、ボールが投げられてからバットを2回、または複数回振ってしまえるようなものだ。

 その違いは実際に剣を振らないと体験できない。


 次のリチャージまで54s。


 後、54秒で【ツイストストライク】が再使用可能になる。

 バーバリアンの素早い"なで斬り"が、俺の左肩を通過して赤いエフェクトが飛散すると、HPが350ほど減ってしまう。

 視界にある【YATO】の横にあるヘルス表示には2086の数字が表示され、すでに2810のダメージを受けていることが分かる。

 60%をヘルスが減ったぐらいが回復のタイミングとしては丁度いい。

 逆にその60%が分かりやすいようにHPバーの色が変色するように設定されていて。

 それが利に叶っているとも言える。実用的という意味だ。

 左手をスライドさせて簡易スロットの回復アンプルを出現させて口に含む。

 780の回復表示と同時にアンプルを投げ捨てる。

 すると、空になったそれは空中で黒系統のエフェクトを放って消失する。

 すでに6回ほどアンプルを消費している。

 計算通りにここまでは戦えている。


 そんな戦闘中にもかかわらず、俺は自身の足元を見る。

 ここがどうしても仮想だと思い知らされる瞬間。

 戦闘時の動きが速過ぎて背景の処理が追いついてない。

 背景である地面が露骨にポリゴン化している。

 実際にアイテムであるミリタリーブーツははっきりと描かれている分それが目立つ。

 仮想世界を司るシステムは必ずしもリアルを追求しない。

 それはシステムに過ぎないから、現実的な"機械"の部分がそうさせているのだろう。


 その瞬間にバーバリアンの攻撃が鼻先を掠めて76のダメージを受けてしまう。


「……油断しすぎだ」


 自身への忠告。

 その後、ダメージを負ったのは一回で。

 初見回避不能のスキルによる1242の威力をたたき出したバーバリアンの悪あがきだけだった。

 数々のFDVRMMOで鍛えた勘はこのBCOでも生かされているが、この世界特有の"戦闘中システムアシストなし"に関して言うなら、まだまだ苦労しそうな気がする。



 RESULT


 F:6700

 E:400


 D:バーバリアンの大剣 RARE

 D:バーバリアンの防具


 BOSS SOLO BONUS


 F:5000

 E:200


 D:戦士のガントレット RARE



 それはリザルト画面。

 Fはフィラ、この世界の通過。Eは経験値、Dがドロップアイテム。

 この時俺は、自身の誤解をまた一つ知る。


「レアドロップが二つ――」


 BCOのボス討伐報酬のレアドロップは、このBOSS SOLO BONUSと表示されているソロボーナスでのみ入手可能なものだと考えていた。

 しかし、通常ドロップにもRAREのアイテムが出ている。

 つまり、今まではただ運が悪かっただけ。

 それでもこのソロボーナスは大きい。ボスをソロで狩るメリットは少ないと考えるのがセオリーである現状では、絶対に誰も気付くことのできないことだ。

 この優位性は俺とこの世界の相性の良さを表している。

 リザルトを払って消すとフィールド外へ向かう。

 ボスのいるフィールドは専用の固有空間になっているが、撤退はできるようだった。

 これなら無理な戦闘継続をせずに、ボスについて情報を引き出した上で撤退も今後思案しなくてはいけない。


 入手したバーバリアンの防具はネガティブがAGIに対し以上に高かったため、おそらく今後はストレージで埃を被るかホームの倉庫行きになる。

 戦士のガントレットはさすがレアだけあってなかなかに強力な装備だった。

 スキルもAGI特化にSTR強化で多少VITにネガティブだが、発動時間20sなら瞬間火力のブーストに最適である。

 猫の腕輪よりDEXが劣るがその分VITとSTRが上昇する。

 すぐさまその二つを交換して口元を緩める。

 この瞬間は自身でも自覚のある欠点だ。

 注意力散漫な俺は走ってくるイノシシのようなモンスター、ウリゴーに跳ねられた。


「…がっ!」

 プログラミングされたモブのそれが笑っているように見えた。

「………ぶっ殺す!」



 ウリゴーの一件を済ませた俺が武器を収めた時に丁度メッセが入る。

 差出人はナナからで、件名は"たすけt"だった。

 "助けて"を打ち込む暇がないほどの状態であることはすぐ理解できた。

 フレンドの項目でナナの所在を確認する。


 

 【KJ】:IN:ORDER:F6-A5

 【MARI】※ブロック中

 【7NANA7】:IN:――:F6-A5

 【BJ】:IN:FamIlIar:F3-A1



 BJのギルドが"ファミリア"である事実は置いといて。


「第5エリアのフィールド6……」

 そこはおそらくボスエリア。

 偶然俺がボスと戦っていた時にナナとKJもボスと戦っていた。ということではなく、俺が狙って被せたのだ。

 しかし、まだ戦闘中とは思いもしなかった。

 戦闘は彼らが戦い始めた後に俺が開始したため、彼らの方が早く終わるだろうと予想していた。


「直接行くべきか…」

 判断し辛い状況に俺は手持ちの転移アイテムを使うか迷う。

 このBCOの転移アイテムはレアドロップでのみ入手可能なアイテムでそう簡単には使いたくない。

 迷っている俺に追い討ちとなるメッセが届く。

 KJから、件名"絶対に来てはいけない"と書かれたそれを見た俺は。


「転移!ヘイビア!」

 絶対にただ事ではない。

 KJにしてあの言い様、必ず普通ではない事態に陥っている。

 鮮やかなエフェクトに包まれた俺はヘイビアへと転移し。そこから第5エリアまで駆け出した。


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