第陸話 【成長促進】
お粥、おいしいですね。
ですが、何か忘れてるような気が……
「あ、そうでした。カオルさん、でしたか? ご飯食べないと死にますよ? 技能の影響で体が栄養不足になってますので、衰弱死します」
「はっ?」
「えっ?」
何でカムさんまで驚いているのでしょう。やらせたのはあなたなのに。
……そういえば、言ってませんでしたね。それに、人に使ったのを見せたのは初めてでした。
植物だったら土と水があればだいたいは大丈夫なんですけどね〜。動物の場合は、食事で外から栄養を取らないと体が成長についていけずに死んでしまうのです。
しかし、しばらくは成長した肉体の魔力で体を維持出来ますから気付かない事もあります。
いや〜、とても危険ですね〜。自分には絶対やらない方法です。
死にたくありませんので。
「おい……。どうゆう事だ……」
「技能で成長させましたので、食べて栄養を取らないと死にます」
「もっと分かりやすく説明しろ!」
面倒ですが、仕方がないですね〜。
「私がカオルさんに対して行ったのは治療ではありません。技能で肉体を強制的に成長させただけです。ですが、そのおかげで体内の魔力が活性化して意識を取り戻しました。
しかし、
成長するには栄養分が必要です。植物の場合は土、水、光、などです。では、動物の場合は?
『食べ物』、です。
食べ物を食べる事で体内に栄養分を取り込みます。
ですが、今のカオルさんの体は強制的な成長によって体内の栄養分が枯渇に近い状態になっています。
それで、まだ、体が大丈夫なのは体内の魔力のおかげです。魔力が栄養分の代わりをしているのです。
なので、魔力が切れるとだんだん弱っていき、最後には死にます。
まあ、衰弱死する前に食事をすれば大丈夫ですよ。……多分。
以上、説明終わり」
はあ、疲れた〜。長かったですね。カムさんもカオルさんも呆然としてますが、こんなもんでしょう。
「じゃあ、今すぐ何か食べないとカオル嬢ちゃんは死ぬって事か?」
「はい。おそらく」
「なんで先に言わなかった!?」
「本人に言えば良いと思いまして。それに頼んできたのはカムさんですし、私には他に方法がありませんでしたのでね〜」
「……それは……、そうか。村長かしば婆がいれば良かったんだが、二人とも出掛けてたし、他に頼れる奴もいなかったからな。で、どの位食べればいいんだ?」
「さあ?」
「はあ!?「さあ?」ってなんだよ!」
「いや、知りませんよ。人に治療目的で使ったのは初めてですので」
普段はほぼ植物のみに使用していますのでね〜。人間に使った場合なんて知りませんよ。
「…あー、とにかく何でもいいから食べればいいんだな?」
「そうですね」
「カオル嬢ちゃん聞いてたか? 魔物に襲われて不安な気持ちになってるかもしれんが、今はお粥を食べてくれ。俺は村から肉と野菜を持ってきて料理を作るからウシオは嬢ちゃんが倒れないように見てろ。お前はあと、食べるなよ?」
「えー。なら、私にも作った物下さいねー」
薫は理解出来ていない。国や魔物について聞こうとしたのに新たな問題が発生していて、処理速度が追い付いていなかったから。
唯一つ分かった事は食べないと死ぬということだけだ。言われて気付いたが薫は急にお腹が空いてきていて、もう我慢出来ない状態になっていた。なので、
「いただきます」
出されたお粥を勢いよく食べ出していた。