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第五話 日の国、日本

 薫が目を開けるとそこは見た事の無い場所だった。


 最初に目についたのは天井。平らじゃなく梁の見える木造の。山小屋みたいな感じのする年期の入った天井だった。


 あれ? 私、なんでこんな所にいるの?


 ……思い出せない。


 なので周りを見てみたら、……人がいる。

一人は隣に寝ていて、さらに奥にもう一人いる。


 この人達、誰?


 隣の人は若いお兄さんかな? 見た目は若いんだけど覇気が無い感じ。奥の人は中年のおじさんって感じで、何故か苛々(いらいら)しているみたい。


 それより少し思いだしたんだけど、私大学に行こうとしたんじゃなかったっけ?


 うーん? その後どうしたんだっけ?

……なんだか余り思い出したく無いかも。




あ!! そうだ! 変な森……突然現れて……猫に…………追いかけられて………

……私……


「んっ? あっ……私……生きてる……?」


 本当に生きているのか分からず体を確かめてみました。

腕は!?・・・ある

足は!?・・・ある

他に異常は!?・・・

無いかも……。


「やっと気がついたか。お前さんは誰なんだ?」


 中年のおじさんが話しかけてきました。


「えっ……私は……」


 名前を言えば良かったと思ったんだけど……その……その後、今までの出来事を話したほうがいいのかな? ……言っても信じてもらえないと思うけど……。


「まぁ、いいや。落ち着いてから話を聞かせてくれ。それより、腹減ってないか? お粥食うか?」


「…………」


どうすればいいんだろ…。助けてくれたみたいなんだけど……、知らない人だし、あんな事があった後だからかな? ご飯を差し出されても警戒してしまい食べる気にはなれない……。


「下さい。お腹へりましたよ〜。いただきます」


 おじさんが私に差し出していたお粥を隣で寝ていた若いお兄さんが起き上がって受け取り、食べ始めました。


「お前に言ったんじゃない!」


 おじさんが怒っていますが、お兄さんは気にせず食べています。


(何? どうゆう状況なの?)


 私は訳が分からなくて、ぽかーんって効果音が合う感じの表情をしていたと思います。







 ご飯の件で一騒動あった後おじさんが


「あー……悪かった嬢ちゃん。先にこっちが名前を言うべきだったな。俺はカムだ。で、こっちが馬鹿……いや、ええっと…」


 おじさんの名前は分かりましたがお兄さんは? 馬鹿ってなんですか?

って思ってたらおじさんとお兄さんが内緒話を始めてしまいました。


(お前の名前なんだっけ?)

 (えっ? 私の名前忘れたんですか〜カムさん?)

(だってよー、しば婆がいつもお前の事を馬鹿って呼んでるからよー)

(おばあちゃんは名前で呼びませんからね〜、……確か、『ウシ』ではないですか?)

(お前、自分の名前を忘れたのかよ……)

(まぁどうでもいいではないですか、名前なんて何でも)

(普通は良くないだろ。はあ……。ウシ……ウシ……、『ウシオ』じゃなかったか?)

(ではそれで)

(……テキトウ過ぎだろ……)


 どうやら内緒話は終わったみたいでおじさんが私のほうを向きました。


「こいつはウシオだ。それで、こいつが村外れで倒れてた嬢ちゃんを治療して、俺がここまで運んでもらった。そして、ここはウシオの家だ」


 お兄さん、いえ、ウシオさんは私の命の恩人だったみたいです。


「えーと、私は麻薫と言います。助けていただきありがとうございました」


「アサか、珍しい名前だな。それにカオルって苗字も聞いた事ないしな」


 ん? 何か勘違いしてるみたいですけど、この人達は外国人なのでしょうか、名前と苗字が反対です。でも話してる言葉は日本語ですよね?


「あのー、麻が苗字で薫が名前なんですけどー……」


「そうなのか? なら、嬢ちゃんはどこから来たんだ? この国の人間じゃないな」


 急におじさんの目付きが険しくなって私を睨み付けてきました。


「あ、あの、こ、ここは日本ですよね? ねっ?」


「ニホンー? どこだーそれ。ここは火の国だぞ」


 日の国? 日本の違う呼び方かな? この人達、外国人みたいだし。


「それで何しに来たんだ、こんな所に?」


 何て説明すればいいんだろ。「気が付いたら森の中にいて、巨大な猫に追いかけらてここまで来ました!」なんて言えないし。どうしよ……。


「……えーと、それが、……森にいて、……猫に追いかけられまして……その、怖くて逃げてたら……」


「ああなるほど、そうゆう事か。ワーキャットに追いかけられたのか」


 事情を話したらおじさんの目付きが元に戻りました。でも、ワーキャットって?


「あのー、ワーキャットってなんですか?」


「知らないのか?」


「はい、聞いた事もありません」


「ワーキャットは山にいる猫の魔物で、場所によっては魔獣とも呼ばれるな。


あいつらは山から降りてくる事はめったにないが、今は繁殖期だからなー。産まれたばかりの子供が降りて来たんだろう。

 それで、そいつの大きさはどれ位だった?」


「一メートル位かな?」


「イチメートル? なんだそれ、どの位だ?」


 単位が分からないみたいです。


「えーと、お腹の辺り位だったと思います」


 立ってお腹のあたりに手を当て、これなら分かるかな? と思ってたら今まで黙って話しを聞いていたウシオさんが会話に参加してきました。


「カムさん、カムさん。

イチメートルって一ヤールの事ではないですか?

だいたいそれくらいですし」


「一ヤールか……なら子供だな。でもどうするかなー。狩るにしても村長がいないからなぁ」


「カムさんがやればいいのではないですか? 村のまとめ役ですし」


「それだと狩りの間誰が村を守るんだよ。それに今はカオル嬢ちゃんもいるしよ」


 私を置いてきぼりにして話しが進んでいきますけど。魔物? 狩り? 分かりません、頭がパンクしそうです。


「すいません……魔物ってなんですか?」


「!? なんだ、魔物も見た事が無かったのか。


あー、簡単に言うとだな。ここでは動物で無い生き物をまとめて魔物って呼ぶ。



今回のワーキャットだと見た目は猫だけど、あんなに大きな猫はいないから魔物になるんだな」


 これは、もう駄目ですね。日本にも地球にも、あんなに大きな猫はいないでしょう。

つまり、

ここは地球では無いと…………




日の国は日本でもなく、地球上の国でもなかったみたいです。

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