第肆拾漆話 百舌鳥のはやにえ
戦っていた場所からある程度離れた所で突撃小僧が立ち止まった。
「どうしたんです? 早く走って!」
「ちょっとウシに言わないと」
突撃小僧は、ウシオのいる方向を向き、大声で叫んだ。
「ウシ~~~!! 起きろ~~~!! 死ぬぞ~~~!!」
……。
「……はぁ。仕方ありませんね~……」
ウシオは、ようやく起きた。
しかし、ネズミはもう目前に迫っていた。
このままだと、ウシオは、……。
「あなたたち、邪魔です」
死なない。生きる事に、生き抜く事に特化したウシオの力が、死を拒絶する。
(※注意 そんなに大層な事はしません。言ってみただけです。ご注意下さい。)
「ヂユ」
ネズミが、変な声を出した。しかし、出したくて出した訳では無い。苦しくて、どうしたらいいか分からなくて、必死に抵抗した結果、変な声になっただけである。
口に何かを入れられ、閉じられなくなり、息苦しくなった。
なんだ、これは?
ネズミは思った。しかし、確認する事も、かみ砕く事も出来ない。ネズミは、口を開けたまま、何もする事が出来ず、ただ、地面を見るのみ。
地面が近く、地面が遠い。目の前に見えるのに、脚が付かない。何故か身体が宙に浮いている。
どうしてだ。
無防備な獲物に食らい付いたはずなのに……。
ネズミの意識は、そこで途絶えた。
ウシオは、口から植物に貫かれたネズミを前に、悩んでいた。
「三匹程で良いですかね? いえ、カオルさんの分も合わせて四匹ですかね?」
ネズミを仕留めたは良いが、数が多く、何匹持って行くかを、真剣に悩んでいたのだった。
子供達の分は一人一匹なので、三人で三匹。突撃小僧は今回関係ないので、後はカオルの分を一匹。
合わせて四匹をどうやって持って行くか。
何か良いものはありませんかねー、と。周囲を見渡していたウシオの視界に、置いていかれた荷車が。
確認したところ、ネズミの歯形や、傷はあっても、完全には壊れていない。
少し、車輪がずれているのみなので、直すと使える。
ウシオは、荷車を直して使うことにした。
まあ、直すと言っても、工具が無いので、修理する訳ではなく、植物の蔦で補強するだけなのだが。
カラカラカラ
荷車にネズミ四匹を載せて引き、隣村へ向けて歩くウシオ。
その顔に、いつもの眠気は無い。ついでに、危機感も無い。さらに、置いていかれたことへの不満も無い。
あるのは、
「いい天気ですね~良く寝ました」
晴れやかな笑顔だけだった。




