第四話 死 起)始まり 終わり
死んだ。
私は死んでしまったんだろう。だって、逃げきれるとは思えなかったから…………。
大学に行こうと家を出たら何故か森が広がっていた。家の外が森だったのだ。
私は暫くそのまま固まっていた。訳が分からなかったから…。
そのまま何秒かしてようやく、どうにかしなければと思ったが既に手遅れだった。
後ろに家はなかった。周りは全て木、木、木。そして、地面には腰の辺りまでの高さの草が生えていた。建物なんて一つもない。そこにあるのは正しく森だった。
私は立ち尽くしていた。なんでこんな事になったのか分からなかったから……学校に行こうとしただけなのに。
そんな時、草むらが動いてとても驚いた、凄く驚いた。怖い、でも、誰かいるのかもしれない。希望半分、恐怖半分で音がした方に声をかけてみた。
「……すみませーん、誰かいるんですかー」
その草むらから出て来たのは黒猫だった。ただし大きさが普通ではなく、大型犬より一回り大きい位の猫だったのだ。
薫は何がなんだか分からない。見た目は知っている猫なのに、それをそのまま大きくしたような 巨大な猫。そんなものは日本にいないはずなのだから…………。
薫を見る猫の目は、完全に獲物を狙っているような目をしていて、嫌な予感がした。
その時、猫が体当たりをしてきて、薫は後ろにゴロゴロと転がってしまったが、痛む所はなくすぐ立ち上がることができた。
猫は遊んでいた。
自分より弱いと思い、いたぶっていたのだ。だから痛みはなかった。だが、恐怖は植え付けられてしまった。
「ああ…ぁ…」
薫は逃げ出した。とにかく逃げた。どこに向かっているかも分からないまま。
逃げている最中も何回か猫は体当たりをしてきた。薫が怪我をしないような絶妙の加減で、恐怖を与えるように。
それでも走った。死にたくない一心で。
ある地点から猫は追って来なくなっていたが薫は気づいていない。
そのまま走って、人が住んでいそうな所を見つけた
だけどそこで薫の意識は途切れ、消えてしまった。