第肆拾伍話
朝。いえ、日の入り方を見る限りもう昼前ですが。私が寝床から起きたところ……。
「やっと起きたか、ウシ! 早く隣村に行くぞ!」
突撃小僧が家の中にいました。一人では無く、カオルさんと共に。
「何故?」
私は今、やる気がありません。歩く気もありません。動く気さえありません。なのに、何故、隣村へ?
私は、突撃小僧を見て、あくびをしました。
「あ~あ~、私は行きませんよ?」
「お姉ちゃんも一緒に行くのにか?」
突撃小僧が強気で聞いてきました。
私は、カオルさんを見て確認しました。カオルさんは、頷いて答えました。
そうですか。前回はカムさんの誘導でしたが、今回はカオルさんが自分の意思で隣村に行く事にしたのですね。では、私が止めるべきではありませんね。個人の意思は尊重しないといけませんのでね。
「カオルさん、さようなら。隣村への道中、死んでも私を恨まないで下さいね」
私は、カオルさんへ別れを告げました。
「守ってくださいよ!」
「嫌です。遠慮します」
動く人を守りながら戦うなんて、とても面倒です。
せめて、どちらか片方のみでしたら楽なのですが。
「そんなの無駄だよ、お姉ちゃん。ウシは荷車に載せて運ぶんだよ。そのほうが早い」
「あれ、ウシオさんを運ぶ為に持って来てたんだ……」
「うん、そうだよ。畑に行く時もたまにこうやって連れて行くんだ。ウシは面倒臭がりだからね」
あらら、突撃小僧は既に対策済みでしたか。
ですが、私は諦めません。何とか理由を考え、二度寝の権利を。
と思っていたところ、縄で縛られ、身動きが取れない状況に。
「そっち持ってお姉ちゃん」
「……あ、うん」
私は、荷車に載せられ、村長の家へと運ばれました。
はあ~、逃げようと思えば逃げられますが、面倒ですね。身動きが取れない事ですし、このまま寝ましょう。おやすみなさい。
村長の家にいたのは、狩りに参加した子供達三人と、盾持ちと槍持ちの二人。
隣村までの護衛ということだろう。
「どうでした? 起きていましたか?」
盾持ちがカオルへ問いかけた。
「起きてたので連れてきましたけど、ちょっと」
「どうしました?」
カオルが言葉を濁し、正確に伝えるべきか迷っていると、後ろから突撃小僧が会話に加わった。
「ウシは荷車に乗せて連れて来ました。準備ができているのなら早く行きましょう」
「そうだね」
盾持ちは突撃小僧を見て、いつも思っていた事を言った。
「ねえ、他人行儀な態度は止めないかい? 同じ村の仲間じゃないか」
この言葉に、突撃小僧は態度と言葉で拒絶を示した。
盾持ちへ向けていた顔を横に向け、一言。
「やだ」
普段、大人に対し、丁寧な言葉を使っていても、突撃小僧もまだ子供。素直な気持ちが、言葉になって表に出たのだった。
そんな対応に盾持ちは、苦笑いを浮かべ、
「そう、ですか」
と返すだけだった。根本的な問題の解決は、村の方針にも関わってくる事の為、一人の意見では決められない。盾持ちにはこれが、精一杯だった。




