第参話 二度寝
「カムさ〜ん。聞いてますか〜?」
「なあカム、縄で縛るか?」
「それは可哀想だろう」
「なら、どうするよ? 盗賊だったら大変だぞ?」
そうだよな。
もし、悪人だったら村人に被害がでちまうかもしれん。その可能性を考えてなかったな、どうするべきか……?
「私、ここで寝ますので家まで運んで下さいね〜〜」
苛つく馬鹿がいるな。
何でこんな野郎に頼らなきゃならなかったのか……
まあ、こんな奴だけど、この村では一番強いからな。
(…っん? この村で一番強い?)
「なあ、この馬鹿の家に運べばいいんじゃないか? こいつ、こんなんでも強いし、女の娘一人位暴れてもどうにかなるだろうしよ」
「いいのか? こいつも一応男だぞ?」
「面倒くさがりだし大丈夫だろ」
「………そうだな。襲う事は無いだろう」
村長が帰ってくるまでこいつに見張りをさせ、帰ってきたらどうするか判断してもらう。
これでいいだろう。さっさと運ぶか
「俺がここで寝てる馬鹿を運ぶから、お前達は女の娘を頼む」
「わかった」
ということで、カムさん達は女の娘を『馬鹿』と呼ばれていた者の家に運んででいきましたとさ。
おしまい。
(まだ終わりません)
「おい、家に着いたぞ。起きろ」
カムさんが男を起こそうとしています。しかしなかなか起きず、十回位耳元で呼ばれてやっと目を覚ましました。
「あっ、おはようございます。ここはどこですか?」
「お前の家だよ、馬鹿」
「んー、ならなぜ、あの女の娘がいるのですか?」
馬鹿は家の床に寝かされているのに、女の娘はその横で布団に寝ている。それも馬鹿の布団に。
「あの娘は村長がくるまでお前の家においといてくれ」
「なぜですか?」
「用心のためだ。誰か分からないし、気がついて暴れ出す可能性があるからな」
「なぜ私の家なんですか?」
「お前が適任だからだ。この村で一番強いからな。何かあっても大丈夫だろ。寝るなよ?」
「面倒ですね。見てるだけでいいですか?」
「暴れたら取り押さえろよ………、俺も村長がくるまでいるからよ」
カムさんが呆れたように言いました。
「しょうがないですね〜。朝ご飯作って下さい」
「なんでそうなる!?」
「お腹空きました。それに、これだといざという時動けませんよ?」
「しょうがねえなー! お粥でいいな! ちょうどいいから嬢ちゃんの分と一緒に作ってやる!」
嫌々といった感じで話していますが、最初から女の娘の分のお粥を作る予定だったようで、すでに材料は揃っていました。一人分も二人分も大して手間は変わらないでしょう。
そんな話をしていたら女の娘が気がついたようです。
「んっ、あっ…私……生きてる…」
死んだと思っていたようで、自分の体を眺めながら驚いていました。
「やっと気がついたか。お前さんは誰なんだ?」
「えっ……私は……」
まだ少し混乱しているようで、まともに答えられないみたいです。
「まぁ、いいや。落ち着いてから話を聞かせてくれ。それより、腹減ってないか?お粥食うか?」
「…………」
「下さい。お腹へりましたよ〜。いただきます」
カムさんが女の娘に差し出していたお粥を横から手を出して受け取り、勝手に食べ始めました。
「お前に言ったんじゃない!」
カムさんが怒っていますが、馬鹿は気にせず食べています。
一方、女の娘は状況についていけず、ぽかーんとしていました。