第十話 運
しばらくしてウシオさんが戻って来ました。
「おばあちゃーん」
「なんだ?」
「壁に穴が空いてしまったではないですか。
直すの手伝って下さいね」
「気が向いたらな。
それより、カオルのいた国の日本と日本人についてだ」
「へ〜」
「カオルも、この世界で日本人がどう思われているか覚えておけ」
「はい!」
ウシオさんは全然興味がなさそうですけど。
「少しは真面目に聞け」
「はーい」
「私がこの世界に来た日本人に会ったのは二人目だ。一人目は三百年前に『無の国』で会った、『おち』という名前の男だ。
その男は日本の都心から来たみたいで、この世界を見て驚きまくってたな。
で、二人目がお前だ。カオル」
他にも日本人がいたみたいなんですが、三百年前ですか?
シバさんはどう見ても、若い女性なのですけど、どうゆう事?
「へー。
おばあちゃんは三百歳を越えていたのですね。
初めて知りました」
ガシッ
「余計な事は聞くな」
ウシオさんの顔面をシバさんが鷲掴みにしています。
でもウシオさんは気にしていないようです。
「だって〜、つまらないですし〜。
それに〜、面白くした方がカオルさんも聞きやすいかと思いまして〜」
「…………」
余計な事はしなくていいから早く話しを進めて!
「……そうだなー。つまらない話しは簡単に済ませるか」
「えっ?」
私にとってはとても大切な話しなんですけどー!!
「まず、一人目の日本人は寿命で死んだ。
そしてそいつは、この世界の言葉を話し、ステータスを自分で開示出来た。
これはカオルにも当てはまると思うが、どうだ?」
ステータス開示? 変な言葉が出てきました。聞いたほうがいいかなあ?
「会話は普通に出来てますけど、ステータス開示とは何ですか?」
「ステータス開示は自分の能力値をいつでも確認できる技能だ」
「どうすれば?
それに、能力値とは?」
「方法は簡単だ。ステータス開示をしたいと思いながら「ステータス」と言えばいい。
それと、能力値はステータスを見れば分かる」
やってみました。
「ステータス」
私の目の前に液晶みたいな物が現れました。それには名前などが表示されているみたいですけど、
名前の下には、能力値? かな?
良く分かりませんが
生命力、筋力、耐久力、魔力、精神力、速力、と表示されています。
その他には
職業【学生】
と表示されていました。
「出来ました。シバさん」
「そうか。
で、数値はどの位だ?
」
「えーと、………(確認中)………、ほとんど1です」
「運はどうだ?」
「? 運、ですか?」
「ステータスにあるはずだ」
そんなのあったかなぁ? もう一回確認してみよ。
「………(再確認中)………ありませんけどー……」
「………」
「………」
私とシバさんの間に沈黙が流れました。
「……まあ、気にするな。そんな事もあるだろう。
それよりスキルはどうだ? 何かあるか?」
「スキル?」
「名前の所を触ってみろ」
言われた通りに触ってみたら
スキル【火】
と表示されました。
「【火】と表示されましけど」
「【火】、かー。………(思考中)………」
シバさんが考えこんでしまいました。
(何で?)