第玖(きゅう)話 ウシオ、消える
「いや、何でもない。不思議な奴、だな、と」
あーあーあ〜。眠い。
「ふ〜ん、そうですか〜」
「ああ。
だが、他の人には言うなよ?もちろん、カオルにも、な」
「いいですよ〜。
今までもそうでしたからね。
でもー、ウソは苦手なんでー、なんとな〜く、それとな〜く、話さないようにします」
「ばーか。
そんな事しなくても大丈夫だ。お前はいつもどうり、だらだらしていればいい」
また笑っていますね。何が面白いのでしょう?謎ですね。
「…んー……うるさい」
カオルさんが起きてしまいました。おばあちゃんの笑い声が煩かったのでしょう。
「起きたか、カオル」
カオルさんは、上半身だけを起こして、おばあちゃんを見ました。
「…?。どなたですか??」
「私は、シバ。
この馬鹿の師匠だ」
馬鹿の部分で疑問に思ったのか、カオルさんは首を傾げています。
「こいつだ」
おばあちゃんは私を指指しました。
「ウシオさんの、師匠、ですか?」
「ああ。そうだ」
ここで私の捕捉
「おばあちゃんは若く見えますが、相当な年齢ですので、知識は豊富です。
だから、カオルさんの力になってくれるでしょう」
ドン! バキッ!
! !! !!!
痛い?
少しだけですが、右側の頬が痛いです。
それに、ここは?
周りを見てみたら、外、ですね〜。
少しは手加減して欲しいものです。家の修理をしないといけないでは、ないですか〜。
めん、どう、だ〜。
※家の中
「えっ?」
私の近くにいたウシオさんが突然消えました。
(なんで?)
さっきまでウシオさんがいた場所にはシバさんが立っています。
(??)
シバさんが何かしたのかなぁ?
「あぁ、すまん。
気にするな。
あの馬鹿はあれ位では死なん」
「えっ……死?」
「あんなのはどうでもいい。
それよりもお前の話しを聞かせろ、カオル。
聞いたところによると、『日本人』だそうじゃないか。日本のどんなところから来たんだ?」
「…えーと、田舎です。間違っても、都会では無いです」
「そうか。
やっぱり、同じ所からくるとは限らない、という事か。
で、時代は?
何年から来たんだ?
」
「?…2///年ですけど…」
「…15年しか経ってないとは…。時間の経ち方が違いすぎる……」
(日本の事、知っているのかなぁ?聞いてみよっ)
「あのー、日本を知ってるんですか?」
「知ってるぞ」
「!?
知ってるんですか!?
どうして!?
他にも日本人がいるんですか!?
日本には帰れるんですか!?
」
「まあ、落ち着け。
あいつが戻ってきてからゆっくり話してやる」
「な!、なんで!?
知っているのなら、今すぐに教えて下さい!!」
「二回も同じ事を話したくないんでな」
「はぁ!?
ウシオさんも何か関係してるんですか?」
「あいつは関係無い」
「なら! なんで!」
「黙れ」
何か分からないが、鳥肌が立ちました。
「それ以上騒ぐと、
殺すぞ?」
動けない。
これは……『恐怖』なの、かな。
「分かったか?」
「・・・はい」
絞り出すようにしか声が出せませんでした。
(本当に殺されると思ったなんて、こんなの初めてだよー)
早く聞きたい。
でも、この人の機嫌を損ねたら聞けないかも知れない。
だって、気分屋みたいです。シバさん。
ウシオさんがいなくなったのも突然でしたし、何か気にくわない事でもあったのかな?