しょっくちゅ~
「だから~お兄ちゃんはもうお姉ちゃんなの!」
ぷく~っと頬を膨らませながら妹のはるかは言う。
「いや、でも僕はこの前まで男だったんだから…」
今の現状を認めたくない僕は何度も同じことを繰り返したがついにはるかがしびれを切らしていた。
「あのね?おねえちゃんは新種の食中毒で女の子になっちゃったの!春男くんだって女の子になっちゃったでしょ?」
「…」
僕以外にもこうなっているので何も言い返せない。
どうしてこうなったんだろう?
1月の上旬、僕らの中学を含めた静岡県浜松市内の学校で食中毒が発生した。
しょっくちゅ~
作:おれんじじゅ~ちゅ
一月の上旬に起きた食中毒は最初、ノロウイルスだと思われていた。
だけど、そいつは新種でぱっと見た症状はノロウイルスに近いのだが違う。
“感染すると若い男だけが女になる”のだ。
もちろん女にも嘔吐などの症状は出る。
だけど、どうして男だけがこうなるのか?
当初学者たちも疑問であったが、調査の結果、TS菌がイン食物を媒介に体内へ侵入し、20前の男性の性染色体“Y染色体”を女性の性染色体“X染色体”に変異させてしまうため起こる現象であることがわかった。
嘔吐等はTS菌が体内に入った際の拒否反応であった。
「はるひくん、気分はどうだい?」
担当の若い石田という医師が訪ねてくる。
「変な感じです」
「そうだよね…。今の君の肉体は完璧に女性だ。その女性の体に男の心っていうのはかなり負担が大きい。性同一性障害って聞いたことないかい?」
「…あります」
「君はまさにその状態だ。なにしろ未知の病気だからね。これからどうなるかまったく予想がつかないよ。どうして君たちの給食に紛れ込んだのか…なぜこんなことになっているのか見当もつかないよ…」
医師は困った表情を浮かべるばかりだった。
「元には…戻れませんよね…」
「おそらくは…」
「ですよね…」
「なにしろDNA自体が女性のものになっているからね…それに君たちの体には女性としての器官が備わってしまっている」
先生の言っていることはちんぷんかんぷんだったが僕が男に戻れることはないということだけはわかった。
でもどうしろっていうんだ?14年男としてやってきていきなり女になるんだ。今までの自分が否定されているみたいだ。
ほかのみんなはどうなんだろうか?春男は…あいつは与論湖でいるか…前から女の子になりたいって言ってたっけ…。
西島は?前橋は?あいつらどうだろう?
僕のように受け入れられて以内に違いない。
やがて一ヶ月が過ぎ、更なる研究が進んでいった中で、変化が起きたものもいた。
その変化とは“心が女になっている”ということだ。
患者たちは次々と心の女性化が始まっていた。
これは担当医の石田先生が言っていたことだが、脳の視床下部前葉というところから性腺刺激ホルモンが卵巣を刺激し、卵胞からエストロジェンというホルモンが出された結果、体ともども女性化が始まっていったのだ。
体はどんどん女らしくなっていき僕の場合少し遅いようだが、第二次性徴で胸が少し出てきていた。
友人たちは既に心まで女性化しており、女性としてのカウンセリングを受けているものもいた。
「僕もあいつらみたいになるのかな…」
「例外ではないだろうね。君も女性としての成長している以上、そうなるだろう」
「みんなに会ってみたいな…」
「会ってみるかい?」
翌日には先生の計らいでみんなと顔を合わせることができた。
「うお?中島?」
「え?杉村か?」
「変わったな…」
「だな…」
それぞれがお互いに驚いている中僕もその中に混ざっていった。
「や、やぁ…」
「あら?志藤さん?」
「う、うん…えっとだれだっけ?」
「いやね~、私よ私!西島よ」
「「「西島!?」」」
西島と名乗る女はかなりの美人だった。
「おい、聞いたか?あれが西島だってよ!?」
「ああ。確かアイツ柔道部所属でガタイ良かったのにな…」
「なかなか可愛いな…」
皆口々に言う。
「変わるもんだな…」
「ああ。井ノ原なんか“あーっ!!俺の筋肉がないっ!!”って叫んでたもんな。そんな中あいつはいち早く変わっちまったんだな…」
「俺たちもああなるのか…。あれ?じゃあその井ノ原は?」
「あそこ」
一人が指さした方向を見ると小柄な女の子が縮こまっていた。
「「「哀れ…」」」
その場の全員が声を揃えていったのだった。
当然本人に聞こえており“筋肉がない…筋肉はどこ?”というのを繰り返すばかりである。
「とにかくね。私は変わったの」
不意に西島話し出した。
「最初は“女なんぞになるかーっ”って叫んでたの。でもね、最近ファッションに目覚めたの。女の子ってすごいのよ。何にでも変身できるんだから♪だからね、みんなも女の子ライフを満喫しましょうよ♪」
確かに女の子はみんな可愛い。可愛い服だってある。それを来てみたいと少しだけ思ってしまう。
ってあれ?
それはまずくないか!?
あれ?行った僕はどうしたと言うんだ?なんで羨ましいって思ったんだ?
これが心の女性化ってやつなのか!?
「ねぇハルヒ」
「なに?」
「女の子ライフしようよ♪」
西島の誘惑に負けるかっ!!
「ど…どうしよっかな」
あれぇええええええええええええ!?
何言ってんの!?ねぇ?僕何言っちゃってるの!?
どうしよかなって何!?
「ねぇ!みんなもそうしようよ!どうせ男の子に戻れないのならさ、女の子ライフしよっ♪」
「俺…ううん、私…女の子なろうかな」
「うん…私もそうしようかな…」
周りはどんどん汚染されていく。
そしていつの間にか僕だけになってしまった…。
「「「ね?ハルヒ」」」
全員が僕を取り囲んで口々に女の子ライフが楽しみだのなんだの言ってくる。
それがだんだんなにかの呪文のように聞こえてきて…
「私も女の子ライフを楽しみたい♪」
私の中にあった何かが弾け飛び、完璧に女の子の心になっていた。
それから一ヶ月後、無事初潮を迎えは私は改めて自分が女の子になったことを感じさせられた。
「ハルヒさん、短い付き合いでしたが元気でね」
「はい、先生♪」
私たちは握手をした。
「あ、そうだ!先生これ…」
私はポケットに忍ばせていた小さな箱を渡した。
「?」
先生はわけがわからないといった表情でこちらを見る。
「開けてみてからのお楽しみ♪」
別れ際、私は先生の頬にそっとキスをした。
「というのが私の経験とパパとの出会いね♪」
「…」
少女は開いた口がふさがらなかった。
「だからね?晴美も女の子ライフしちゃいなよ♪」
「僕はママのようになるもんかっ!!」
●あとがき●
どうも~おれんじじゅ~ちゅです。お久しぶりです。
ほんとね、久々の投稿です。
最近思うのですが、一年に2作くらいしか書いてないんじゃね?
ということです。
まぁ、国家試験勉強で忙しいってのもあるんですけどね…。
こんなの書いてていいのかって?
うん、ダメだねw
試験まだ終わってませんしw
さて、今回のネタは先日起きた静岡県浜松市の小中学校で起きた食中毒を使わせていただきました。
私も去年まで浜松市に住んでいたので割と他人事ではないなと思うわけです。
私の母校には私たち大人以外にも小中学生がいたりとちょっと特殊でしたので、給食がありました。
なので少し心配でした。特に何も言ってなかったので大丈夫でしょうw
おっと、長くなってしまいましたね。
あとがきのくせに長々と書いてしまい申し訳ありませんでした。
今回も読んでいただきありがとうございました。