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決闘の剣音は、暗躍を助ける

ギリシャの神話の英雄の子孫との対決

「挑戦状?」

 首を傾げる智代。

 較も呆れた顔をする。

「そうなんだよ。こんな大会で挑戦状なんてナンセンスな物が送られてくるなんて思ってなかったよ」

「いいじゃん。正々堂々戦おうって言うんだろ受けてやろう」

 良美が満足そうに言うと雷華が手を横に振る。

「絶対、罠に決まってるだろう」

「十中八九そうだろうね。でも罠を張っている場所にこそ隙が生まれやすいんだよ」

 較の言葉に優子が厳しい顔をする。

「危険じゃないですか?」

「罠だったら、そこから敵の作戦を探れるから対応策を考えやすいから、安全性は、上がる筈。一番怖いのは、イレギュラー。例えば、何の脈力もなく、変な指輪を着けたり、淫虫の魔王に憑かれるとかね」

 智代と優子が視線をそらす中、エアーナ。

「それでも敵地で対戦するのは、不利だと思います」

 良美が拳を握り締めて言う。

「何を言っているの、それだから良いんじゃない!」

 良美の鶴の一声で、挑戦状の送り主、『英雄の血』が待つアテナに向かう事になるのであった。



「挑戦状を送ったというのは、本当ですか?」

 アテナの『英雄の血』が作った秘境の神殿で、線が細い参謀、オディッセオの言葉に彫像の様な体型を持つ、リーダー、ヘラクレスが答える。

「そうだ。我々は、神々の血を引く埃高き者。相手が何者であろうと正面から戦い打ち破るのみ」

「その通りだ! 我らの力を持ってすればどんな相手にも負けない!」

 ヘラクレスと似た筋肉質の戦士、アキレスが自信満々に告げると舌打ちするオディッセオ。

「相手は、人外の八刃。その上、淫虫の魔王を宿す者までいると言うのですよ!」

 ヘラクレスは、揺るがない瞳で答える。

「こちらも神の血を引き、人を超える者。負けは、しない」

 オディッセオが苛立ちながらもその場を離れる。

「ヘラクレス、あの男は、英雄の血に相応しくない」

 アキレスの言葉にヘラクレスが首を横に振る。

「あれも神の血を引く者。我々英雄の血は、人在らざる者の集まり。今は、表より隠れて生きねば成らぬが、神の血を引く者の責とし、人類を導く義務がある。その為には、更なる力が必要だ。その為にオディッセオが提案したとおり、この大会は、有益なのだ」

 悔しそうな顔をするアキレス。

「我々に十分な力があれば、この様なただの人間が主催する大会などに参加せずに済むというのに」

「今は、雌伏の時、この屈辱を乗り越え、栄光有る未来を掴む」

 ヘラクレスの言葉に強く頷くアキレスであった。



 較達は、英雄の血が指定した、決闘の場にやって来た。

「やって来たよ。それで勝負は、どうするの?」

 較の言葉にヘラクレスとアキレスが前に出る。

「我々、二人が相手をする。そちらは、何人がかりでも構わないぞ」

 ヘラクレスの言葉に、良美が不敵な笑みを浮かべる。

「良い心掛けだ。ヤヤ、あたしと二人、二対二でやろう」

 較が頷く。

「それがベストだね」

 会場にあがる較。

「ちょっと待て! ヨシミ=ダイモンに手を出せば、その組織が潰されるという話を聞いているぞ!」

 オディッセオの言葉に較が苦笑する。

「安心して良いよ。策略を企んだ時だけだよ。正面から戦った時は、関係ない」

「元より、その様な物は、恐れぬ!」

 アキレスが突撃する。

『アテナ!』

 較がその突撃を正面から受け止める。

「神の血の力を知れ!」

 ヘラクレスがその剣を振り下ろすと天から雷撃が落ちる。

 それは、アキレスに直撃し、接触した較にもダメージを与えた。

「嘘、仲間を犠牲にした!」

 良美が驚きと反して、アキレスは、無事だった。

「我がアキレスの名は、この不死の体にある。神話と異なり、我が体は、老い以外の全ての攻撃が通じぬがな」

「なるほどね。確かに便利な力だね。でも、そんなんじゃあちきには、勝てないよ。『ウー』」

 冷気がアキレスを覆う。

「通じぬと言うのが解らぬのか!」

 アキレスの気合で、冷気が弾き飛ばされた時、較は、既に接近していた。

『ビシュヌ』

 較が触れた足が以上成長する。

「何を!」

 攻撃を繰り出しながら叫ぶアキレスに較が避けながら答える。

「自分で弱点を言ったじゃない。老いだけは、防げ無いって。詰まり、成長は、するって事だよ」

 追撃しようとしたアキレスだが、成長を加速された足が地面を踏み砕き、倒れる。

「因みに飢えは、しのげるかな? 『ビシュヌ』」

 倒れたアキレスの足を更に成長させる較。

「させぬ!」

 ヘラクレスの弓矢が放たれ、紙一重でかわす較だったが、衝撃波で吹き飛ばされる。

『イカロス』

 空中で体勢を整え、軟着陸する。

 片足だけ異常成長し、他の場所が痩せ始めているアキレスが呻く。

「まさか、我が力をこんな方法で打ち破るとは……」

「相手も人外、一筋縄では、いかないようだ。しかし、勝つのは、我らだ!」

 次々と矢を放つヘラクレス。

 較は、地面に足をめり込ませて迎え撃つ。

『バハムートホーンサークル!』

 両手での気を籠めた回転肘撃ちが矢を弾く。

「そこだ!」

 成長した足で蹴りこむアキレスに失笑する較。

「力だけの存在は、哀しいね」

 正面から蹴りを受けてそのまま吹き飛ばされる較。

「何が言いたい!」

 アキレスが叫んだ時、その体勢が崩れた。

「どういうことだ?」

 困惑するアキレスに地面からの脱出にアキレスの蹴りを利用した較が、間接がおかしくなったアキレスの足を指差して言う。

「蹴りと言うのは、実際に蹴る足より、軸足が大切なの。そのバランスがとれてない状態で、放った蹴りは、自分の体にダメージを与えた。これも攻撃じゃないから有効だったみたいだね」

 歯軋りをするアキレス。

「下がっていろ。後は、私がやる」

 剣を持って前に出るヘラクレス。

 豪剣を体現した様な攻撃を較は、慎重にかわしていく。

 ヘラクレスの剣は、衝撃波を発生しているが、較は、その影響を受けていない。

「どんな細工をした?」

 ヘラクレスの問い掛けに較は、あっさりと答えた。

「難しい事じゃない。衝撃波は、所詮余波でしかない。意志力で無効化するのは、簡単なんだよ」

 その言葉にヘラクレスは、衝撃波にも己の力を籠めようとした。

「それが貴方達の根本的な弱点。人を大いに超える能力ゆえに、技に磨きが無い。『オーディーンカタナ』」

 ヘラクレスの剣が較の手刀で折られる。

「まだだ!」

 殴りかかるヘラクレスの腕を掴み相手の力を使って投げる較。

 地面に叩きつけられるヘラクレスだったがすぐさま起き上がりつかみかかる。

 較は、あっさり掴まれた。

「我が強力を思い知れ!」

 締め上げるヘラクレスに較は、絞り込んだ気を籠めた髪の毛をその両肩に突き刺す。

『ベルゼブブクラッシュ』

「……!」

 言葉にならない悲鳴を上げて倒れるヘラクレス。

 地面に悠然と立つ較。

 その様子を見て智代が感心した様に言う。

「ヤヤの力って圧倒的だね」

 雷華が苦笑する。

「多分、単純な力じゃ相手の方が上回っている。だが、ヤヤは、元々神や魔王って絶望的な力差を持つ者と戦うのを専門にしてるんだ。力だけじゃ勝てないんだよ」

 悔しそうな顔をするヘラクレスとアキレス。

「勝負ありで良い?」

「まだだ!」

 諦めないヘラクレス。

「俺は、まだ戦える!」

 アキレスが腕の力だけで較に飛びかかる。

『ナーガ』

 較の術で、地面が盛り上がり、アキレスの折れた足を掴み、悲鳴をあげさせる。

『そこまでよ。この子に毒を撃ち込んだわ』

 振り返ると智代にチュシュが爪を突き刺して居た。

「そういえば、あんたが生きていたんだっけ。このタイミングでご主人様の復讐?」

 良美が不機嫌そうに言うとチュシュが感に触る笑い声を上げる。

『ニャハハハハ! 何時までも負けた人間の下に居るわけ無いでしょ。ねえ、新しいご主人様。これであたしの使えるって解ったでしょ?』

 答えたのは、オディッセオだった。

「良いだろう。我が組織にお前の席を作ろう」

「オディッセオ! 貴様、我らの誇りを踏みにじるつもりか!」

 ヘラクレスが叫ぶとオディッセオが肩をすくめる。

「神々の血? そんな物は、幻想ですよ。単なる異常能力者の子孫それが我々なんでしょうね。今更、人を導くなんて馬鹿な事を考えているは、貴方達くらいですよ。多くの者が私の意見に賛同してくれています。闇の世界で一大勢力を手にして、莫大な富を手にするという計画にね」

「そんな訳がない!」

 アキレスが反論するがオディッセオが見下す。

「お前たちみたいに巨大な力を持っていればそんな夢みたいな事を考えられるだろう。しかし、私の様な僅かな力しか持たない者は、その力をどうやって金に結びつけるかが全てなのですよ」

 ヘラクレスとアキレスがオディッセオを睨みつける中、較が冷めた目でオディッセオを見る。

「人質を取ってパーツを寄越せって言うの?」

「それもありますが、この大会が終わるまで色々協力してもらいますよ」

 自分の優位を疑わないオディッセオ。

 隙を突かれた雷華も悔しそうにし、優子は、不安そうな顔をする中、良美が言う。

「智代、ここは、自分の身を犠牲してもいいから戦ってって言う場面だぞ」

「誰がそんな事を言うか!」

 智代が叫ぶ。

「ふざけるな!」

 オディッセオが怒鳴る中、較がゆっくりとオディッセオに近づいて言う。

「あのさ、もしかして自分が人質をとっていると思ってる?」

「そうであろう、あいつは、私の僕なのだからな!」

 オディッセオが胸を張って宣言する中、較が短い呪文を唱えた。

『ギャー!』

 地面を転げまわるチュシュを踏みつける較。

「残念だけど、あんたを縛っていた術は、まだ健在。マリアの残した資料からもう調査済みなんだよ。さて、貴女の主人は、誰だと思う?」

 チュシュが必死に叫ぶ。

『貴女こそ、我が主人です。解毒剤もここにあります!』

 差し出された解毒剤を確認し較が智代を渡す。

「一応導きの指輪で確認してから使って」

 較が近づくとオディッセオは、逃げ出す。

「許してくれ!」

 その逃げた先には、ヘラクレスが居た。

「ヘラクレス様、どうか私をお助け下さい!」

 無様な哀願するオディッセオをアキレスが睨む。

「我らの誇りを汚したそいつを殺せ!」

 しかし、ヘラクレスは、較の方を向いて言う。

「我々の負けだ。今回の事は、私の命で償わせて貰いたい」

 意外な言葉にアキレスもオディッセオも驚く。

「どうして裏切り者を庇うのだ?」

 較の問い掛けにヘラクレスが辛そうな顔で答える。

「それでも、この者の英雄の血の一員なのだ。私は、間違っていたのかもしれない。埃を重んじ過ぎ、我らの一員の中にこの様な者が居る事も気付かなかった。今一度、自分達を見直す必要があるのかもしれない。これがパーツだ」

 差し出されたパーツを受け取り較が言う。

「智代の事は、こっちの油断。そっちが気にする問題じゃないですよ。ただし、この大会に関わるのは、止めてください。この化け猫を監視において置きますから」

 チュシュをオディッセオの上に載せる。

「ちゃんと仕事しないと、始末するよ」

『誠心誠意、やりとげさせてもらいます!』

 即答するチュシュに良美が胡散臭げに言う。

「いまいち信用できない」

 苦笑する較達であった。



 そんな戦いをゴーレムの目を通して見ていた者が居た。

「リリスよ、お前は、あの娘の力をどう見る?」

 男の言葉に傍に控えていた少女が答える。

「意志力による、ことわり操作、神器なしにそれを行えるというのは、特別な存在だと認識します」

「その通りだ。しかし、あの力もまたお前にコピーする事が出来る筈だ。行くが良い」

 男の言葉に少女が動き始めた。

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