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戦いの開始を告げる鐘が鳴る

世界各地の組織と戦います

「復活の宝玉?」

 元気娘、大門ダイモン良美ヨシミノの疑問系の言葉に頷くもう高三なのに小学生並みの背のポニーテール少女、白風シラカゼクラベが頷く。

「いい加減、何とかしないといけないと思ってたんだよ」

「導きの指輪って本当に便利よね、置き忘れた携帯が直ぐに見つかったんだから」

 暢気に話す較達の中学時代からの親友で、魂を代償に装着者を導く指輪の持ち主、緑川ミドリカワ智代トモヨを指差して較が言う。

「洒落抜きで、魂を使い果たして死に掛けないからね!」

 切れかけている較を宥めながら智代と同じ親友で、元委員長鈴木優子ユウコが言う。

「それって貴重なアイテムじゃないの?」

 較が強く頷く。

「滅茶苦茶貴重なアイテム。間違いなくこの世界には、一つしかないよ。何せ八百刃様と同格の神の力が宿っているって話だから」

「スクランブルエッグと交換したこれと同じなんだ」

 良美の言葉にやはり親友で元吸血鬼ハンターの赤芽アカメ雷華ライカが気の抜けた顔をする。

「何かいきなり、大した事が無い気がしてきたぞ」

 較が遠い目をする。

「その事実は、忘れて。とにかく、それが手に入れば、智代の導きの指輪で消費した魂って言うか寿命も復活させられるから。頑張って手に入れることにしたの」

「それで、あたし達が手伝うの?」

 優子が複雑そうな顔をすると較が首を横に振る。

「逆だよ、ヨシが伝えておけと言ったから連絡したけど、手伝わなくていい。今回の事は、あちきが個人的になんとかするから」

「どうして! あたしの事なんだからあたし達が手伝うのは、当然じゃん!」

 智代の発言に雷華が半眼になる。

「あたし達には、あたしも入ってるのか?」

 智代が頷く。

「当然でしょ。友達なんだから」

 良美も頷く。

「そういうこと。ヤヤは、嫌がっているけど、全員参加ね」

「良美には、何度も言ったけど、今回の事は、八刃の力を借りられないの。だから、みんなの安全は、保障できないから駄目だよ」

 較の発言にエアーナが驚く。

「どういうこと?」

 周囲からの視線に負けて較が説明を始める。

「智代の回復手段は、前々から探していたの。復活の宝玉は、その中でも有効な手段だからかなり以前から、なんとか手に入れようと色々と策略をめぐらせてた。その結果、今回の大会の商品になる事が解ったんだけど、参加の為に出された条件が八刃の協力なしって事なんだよ。そんな訳だからあちき個人の力でなんとかしなくちゃいけないから余力は、全く無い。だから皆には、参加して欲しくないの」

 雷華が頭を掻く。

「ヤヤ、お前、馬鹿だろう?」

 その言葉に較が周りの友達の顔を見て頷く。

「そうかもしれない。でも、嘘を通じない相手が居るんだよ」

 良美が笑う。

「長い付き合いだもんな。それより、危険だから手伝わないか?」

 肩をすくめるハーフの少女、エアーナ=空天クウテン

「そんな事が出来るわけないじゃない。あたしも手伝うよ」

 雷華も肩をすくめて言う。

「智代の魂が減ったのにまるっきし無関係って訳じゃないからな」

 ただ、優子だけが躊躇する。

「でも、戦えないあたし達が参加しても足手まといになるだけじゃないかしら?」

 良美が首を横に振る。

「大丈夫、ヤヤには、そのくらいが丁度良いんだよ」

「そうそう、独りで暴走したあげく自爆なんて絶対にさせないよ」

 智代も同意する。

 大きなため息を吐く較。

「……皆も馬鹿なんだから」



 数日後、較達は、とある新築に来ていた。

「ここは、あちきが将来自分の店を作ろうと考えている物権。今回の事では、ここが本拠地になるよ」

 較の質問に智代が手を上げる。

「それで、結局どんな大会なの」

 較が奥に鎮座した円盤のパーツを指差す。

「十二個に分割した円盤のパーツを集め、完成させたチームが勝利。各チームが参加の為に提出したアイテムを総取り出来る事になってるよ」

 専用の土台の円盤型の窪みに一つだけパーツが嵌っているのを見て、雷華が言う。

「なるほど、単純なルールだけど、それって人数が多いほうが格段有利なんじゃないか?」

 較があっさり頷く。

「だから、今回は、思いっきり不利なんだよ。正直、パーツをもって転戦を考えてたんだけど、パーツは、二十四時間以上土台に嵌っていないと、契約魔法で、その時一番多いチームの土台に転送される事になってるから、駄目なんだよ」

「面倒なルールだな」

 良美のぼやきに優子が言う。

「そうでもしないと、パーツをもって、雲隠れする人が居るって事ですね」

 較が頷く。

「その可能性が高いって事でしょうね。そんな訳だから、パーツのある場所は、特定されてる。あちきとしては、最初は、こっちのパーツを奪われても良いから攻めに徹するつもり」

「それで、大会の開始は、何時からですか?」

 土台に組み込まれた時計を指差す較。

「世界標準時間で零時丁度からだよ」

「まだ、時間有るね、食事作って」

 良美の気楽な言葉に、諦めきった顔をして較が台所に向かう。

「あたしも手伝うわ」

 優子も台所に向かうのであった。



 大会用に買い込んだ大量の食料から、豪勢な夕食を作り食事が始まった。

「どんな人達と戦うのですか?」

 本場の鳥を作った簡易北京ダックを包みながらエアーナが聞くと較が壁に設定された画面に情報を映しだす。

「出場チームは、あちき達を含めて全十二チーム」

「凄い可愛い男の娘!」

 ウインナーを食べていた智代が目を輝かせる。

「彼は、チーム『花鳥風月』の代表、アラタ。噂では、六極神の一柱に強い守護を受けているらしいよ。この花鳥風月は、日本古代信仰系の組織で、祈祷等を得意としている。八雲地方に土台を設置してる」

 較の答えを聞きながら、良美は、ビーフステーキを切りながら言う。

「その隣のいかにもマッドサイエンティストの爺さんは?」

「そっちは、アメリカのシリコンバレーに土台を設置してる『鋼鉄の軍隊』のブレイン、ミハイル、見た目通りのマッドサイエンティスト。あちきの集めた情報だと、本来ならオカルト業界には、深く関わらない組織なのに、新兵器のテストの為だけに参加したってかなり危ない人だよ」

 較の呆れた顔をするのを見ながらこの頃体重を気にしている優子が肉から視線を逸らしながら尋ねる。

「小学生くらいの黒髪の女の子も居るんですけど、こんな子供とも戦うんですか?」

 ため息を吐く較。

「その人は、今大会の中でも厄介な人の一人、数千年生きてる仙女。はっきりいって、反則クラスの実力者だよ。『封神演義』ってチームで上海に土台を設置してる」

「こんな小さい子が……」

 信じられ無そうな顔をする優子に苦笑する雷華。

「オカルト業界の奴等の見た目なんて判断基準にもならないもんだぜ。それよりこの生意気そうな黒人は、誰だ」

「プリンスソロモン、エジプトにある『ソロモンの王冠』の主催者。自称ソロモン王の子孫らしいよ」

 較の投げやりの答えに首を傾げていたエアーナが北京ダックを飲み込んでから言う。

「本物じゃないんですか?」

 眉に唾を塗る較。

「オカルト業界には、自称ソロモン王の子孫なんて掃いて捨てる程いるよ。それより気になるのは、その隣の美少女、ドイツのベルリンに土台を設置している『魔女の森』の長、マリアって言えば、転生を繰り返し、不死を獲得した魔女って噂だからね。面倒な相手だよ」

 良美が地中海風海鮮スープを啜りながら言う。

「所でさ、このヘラクレスって漫画とかでよく見るけど、本物?」

「こっちも自称で、歴史だけは、古いギリシャのアテナに台座を設置してる『英雄の血統』。映画にもなった半神、デミゴット、英雄と呼ばれる人達の子孫と言ってる。このいかにものマッチョがヘラクレスって名乗るその子孫らしいよ」

 較が空になった皿をどかすのを手伝いながら優子が質問する。

「このパラケルススって何か聞いた事ある名前だけど、その人も子孫なの?」

「スイスのバーゼルに土台を設置してる『賢者の石』の青年だよね。実際問題それすらも解ってない。ただ、業界では、その名前を名乗るのに相応しい錬金術の技術を持っている人物とだけしられている」

 較がガスコンロに火を点けて、締めの雑炊の準備を開始するとそれを待ちながら智代が質問する。

「ロンドンに台座を設置してるってなってる『英国の英知』って、竜魔玉の時に関わっていた『女王の王勺』に似たような物?」

 較は、ご飯を入れながら頷く。

「歴史的には、英国でも最古の部類になるよ。ただし、あそこと違って第一線から退いた洛陽の組織。このエリザベスってお婆さんも、もう長くないって話だね」

 出来上がった雑炊を受け取りながら雷華が言う。

「こっちにも老人が居るが、似たような物か?」

「インティワタナさん、マチュ・ピチュに台座を設置している『老いた峰』の所は、もっと酷い。歴史だけは、古いけどオカルト組織としての体制も維持していない。どうして今回の大会に出ているのかも不思議な組織だよ」

 首を傾げる較にエアーナが眉を寄せる。

「それを言うんでしたら、情報を見ただけでは、モスクワに台座を設置している『凍える息』って組織なんてオカルト組織ですらないじゃないですか? このベッケンって男性は、何を考えているんですかね?」

 較が頬をかく。

「愛国者集団。戦争がし辛いこの時代、自分達の力をこんな事に使ってでも祖国の発展の為に貢献しよって自己犠牲者なんじゃない」

 雑炊も食べ終えた良美が言う。

「それにしてもこのニューヨークに土台を設置している『神の光明』の代表がキリストって名前なのが物凄く大胆だよな?」

 テーブルの上の片づけを始めながら較が真剣な顔で答える。

「それだよね、本当だったらとてもじゃないけどそんな宗教団体がここまで大きくなれるわけないのに、大会に参加出来るほどの成長をしている。今回の参加チーム中、一番謎が多い奴らよ」

「とにかく、こいつ等からパーツを奪って、円盤を完成させなきゃいけないんだろ?」

 良美の言葉に較が告げる。

「最終確認だけど、みんな本当に良いんだね?」

 智代があっさり頷く。

「当然。あたしの為に戦うのにあたしが参加しないわけには、いかないでしょ」

 雷華が苦笑しながら言う。

「今更だぜ」

 真剣な顔をするエアーナ。

「何が出来るかわかりませんが頑張ります」

 優子も同調する。

「あたし達が出来る全力で力を貸すわ」

 締めに良美が手を差し出すと、全員が手を重ねる。

「それじゃ、チーム『良美とその仲間』、勝利するぞ」

 空気が固まる。

「ちょっと待て、その名前に決めたの誰だ!」

 雷華の質問に較が視線を逸らす。

「聞く必要ある?」

「絶対にチェンジよ!」

 智代がクレームをあげるが良美が胸を張って言う。

「もう、変更出来ないよ。頑張るのだな、あたしの仲間達よ!」

「「「ヨシ!」」」

 全員から怒鳴れる良美であった。



 翌朝、円盤の土台の時計が零時を示そうとしていた。

「所で、ここにも敵が来るって事みたいだけど、近所の人が巻き込まれない?」

 優子の質問に較が告げる。

「この近所は、八刃のとある計画の準備区域だから一般人は、居ないから大丈夫」

「でも手伝っては、くれないんですよね?」

 エアーナの言葉に良美が言う。

「そんなのは、必要ない。あたし達で勝つぞ!」

 何故か誰も答えない。

「まだ、名前の事を怒っているのか?」

 視線を合わせない一同であった。

 そして土台から鐘の音が響き渡ると同時に銃撃音鳴り響く。

「早速だね。軽く片付けてくる」

 較が正面入り口から出ると銃器で武装した集団が居た。

『手加減するな!』

 号令と共に無数の銃弾と砲弾が較に迫る。

『カーバンクルメタルミラー』

 全ての攻撃が進行方向を百八十度反転して、戻っていき、大惨事を起こす。

「これで死人が出てないんだから大したもんだよな」

 較の隣良美が立つ。

『ストップだ! ウエイトオブアース、ヨシミには、傷一つ負わせるな。負わせたら最後、組織が潰されるぞ!』

 較本人に攻撃するよりタブー扱いされる良美であった。

 同じ頃、中では、中で戦いが始まっていた。

『我が心を喰らい、魔を討つ刃を生み出せ、心光刀』

 土台をガードする雷華が、心の力を光の刃にする心光刀でくの一のクナイを弾く。

「雷華、頑張って!」

 優子の傍に退避している智代が応援すると、くの一と一緒に来ていた忍者達が手裏剣を構える。

「お前らから始末する!」

 放たれる手裏剣。

「キャー!」

 やはり優子の傍に退避していたエアーナが反射的に目をつぶる中、手裏剣が侵食されていく。

『私が宿る肉体を傷つける者は、許しません』

 優子の口から、優子でない声、優子に宿る異界の存在、淫虫インチュウの魔王の声が漏れ出す。

「逃げろ! そいつは、『良美とその仲間』の中でも最悪中の最悪、淫虫の魔王を宿す者だ!」

 くの一の叫びが間に合わない、手裏剣が変化した蝶が持ち主達を侵食する。

「一旦引くぞ!」

 くの一の指示と同時に残った忍者達が苦しむ仲間に当て身を食らわせて意識を失わせ、抱き上げて撤退していく。

「あの名前だけは、どうにかならないか?」

 雷華が忌々しげに告げる中、外の始末を終えた較がやってくる。

「そこは、諦めるしか無いよ。とにかく戦いが始まったよ」

「絶対に勝とうな!」

 締めようとする良美だが、無視される。

「優子、頼りにしてるよ」

 智代の言葉に嫌そうな顔をする優子。

「あたしは、あまり中の人の力を使いたくないんだけどね」

「今回の対決で、方策は、決まったね。雷華達でここの防衛をして、あちきが攻めに入るって事で」

 較の提案に雷華達が頷く。

「問題なし」

「あのーあたしの言葉を聞いてる?」

 良美が必死に訴えるが、今回ばかりは、完全無視されるのであった。

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