仮想と現実の境界線Ⅳ
「っと、喜んでるとこ悪いけど嘘ついてた罰として後でお使い頼むからな。」
「お使いぐらい余裕だよ!むしろ、ホントにそれだけで良いの?」
よし!かかった!
「ああ、お使いだ。内容は後で話すよ。それで、今から話すのはさっきお前を呼びに行った理由でもある今後の事についてだ。」
「うん。分かってる。・・・やっぱり、あの時の宣言って本当なのかな・・・?」
「だろうな。チュートリアルやイベントであれはいくらなんでも過剰演出だし、何よりも今の俺達の体が現実のものとほとんど変わらないものになっている事がいい証拠だ。」
「はぁ・・。分かってはいたけど実際にそうやって言われてようやく実感が出てきたよ。」
「まぁ、それは俺も同じだよ。こうして真昼に話してる内に段々実感が出てきた。正直、こうして体が変化してなかったら今でもあの時の宣言を信じきれずにいたと思うし」
そう言ってから気付いたが、真昼って顔の造形以外ほとんど変わってないんだな。身長もそれほど伸び縮みしていないし、それ以外だと強いて言えば腰に丸みを帯びているぐらいだ。
・・・ゆったりした服を着てるって事もあるのだろうが、男装していた時とほとんど胸の大きさが変わって、っ!?
「じ~~~~~…っ」
「んんっ、どうかしたのか?」
「・・・。今失礼な事考えてた。咳払いしたって誤魔化せないよ。」
「あー、いや、そんなことは無いぞ。うん。」
まさか思考が読まれるとは、これが女の勘というやつか。恐ろしい。
「あっ、そういやお使いの内容まだ言ってなかったよな。」
「・・むぅ。うん、まだ聞いてないね。」
ほっ、なんとかなったか。
「おう、そんで肝心のお使いだけど、真昼につてのある、戦力になりそうなヤツを集めてほしいんだ。数は一人でいいけど何よりも信頼出来るヤツを頼む。」
「えーっと、つてのある人って事になると、βでの知り合いってことになるよ。それに、これは夜にとってはあんまり嬉しくないだろうけどほとんど女の人なんだよね。」
「別に、この際あと一人や二人ぐらい、どうということはないさ。βの時みたいに一人で無茶苦茶やらかす訳にもいかなくなったしな。何より、今は信頼できる戦力がほしいんだ。」
俺がそういうと何故か真昼が残念そうな顔をする。その顔はどちらかというと俺がするはずだと思うのだが。
「俺は俺でしばらく動こうと思う。βの時のやつらともフレンド登録しなおして連絡手段を作っておきたいしな。その上で俺も一人連れてこようと思うんだが・・、良いか?」
フレンド登録の機能を使ってお互いに記録したプレイヤーはメールのようなものでやり取り出来るようになる。その他にも色々なコマンドを省略して使う事が出来たりと、何かと便利な機能だ。
「まぁ、良いよ。だって・・・死んじゃうんでしょ、この世界で死ぬと。」
一瞬の間のあとに続いたその言葉は、今の俺達がどれ程危ない場所に立っているのかを嫌がおうにも意識させる。
「だから、なんだよね。パーティーメンバーを増やすのは。」
「ああ、その通りだ。欲を言えば真昼には同じ後衛職、特に支援魔法型の人を連れてきてもらえると嬉しい。俺は前衛、斥候職のヤツにあたりをつけるつもりでいる。」
「・・うん、なるほどね。確かに今あげた二人に火力魔法職の僕にダメージディーラーの夜がいれば、防御面に不安は残るけど高速殲滅型のパーティーとしてなら充分通用するだろうね。」
そう、まさにその通りだ。だからこそこの四人という数にに意味がある。これ以下になればパーティー要員が偏って機能が著しく低下するし、これ以上の人数になれば経験値の総量が足らなくなる。
「じゃ、別行動する前にステータスぐらいは確認しとこう。」
《真夜中の猫》
《Lv. 5》
称号:なし
所持スキル
【ジャンプ】【ステップ】【剣技熟練Ⅰ】【身体能力上昇】【聴力強化】
所持アビリティ
【スラッシュ】【縦斬り】【スカイラン】
《真昼の猫》
《Lv. 4》
称号:なし
所持スキル
【魔力値上昇】【魔法才能】【魔力操作Ⅰ】【雷属性Ⅰ】【光属性Ⅰ】
所持アビリティ
【サンダーボール】【ホーリー】