仮想と現実の境界線Ⅰ
中間テスト真っ最中につき文量少な目です。申し訳ない。m(__)m更新無いよりはましかな、という判断に基づく赤点必至の投稿です。←
―――幸い、宿をとることは出来た。
元々始まりの町ということもあり、宿の数が多かったのもあるが、やはり宿をとれた大きな要因は俺達が西区の宿場町の方ではなく東区のプレイヤーズハウスの辺りの宿をめざしたからだろう。
プレイヤーズハウスは主に生産職のプレイヤーが自分の工房や店舗を持つための物だ。一応、プレイヤーが宿ではなく自分用の家としてかう場合もあるがその場合莫大な金がかかるのでほとんどない。
金額が高くなる理由としては、一般プレイヤーは基本宿を使うことを想定されているのでプレイヤーズハウスの内装は生産向け、店舗向けのものがほとんどを占めるからだ。
これを普通に住めるようにするには購入オプションで内装変更をする必用が出てくる。
それにかかる費用がバカ高いのだ。
では、生産職のプレイヤー達はいちいち西区の宿場から町を横断して自らの店舗や鍛治場までを行き来しているのかと言えば、そうではない。
宿場町と比べれば数少なく、またやや町外れの位置になってしまうが、ここにも宿はあるのだ。
俺はβの時の残っている知識を総動員して宿を見つけ出し、二つの部屋を借りた。真昼はまだ復活していなかったので代金は俺が二人ぶん払った。
部屋は二階だった。宿に入ってすぐを右手に折れた所に階段があり半分を昇ったところで百八十度反転、残りの半分を上りきり、奥へと続く廊下を突き当たりまで進んだ所から右手に二つのドア。そこが俺達の部屋だ。
「真昼?お前はこっちの奥の部屋を使えな。俺は手前の部屋を使うから。」
俺は若干心配になりはしたものの、真昼を奥側の部屋に連れていき、俺は手前の部屋へ入って休むことにした。
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俺は部屋に入るなり後ろ手に扉を閉めそのまま扉に寄りかかってズルズルと服の擦れる音をたてながら片膝を立てて座り込んでしまった。
さっきまでは何ともなかったのに今になって足が震えている。俺の体は、俺が思っている以上に正直者らしい。
「・・・ははっ。」
強がって笑ってみても口元はひきつり、乾いた声しか出ない。
「・・・情けねぇな・・俺。」
ポツリと呟いた声は虚空に吸い込まれて消えて行く。
今はそれが俺の今後の行く先を暗に示しているようで、堪らなく怖くなる。
こうしていたって何も始まらないのは、頭では分かっているのに何をする気も起こらない。
――――あいつは・・・大丈夫なのかな・・
俺の思考はそれを最後に急速に広がる闇に飲み込まれていった。
夜が明けた。
瞼は閉じているのに薄明かるい光が差しているのか、少し眩しい。
目を開けると朝日と共に昨日となにも変わらない部屋が見渡せる。
俺はドアに寄りかかったまま寝てしまったらしい。
システムウインドウを開いて現在時刻をみてみれば、AM8:07、と表示されている
あの衝撃的な宣告を受けてもう半日もたっている。たった半日と少し、約14時間といったところか。
とにかく気分を変えようと俺は顔を洗うことにして、部屋に備え付けの洗面台へと足を向けた。
重たい腰を上げ少し進んですぐの右手にドアがあり、そこを開けて中に入る。正面の洗面台へと近寄り蛇口を思いっきり捻れば冷たい水が勢いよく出てくる。手のひらで受けて、二回三回と顔を洗い、部屋のホップアップウインドウを呼び出してその中からタオルを引き出す。
このタオルは宿に備え付けの備品扱いだ。
眠気を振り払い顔の水気を拭き取り顔を上げる。寝癖なんかはシステム上つくことはないが、普段のクセで確認してしまった。こうして現実世界との違いを形として見せつけられると、嫌でも自分達が今この世界に囚われているのだと自覚させられる。
眠気の変わりに心にモヤモヤを抱いたまま洗面所を後にしようとした。が、出来なかった。
後ろへと向きを変えた体をもう一度洗面所の方へと戻し目の前の鏡を凝視する。
そこには、紛れもない現実世界の俺の顔があった。