プロローグⅢ
すいません、まだ導入部です。m(__)m
「うわ~、やっぱり広い!」
「だな!いっそ地図アイテム無しでどこまで行けるか試してみたくなるな!」
「いや、そこまではさすがに・・・」
β時代に戻ったかのような呑気なやり取りをしながら俺たちが来たのは、北門を出てすぐの草原だ。周りにもチラチラと他のプレイヤーの姿が見えるが敵Mobの姿は見えない。
「で、これからなにする?」
「う~ん、そういや真昼はスキルと持ち越しは何にしたんだ?」
「持ち越し武器は属性攻撃効果の高い杖に、防具はローブにしたよ。スキルはこんな感じ。」
そういってメニューウインドを可視状態にして見せてくれた。それによると、
【魔力値上昇】【魔力操作Ⅰ】【魔法才能】【雷属性Ⅰ】【光属性Ⅰ】
となっていた。完全に魔術師ビルドだ。しかし、この型が俺たち二人がコンビを組む大きな理由の内の一つだ。俺が前衛、真昼が後衛、という訳だ。
「やっぱ魔術師ビルドにしたんだな。」
「そ。設定の段階では弓使いも視野に入れてたんだけど、やっぱり慣れてるコッチの方が良いかなって。夜はどうしたの?」
「ん、こんな感じ。」
俺の方もメニューウインドを可視状態にして見せる。
【ジャンプ】【ステップ】【剣技熟練Ⅰ】【身体能力上昇】【聴力強化】
と、俺のスキル構成を見ていた真昼が口を開いた。
「ん?見切りは取らなかったんだね。」
「ああ、なんでもNPCショップで買えるらしいからな。初期持ち金でも足りないらしいけど。」
「えぇ!見切り買えるの!?て言うか、なんでそんなの知ってるのさ?」
「さっきそこの辺歩いてた三人組がボヤいてた。」
「・・はぁ~、さっそく【聴力強化】が働いたね。」
「まぁ、そんなとこだ。んじゃ、俺は持ち越し武具装備するな。真昼は?」
俺は可視状態のウインドを元に戻してから、画面右側のデフォルメされたアバターから装備を変更していく。
「僕も装備しとくよ。」
そう言うやいなや、向こうも同じようにウインドを操作していく。
お互いに三十秒もかからずに操作が終了する。するとそこには左脇腹と右腰にソードダガー、両足に黒いサバイバルブーツによくにた靴をはいたそれ以外初期装備な俺と、右手に長さ一メートル程の杖、全身を覆う白のフード付きローブを着たこれまたそれ以外初期装備な真昼が立っていた。
「懐かしいね、この格好も。」
俺も頷き、そうだなと相づちをうつ。
このゲームのプレイヤーの持つ武器はメニューウインドで装備状態にしておけばどこにでも吊るしておくことができる。俺は左脇の短剣の存在を隠すために左右非対称にソードダガーを吊るしているが、大概の二刀使いは長剣系なら背中に、短剣系なら両腰に装備している。
「じゃあ、さっそく狩りに出るか。はじめはホーンラビットでいいよな?」
真昼の方からも異論ないとのお達しが出たので俺たちは草原の中域へと足を進めた。
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ガサガサッッ!!
向かって二時の方角からその名前の由来ともなった螺旋状の角を使った突進攻撃を仕掛けてきたのは、俺たちが探していたホーンラビットだった。これで4匹目になる。
聴力強化によって不自然な物音を拾っていた俺は難なく右後方に【ステップ】を用いてかわす。僅な技後硬直のあとに振り向く。
戦闘状態に入ったことによりホーンラビットの右脇にHPゲージが表示されていた。
ホーンラビットはそのまま二メートル程の距離を進み反転、再び突進を仕掛けてきた。
今度は俺も左手で右腰の得物を抜き放ちホーンラビットを待ち構える。
こうして差し向かった状態なら【見切り】がなくとも十分だ。
ホーンラビットとのすれ違い様に首の後ろ、頸椎の部分を的確に切り裂く。
急所にダメージを与えたことによるクリティカル補正でダメージ量が増加、ただでさえ武器の性能が初期とは比べものにならないのに補正まで追加されては、初期Mobであるホーンラビットなどひとたまりもなく、ホーンラビットのHPゲージが加速度的に減少し、ついには一ドットも残さずに全損した。
「お疲れ、ってほど疲れてもいないか。実際使ったのはステップ一回だけだもんね。」
「おう、今のでレベルが上がったよ。」
今の戦闘でレベルアップしたようだ。レベルが上がると頭のなかに直接、ポーン、という音がするようになっている。
真夜中の猫
《Lv. 2》
称号:なし
所持スキル
【ステップ】【ジャンプ】【剣技熟練Ⅰ】【身体能力上昇】【聴力強化】
所持アビリティ
【スラッシュ】【スカイラン】
ステータスはレベルアップするまでに行った戦闘や使用したスキルによって何がどれだけ伸びるかが決まるらしい、というのがβで判明していることだ。具体的にどのような項目が存在するのかは知られていない。
所持アビリティというのはその名の通り、自分が使うことの出来るアビリティだ。
アビリティもスキルと同じく技後硬直が設けられている。
が、俺のもつ【スカイラン】というアビリティはその限りではない。このゲームにおけるレア装備というものには、ごくまれにそれ自体になんらかのスキル、もしくはアビリティが付与されているものがある。
その場合スキル、もしくはアビリティの使用者は装備品を介してその力を使うことになるので技後硬直を受けないのだ。
俺のこのアビリティは、実際には今俺が装備しているこの靴の所持アビリティということだ。
「おお、スラッシュ覚えたな。」
「そうだね、じゃあ次は僕のレベリングをしようか。」
俺のレベルが上がったので次は真昼のレベルを上げることにした。
「おう、じゃあ俺が惹き付けとくから止めは任せるな。」
「了解だよ!」
こうして俺たちはある程度経験値をかせぐまで交互にレベル上げをしていった。
その結果俺はレベル5に、真昼はレベル4になった。
スキルは才能や能力、アビリティは使える技の様なものと思ってください。m(__)m
9月18日修正しました。