Part7 今日からできる対策
この項では、放射能によるダメージを減らすために、私達にできる対策法について書いていきます。
以前、放射線や放射性物質は私達の体の中で活性酸素を発生させ、それによってダメージを与えるということについて書きました。
ですから、その活性酸素を消去する作用のある栄養素を摂取することが効果的であると私は考えて見ました。
また、活性酸素以外の観点からも、役に立つと思われる栄養素についても書きました。
これからそれらの栄養素について書いていきます。
以下の記述における参考資料:
・最新版 からだに効く 栄養成分バイブル、 監修:中村丁次、 主婦と生活社
・新ビジュアル 食品成分表 食品解説つき、 大修館書店
①ビタミンA、カロテン
脂溶性のビタミンで、動物性食品にはビタミンA(レチノールとも言われています)という形で含まれ、植物性食品にはカロテン(ベータカロテン、アルファカロテンが有名です)という形で含まれています。
ビタミンAにはガンを抑制する効果があります。体内に貯蔵しておけるので、そう簡単には欠乏することはありません。
ただし、動物性食品に含まれるビタミンAを継続的に摂り過ぎると頭痛、吐き気、発疹、疲労感などの症状が出ますので、注意が必要です。
植物性食品に含まれるカロテンは、体内で必要量だけビタミンAに置き換わります。
カロテンは多めにとっても肌が黄色くなる程度で、特に上記のような害はおきません。
ビタミンAに置き換わらなかったカロテンには抗酸化作用が知られており、特にベータカロテンにその作用が強いです。
1日の所要量… 成人男性:600μg、成人女性:540μg
上限摂取量… 1500μg(ただし、続けて過剰摂取をしなければ上記のような作用は出ません。)
食品中のビタミンA含有量は次の通りです。
豚、鳥レバー… 約6500~7000μg(50gあたり)(含有量が多いので、何日も食べ続けるのは控えた方がいいでしょう。)
牛レバー… 550μg(50gあたり)
うなぎ蒲焼き… 1500μg(100gあたり)
モロヘイヤ… 850μg(50gあたり)
かぼちゃ… 660μg(100gあたり)
にんじん… 約1400~1500μg(100gあたり)
みかん… 約170~180μg(100gあたり)
トマト… 540μg(100gあたり)
②ビタミンC
水溶性のビタミンで、アスコルビン酸とも呼ばれています。皮膚に含まれるコラーゲンの合成に必要不可欠で、不足すれば皮膚のハリが失われ、風邪をひきやすくなります。
また、極端に不足すると壊血病という、皮膚から出血が起こりやすくなる病気になります。
抗酸化作用があり、体の中の水溶性部分に発生する活性酸素を消去します。
摂取後2~3時間で排泄されるので、過剰症の心配は特にありません。
しかし多少下剤としての作用があるので、1日に10g以上摂ると、下痢をすることがあります。
1日の所要量… 50~100mg
食品中のビタミンC含有量は次の通りです。
いちご… 62mg(100gあたり)
みかん… 30~35mg(100gあたり)(カロテンも一緒に摂ることができます。)
キウイフルーツ… 69mg(100gあたり)
オレンジジュース(100%、濃縮還元)… 42mg(100mlあたり)
柿… 70mg(100gあたり)(カロテンも一緒に摂ることができます。)
ブロッコリー… 120mg(100gあたり)
赤ピーマン… 170mg(100gあたり)(緑ピーマンは76mg)
かぼちゃ… 43mg(100gあたり)(カロテンも一緒に摂ることができます。)
じゃがいも… 35mg(100gあたり)(熱を加えても壊れにくいです。)
③ビタミンE
脂溶性のビタミンで、強力な抗酸化作用があります。
また、活性酸素の攻撃を受けて生成した過酸化脂質を分解し、細胞がダメージを受けることを防ぐ効果もあります。
ビタミンCと一緒に摂ると、抗酸化作用がさらに高まります。
脂溶性の物質としては珍しく、過剰症が出にくいビタミンです。
1日の所要量… 8~10mg(100mg摂ると、老化防止に役立つと言われています。)
上限摂取量… 600mg(あまり摂り過ぎると血が固まりにくくなります。)
食品中のビタミンE含有量は次の通りです。
うなぎ蒲焼き… 4.9mg(100gあたり)(ビタミンAも一緒に摂ることができます。)
かぼちゃ… 5.1mg(100gあたり)(ビタミンCも一緒に摂ることができます。)
赤ピーマン… 4.3mg(100gあたり)(ビタミンCも一緒に摂ることができます。)
アーモンド… 9.4mg(30g)(カロリーが高いので摂り過ぎに注意しましょう。)
落花生… 3.4mg(30g)(カロリーが高いので摂り過ぎに注意しましょう。)
食用油… 2~4mg(10g)(カロリーが高いので摂り過ぎに注意しましょう。)
④ポリフェノール
ビタミンA、C、Eと共に、強力な抗酸化作用を持っています。
赤ワインに含まれるアントシアニン、緑茶に含まれるカテキンなど、様々な種類があります。
精製度の低い植物性食品を摂れば、何らかのポリフェノールを摂ることができます。
活性酸素によるダメージを最も受けやすい細胞膜で力を発揮することが知られています。
過剰症の心配はありませんが、摂取後2~3時間で効果がなくなります。
⑤銅、マンガン
強力な酸化作用を持つ活性酸素、スーパーオキシドを毒性の弱い過酸化水素に変換するSODという酵素の構成成分です。
どちらも色々な食品に含まれているので、偏った食生活をしなければ不足を気にかける必要はないでしょう。
通常の食生活をしていれば過剰症の心配もありません。
ただし、サプリメント剤などで過剰に摂ると過剰症になることがありますので、その点はご注意ください。
⑥ヨウ素
デンプンと反応して青紫色を示す物質として知られています。
人間の首の部分にある甲状腺に多く含まれ、甲状腺ホルモンに必須の物質です。
甲状腺ホルモンは糖質、脂質、タンパク質の代謝を促進し、さらにはカロテンが肝臓でビタミンAに変換される時に必要です。
この作品を執筆している時点ではあまり聞かなくなりましたが、放射性物質であるヨウ素131の対策としても使うことができます。
これは安全なヨウ素を摂ることで、体内にあるヨウ素が新陳代謝によって置き換えられることを利用しています。
ただし、ヨウ素を含んだうがい薬を摂取してしまうなどのケースが発生してしまいました。
うがい薬は飲み物ではないので、このようなことは絶対にやめてください。
1日の所要量… 150μg
上限摂取量… 3000μg
食品中のヨウ素含有量は次の通りです。
昆布… 約1500μg(1gあたり)
わかめ(乾燥)… 約200μg(3gあたり)
海苔… 約200μg(3g=1枚あたり)
他にいわし、さば、かつおなどを100g摂れば、1日に必要な量である150μgをクリアすることができます。
ヨウ素は過剰に摂ると甲状腺ホルモン生成の低下や、ひどい時には甲状腺に腫瘍ができるといった症状が現れます。摂り過ぎには注意しましょう。
特に昆布には非常にたくさん含まれますので、ご注意ください。
⑦核酸
遺伝子、DNA、RNAとも呼ばれています。
また、「プリン体」と呼ばれている物質もこの中に含まれます。
細胞の核の中に必ず含まれている物質です。
「遺伝子組み換え食品」という言葉が独り歩きしていることもあって、遺伝子と言ってしまうとイメージが悪くなるかもしれませんが、私達の体に必要不可欠な物質です。
成長期には体の中で合成されますが、それを過ぎると合成されなくなるので、食品から補充する必要があります。
放射線や放射性物質には、細胞に含まれる遺伝子を傷つける作用があることが知られています。
遺伝子が傷つけられたまま細胞分裂やタンパク質合成をしようとすると、大抵うまくいかなくなり、その細胞はほとんどの確率で死んでしまいます。
生き残っても、制御不能の状態になるとやがてはガン細胞になってしまいます。
ですから、遺伝子の傷つけられた部分はできるだけ早く修復されなければなりません。
その修復に必要なのが核酸です。
核酸が十分にあれば、遺伝子の傷つけられた部分は取り除かれた後、新しい核酸を材料にして正常な遺伝子に修復することができます。
つまり、私達の体には、放射能のダメージからしっかりと立ち直る機能が備わっているのです。
これを知っておけば、放射能は遺伝子を傷つけるという言葉を聞いても、神経質になる必要はないでしょう。
核酸は動物、植物を問わず、細胞の中に必ず含まれるので、多めに取りたい時には細胞が多く含まれる食品を摂るのが良いでしょう。
例としてはレバーや、白子、ビールなどが挙げられます。
しかし、摂り過ぎるとプリン体の取り過ぎによる「尿酸結石」などの原因になりますので、その場合は意識して、摂取量を控えることも必要だと思います。
一般的に、核酸は動物性食品に多く含まれ、植物性食品に少ない傾向があります。
例外として、卵は1個の細胞のため、核酸は無いに等しい量となっています。
対策として有効と思われる栄養素はまだまだあると思いますが、ここではとりあえずこれくらいにしておくことにします。
ビタミンやミネラルなどの栄養素は、色々物質との相乗効果によって効果を発揮することが多いので、1種類だけを集中的に摂るのはお勧めできません。
ですから、できるだけたくさんの食材を摂り、栄養が偏ることの無いように気をつけてください。
なお、これらの栄養素を摂っても放射線、放射性物質によるダメージを0にすることはできません。
しかし、RPGにおける「守備力を上げる」といった効果は期待できると思います。
この作品を通じて、皆様のお役に立つと同時に、少しでも風評被害を防ぐことができればと思っています。