Part4 放射線の種類
一口に放射線と言っても、様々な種類があります。
この章ではその放射線の種類について詳しく述べていくことにします。
①アルファ線… ヘリウムの原子核で、プラスの電気を帯びた陽子と、電気を帯びていない中性子を2個ずつ含んでいます。
(※一応物質ですが、事実上光線として考えられるので、この作品では物質ではなく、光線として解釈していくことにします。)
特徴は次の通り
・プルトニウム239、ポロニウム210などから放射される。
・透過力は最も低く、紙1枚あればさえぎることができる。
・空気中に飛散しても、数cmしか飛ばない。そのため、一般に体内には入りにくい。
・エネルギー(電離作用または酸化作用)は最も高い。そのため、口や鼻から体内に入ってしまうとダメージが大きく、一般に最も危険な放射線と言われている。
アルファ線は非常に高エネルギーの物質です。
生体に入ると、電子にエネルギーを与えて高エネルギー状態にし、原子の外に飛び出させてしまう作用を示します。
そしてそれを何万回も繰り返してエネルギーを使い果たした後、体内にある原子から電子を奪って無害なヘリウム原子となり、安定します。
アルファ線は他の放射線よりもずっと多くの電子にエネルギーを与えていくため、体内に入ると危険と言われています。
私の個人的な見解ですが、キュリー婦人 (マリー・キュリー)が夫のピエールと一緒にポロニウム、ラジウムを抽出するための実験は、今の感覚で考えた場合、相当危険なものであることが推測されます。
もし、彼女らが現代にこのような実験をやろうとしたら、絶対に阻止されるだろうと思われます。
(参考資料:Q&A放射線物理 大塚徳勝・西谷源展著、共立出版、 そうだったのか! 池上彰の学べるニュース第5巻)
②ベータ線… 高エネルギーの電子で、マイナスの電気を帯びています。この電子は原子核の中にある中性子が陽子と電子に変化したものに由来しており、原子核の周りを回っている電子ではありません。
(※これも一応物質と考えることはできますが、やはり事実上光線として考えられるので、この作品では物質ではなく、光線として解釈していくことにします。)
ベータ線放出後は原子核中の陽子が1つ増えるため、原子番号が1つ上がります。
特徴は次の通り
・セシウム137、ヨウ素131などから放射される。
・紙は通り抜けてしまうが、薄い金属板でさえぎることができる。そのため、家の中にいればほとんど影響はないと考えられる。
・エネルギーはアルファ線とガンマ線の中間(ただし、三重水素から放出されるガンマ線より弱い。)
・電離作用は一般にアルファ線とガンマ線の中間。
生体に入ると、アルファ線と同様に、やはり電子にエネルギーを与えて高エネルギー状態にし、原子の外に飛び出させてしまう作用を示します。
そしてそれを何回も(アルファ線よりも回数は少ない)繰り返してエネルギーを使い果たした後、付近の原子に捉えられるか、エネルギーとなって消滅します。
(参考資料:Q&A放射線物理 大塚徳勝・西谷源展著、共立出版、 そうだったのか! 池上彰の学べるニュース第5巻)
③ガンマ線… 波長の非常に短い電磁波(光の一種)で、電気は帯びていません。
特徴は次の通り
・バリウム137(セシウム137(一般に放射性セシウムと呼ばれています)に由来)、ニッケル60(コバルト60に由来)などから放射される。
・紙や薄い金属板は通り抜けてしまうが、鉛や厚い鉄板でさえぎることができる。そのため、家にいても多少は浴びてしまうことが考えられる。
・一般にエネルギーや電離作用はベータ線より弱い。(ただし、ニッケル60から放射されるガンマ線はエネルギーが高い。)
ガンマ線はエネルギーを持った電磁波なので、エネルギーを使い果たした後は跡形もなく消滅します。
(参考資料:Q&A放射線物理 大塚徳勝・西谷源展著、共立出版、 そうだったのか! 池上彰の学べるニュース第5巻)
④中性子線… その名の通り、中性子という名の電気を帯びていない粒子です。
特徴は次の通り
・ウラン235などの原子が中性子を吸収して核分裂を起こした時や、水素の原子核(陽子)をリチウム原子核に衝突させた時などに放出されます。
・紙、薄い金属板、鉛や厚い鉄板を通り抜けてしまう。水やコンクリートでようやくさえぎることができる。
・中性子は電荷を帯びていないため、原子に近づいても軌道を変えることができず、そのまま原子核に衝突してしまいます。
※中性子が原子核に衝突した場合、次のようなことが起こります。
1. 原子核にエネルギーを与えて跳ね返される。
2. 原子核に吸収されて、質量の重い元素になる。(これによって原子量1の水素の場合は原子量2になると考えられます。)
3. 陽子やアルファ線、中性子などを放出させ、違う元素に変換させる(ウラン235などで見られます)。
・中性子が原子に衝突せずに単体のまま存在し続けている場合、やがて陽子と電子に分裂します。
(参考資料:Q&A放射線物理 大塚徳勝・西谷源展著、共立出版、 そうだったのか! 池上彰の学べるニュース第5巻)
⑤X線… ガンマ線と同様に、波長の非常に短い電磁波(光の一種)で、電気は帯びていません。
※X線は核反応で生じるものではないため。放射線に含めないこともありますが、便宜上放射線の一種として記述します。
特徴は次の通り
・高エネルギーの電子が水銀などの物質と衝突した時などに、エネルギーとして放射される。(蛍光灯の内部で発生しています。)
・波長は一般にガンマ線よりも長い。(一部の波長はガンマ線とかぶっている)
・人体を含め、様々な物質を透過する性質があるため、レントゲン検査などで使用されている。
(参考資料:チャート式シリーズ 新物理Ⅱ)
⑥陽電子線… 一言で言えば、プラスの電気を帯びた電子です。
特徴は次の通り
・カリウム40などから放射される(これによってアルゴンが生成します。大気中に0.93%存在するアルゴンは、ほとんど全てこのカリウム40に由来しています)。
・生体に入るとベータ線と同様に電離作用を示す。
・陽電子は電離能力 (エネルギー)を失った後、周りの電子と衝突して合体した後、消滅し、ガンマ線に変化する。
(参考資料:Q&A放射線物理 大塚徳勝・西谷源展著、共立出版)
放射線は、放射をやめるとすぐに影響がなくなります。
実際には周りの物質にエネルギーを与えて電離させるなどの作用を示す時間がありますが、それは人間の時間間隔で言えば、一瞬のことです。
これは、病院でレントゲン検査をしている時を想像していただければ分かりやすいのではないかと思います。
ですから、個人的にはあまりナーバスになるべきではないと思っています。