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Part1 はじめに

 2011年のその日、私は有給休暇を取って歯医者に行き、歯の治療をしていました。

 その時、ふと大きな揺れが発生しました。

 治療が即座に中断となり、辺りは騒がしくなりました。

 私はもし近くにある機器が倒れてきたらと思い、とっさに身構えました。

 正確な記憶ではありませんが、揺れは数十秒にわたって続いたと思います。

 しかし、幸い機器が倒れたり、誤作動をしたりするようなことはありませんでした。

 歯医者にいた人達も、幸いパニックになるようなことはなく、安全確認をした後、再び治療が再開しました。

 それから数分後、私は歯医者で流されていたラジオの音声で、信じられないニュースを耳にすることになりました。

 私はその後、呆然としながら治療を最後まで受け、会計を済ませた後、急いで家に向かいました。

 家に到着するとすぐにテレビをつけ、そこに現れた映像を見てさらに呆然としました。


 その日以来、私達は悲しい現実や厳しい現実と向き合う日々が続きました。

 私もニュースを見たり、新聞の記事を読んだりするたびに、とても心が痛みました。

 そしてその度に何かしたいという思いが込み上げてきました。

 私は募金箱が設置されると、積極的に募金をしてきました。

 ゴールデンウィーク前には不通となっていた東北新幹線が開通したため、早速仙台に行き、野球観戦などの観光をしてきました。

 仙台にいる間には、私自身も地震に見舞われましたが、こんなものに負けてたまるかと思っていました。

 観光で立ち寄ったところや、仙台駅ではお土産をどっさりと買いました。

 帰る途中には福島駅で新幹線を一旦下車し、駅構内にある売店でお土産を買いました。

 家にたどり着いた後には、家族の人に問題がないことを説明した上で、そのお土産をふるまいました。

 彼らも私が理科に詳しいことを知っており、「そう言うのなら信じてもいいでしょう。」という感じでしたし、おいしそうに食べてくれました。

 それから一ヵ月後、家の法事を控えた時に私はもう一度東北に出向き、今度は福島の郡山に行ってきました。

 行った当時、現地の放射線量は通常の5倍程度でしたが、その程度なら健康に全く問題がないことを知っていたため、堂々と街中を歩き、店で売られていた食べ物も食べてきました。

 帰る前には再度お土産をどっさりと買いました。

 法事の日には、集まった人達に全てを話した上で、買ってきたお土産をふるまいました。

 集まった人達は表情一つ変えることなく、私がふるまったお茶菓子を食べてくれました。

 ふるまう前には、一体何て言われるのだろうという不安もありましたが、結果的にそれは杞憂でした。

 それが私にはとてもうれしかったです。

 その光景は今でも忘れられません。

 ちなみに私は福島の喜多方ラーメンが気に入ったため、その後も見かける度に買って食べています。


 しかし、テレビのインタビューや新聞の記事では不安を助長するような発言も多く飛び交いました。

 その中には、放射線(放射能)に関するニュースを聞いて、海外に逃げ出したという情報もありました。

 テレビ番組では「汚染列島」といったような過激な表現を使う場合もありました。

 結果、そのような情報によって国民を疑心暗鬼にさせてしまったケースも多々あったことでしょう。

 それを聞くたびに、ニュースや新聞、インターネットなどでは不安な声が飛び交いました。

 それが確かな情報なのか分からないまま、風評となって広まってしまうことがありました。

 その結果、東北産と聞いただけで買うのを拒否してしまうこともありましたし、せっかく力強く立ち直ろうとしている人達の足を引っ張ってしまったケースもありました。

 もちろん、安全なものを買いたい、子供を守りたい、と言う人達の気持ちも分からなくはありません。

 そう主張している人達も、心の中では被災地や被災者の方々のために何かしたいと思っているはずです。

 しかし、安全を求めるあまりに不安におびえ、疑心暗鬼になってしまっていては、想いと裏腹な結果を招いてしまいます。

 その結果、あなたは被災地や被災者のことを考えていないと言われ、バッシングを受けてしまったケースもあります。

 現に、2011年に愛知県で行われた花火大会で、福島の花火が打ち上げられることを知った時、市民の人達が不安を訴え、結果的に打ち上げ中止に追い込まれてしまいました。

 中止決定後、それを支持する人達もいたことはいましたが、全国の多くの人達から一斉に批判される結果になってしまいました。

 ちなみに、その花火は放射能で汚染されているというようなものではなく、打ち上げても全く問題がないことが、後になって専門家の人によって証明されました。

 復興や風評解決のために色々なことをしてきた私としては、この件は非常に残念ですし、恥ずかしかったですし、そして悔しかったです。


 では、私達は一体どうすれば他人の足を引っ張ったりすることなく、復興のために協力をしていけるのでしょうか?

 私は被災者だけでなく、そう考えている方々のためにも何かしたいという思いで、この度この作品を執筆することにしました。

 そしていくつも資料を集め、何が真実なのかを見極めた上で、文章を書いていきました。

 途中、読者からの批判を恐れて執筆を中断するなどしまして、発表は当初よりも大幅に遅れてしまいました。

 執筆再開後も、今更書いてももう遅いのでは…と思うことがありました。

 しかし、人々のために、自分しかできないことをやりとげたいという思いで、この度発表までこぎつけることができました。


 どうか、この作品を読んだ読者の方々が少しでも放射能、放射性物質、放射線について正しい知識を持っていただき、適切な対応を取っていただけますよう、よろしくお願いします。

 そして一緒に、日本復興のために頑張っていきましょう。


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