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夏の日の一日

掲載日:2026/04/12

小学生の頃にひとりで近所のスーパーに買い物に出かけた夏の日を思い出しました。あの時よりも遠くに出かける冒険になっています。まあ、ひとりで県立図書館行くのはなかなか冒険で、一回でも行ったことがあるならなんとかクリアできるコースメニュではないかと思います。


「ね、何書いたらいい」

「夏休みの宿題?」

「読書感想文と夏休みの日記」

「あぁ、そうだった。小学生だと夏休みの宿題があるんだった」

嫌なものを見たみたいに嫌そうにする目の前の叔母に加奈子は聞いた。朝食の席で。

「そのまま読んだままを書く。そしてその書いた部分にたいしてどう思ったか書くの。そしたらまぁ、それなりに読書感想文になるから」

そういうのは叔母の隣で朝食のトーストにジャムを塗っているいとこの美幸ちゃんだ。

「えー。そういうのだっけ」

何かが違う気がすると私は思った。それを聞いただけなのに。

「自分が聞いておいて、答えたらその態度ってどういうわけ」

トーストに齧りつく美幸ちゃんは、目を開いて齧っているまんまに「おいしー」と言った。

「うー」

叔母であるたか子は自分の娘をみて、豪快に笑った。

「あはははははは」

「何それあんた。アニメかなんかのキャラなの?」

おばさんが美幸ちゃんの肩を軽くたたくから、美幸ちゃんは眉間にしわを寄せて、トーストから齧りとった分を咀嚼しながら、自分の母親を見て睨んだ。

「私は私」

と言いたいのだろうが、咀嚼しながらなので分かりずらい。

「ふふふ。ほんとそういうところもそっくり」

叔母さんのたか子さんがいうそっくりな相手は、美幸ちゃんのお父さんでたか子さんの旦那さんのことだ。名前はたしか圭吾と書いてけいごと読む。だったと思う。いつもおじさんって呼んでたからなぁ。

「おじさんはどこに居るの?」

「今はね。確かタイに居るわよ」

「仕事で今家に居ないの?」

「そう。仕事。タイの後も他国へ移動してその国にある支店に顔を出してお仕事をしてくるんだよ。ホテル住まいを点々としているんだよ」

「ははは。仕事しているのに、旅人のようだね」

「あはははは」

「あのキャラクターみたいな」

「それをいうなら、番組の企画で旅させられている若い子のことじゃないの?」

「ホントだ」

「ははは」

「そうで。日記は?」

「今の会話を書いたら。今日の直食の席で従妹や叔母とこんな話をしましたって」

「ああ、確かに。一日分それで終わるね」

「そうだ。やだ私、今日早めに出ないと」

慌ただしく、身支度を整えて、鞄を持って、またテーブルに戻ってきた。

鞄に入っている財布を出して、千円札を一枚くれた。

「これ、お昼代とおやつのお金。余った分は夏の思い出作りとか、自分のお小遣いにしなさい」

「え、いいの?」

「いい、いい。ただし、どう使うかを考えること。お金のやりくりを学ぶいい機会でしょ」

目が覚める思いだ。

渡された千円札を検分するかのように眺める。

「鍵の戸締りと火の始末だけはしっかりね。知らない人について行かない。えーと、冷蔵庫は開けっ放しにはしない」

美幸ちゃんが「あーもー」と叔母さんを仕事へ出かけるように促し始めた。

「鍵ある?」

「今?」

「持たせないと」

「私のスペアキー渡すから」

「ああ、ありがとう」

「何かあったら、まずは美幸に連絡すること。それから解決できない時は私に連絡すること、いいわね」

「わかった」

「よし」

「ほら、時間」

「ああ、そうだ。ありがとう。行ってくる。鍵頼んだ」

「了解した。持ち物忘れ物ない?」

「ああ、多分大丈夫。昨日のうちに支度しておいたから」

「じゃ、行っておいでよ」

「うん、行ってきます」

扉の音がなる。

二人してため息をはいた。

なんだか私たちまでせかせかして急いでいたなぁ。疲れた。

席に戻って千円札を手に持って、自分の財布にしまう。

残りの朝食を食べようと、席に着くと、美幸ちゃんがスペアキーをくれた。

「これ無くさないように、キーフォルダーを付けておいたから」

「なんかすごく大きくない?」

キーフォルダーのサイズが私の掌サイズだ。そしてリアルな蛙だ。

「あ、ありがとう」

美幸ちゃんはパンを立って食べた後に牛乳をがぶ飲みした。

「あー」

低音ではくように言うその飲んだ後の声はおじさんを彷彿とさせた。父親に似ているっていうんじゃない、どこかのオッサンに似ているという意味だ。

この事を知られたら怒られそうだ。

食器を流しに移動させて水に浸ける。

「秋ちゃん」

「なに」

「さっき貰ったお金」

「な、なに」

怖いんだけれど。

「家に居たらほとんど消費せずに済むけれど、我が家の家計のことを考えると、町の図書館や公民館などに行って涼むと良いよ。宿題をそこでしな。水筒にお茶入れていけばいいから。自分の水筒持って来ているでしょ」

「うん」

「お昼はそうだなぁ。オカサっていういつも行くスーパーがあるでしょ。そこで最安値のおにぎりか弁当を買うといいよ。おやつはお菓子コーナーの駄菓子にするか、ドラッグストアの百円以下のスナック菓子を買うといいよ。そうすると五百円は残るんじゃない。少なくとも四百円は手堅い」

いとこと言っても姉のような存在の美幸ちゃんの頭の中は主婦顔負けな情報がある。

末恐ろしい嫁になる。

「そ、そうできたらそうしてみるかも」

「うん。そうできたらでもいいよ」

「うん」

なんだろう。機嫌がいい。なんだか怖いなぁ。

「さぁ、私も行かなきゃ」

「部活?」

「ううん」

笑顔の目がとても輝いている。

「友達とどっか行くの?」

「ふふふ」

おお。友達とも違う間柄の人と何かするつもりだろうか。

高校生になった美幸ちゃんは楽しそうに、おしゃれな服に着替えてから出ていった。

ただ何も言わず。

求められたときに正直に穏便に済ませられる答えを告げる。

そして出かけるまで騒がずそっとしなければいけないことをしていく。

そう、たしかそうすることを粛々とというのだった。

テレビドラマを見ている時に覚えた言葉だ。

笑顔を向けて行ってらっしゃいという。

美幸ちゃんが出かけた。

扉の閉まる音がした。

私はため息をついた。

身体を伸ばし、緊張を解く。

「はぁ、美幸ちゃんもアオハルというのだろうか」

自分にはまだ早いと思いながら、キッチンへ移動し、流しに浸かっている朝食で使った食器類を洗い始める。

私がこのいとこの家に居るのは親が両方とも仕事で出張しているからだ。

母はフィールドワークに行ってくると告げてきて、私にいとこのところへ行っておいでといつものように私をこの家に預けた。連絡だけして私は私自身ひとりでこの家へと移動する。そうしてまたこの家に御厄介になっているのだ。父さんはフィールドワークに向かう母を恨めしそうに眺めていた。母さんに促されて出張の支度をしていくという情けない様をまた見せていた。帰ったらまた家族会しようと提案した母さんに父さんは嬉しそうに喜んで抱き着いていた。こちらが見ているのもお構いなしの父さんから母さんへの愛情は、もう見慣れたものとなった。当たり前だと思っていたあの頃、私も若かった。

いけない。いけない。

洗い終わって、水ぶきしていく。

元あった場所に片づける。

凝った掃除をするわけじゃないが、簡単にきれいに見えるようにはしていく。そうすることで印象が良く、電話一本で面倒を見るように頼む親の面目が保てて私も居やすい空間となる。そのための行動でもあるし、そもそもそうしたい。

家でしている習慣だ。

それをこの家でもしているといっても過言じゃない。

ははは、弁護人前へ。

母とみる弁護士竜太郎が行くのドラマはなかなか面白い。

私にさまざまな決まりごとがあることと大人でも助けて欲しい時にどうしたらいいのかということが分からないものだということを知った。だからみな弁護士竜太郎に助けを求めて依頼者がやってくる。

いかんいかん。

宿題を鞄に入れて、財布も居れる。携帯電話や鍵も入れて。

「そうだ。水筒」

水筒にお茶をいれようとしてやっぱり水にした。

「今日の天気はOK」

「上着を羽織って」

私も出かける。いけない。

戸締り。

戸締りをしに戻って、換気扇と火の始末を確認する。

ようやく出発。

自宅だったら自転車があるが、ここは叔母の家だ自転車はない。

自転車があればなぁ、と思いながら歩き出す。

この地域の図書館は大きな図書館があった。

一階に自習室やカフェがある。

そこへ向かう。

見知らぬ制服を着た男女がそれぞれ自転車に乗って学校に向かって走り去っていく。部活の服を着ている人も居る。彼らの自転車の流れの一段の中に、一般の主婦の方やおじさんやお兄さんも居た。みなちょうど同じ時間にこの道を通っているのか。示し合わせたわけでもないのに、これだけ集まることができるなんて。不思議なものだなぁ。

そう思っていると、わき道から出てきた車に合わせて停止した自転車のブレーキ音に驚かされた。

ぶわっと風が後ろ下から上えと舞い上がった。左手で横髪を抑えて、少し目をつむる。

再び歩き出すときには、自転車の後姿は遠いものとなっていた。

はぁ、私はこの距離どころかもっと歩かなければならないのか。

こうなったら頭の中に楽しい歌や映像でも思い出して距離を忘れるくらい楽しく歩かなくちゃ。

夕方に放送されていた子供番組の歌を思い出す。声には出さないが、その歌や映像を思い出しながら歩き出すと、ウキウキしてきて、足取りも軽くなってきた。

歩道の凸凹に気を取られながら、前に進む時にわき道を注意する。

住宅街を抜けるまでわき道の自動車に注意が必要だった。なのにあろうことかきれいな花を咲かせている庭があったり、猫が居たり、犬が居たりと気を向けるものは多いので自然と足取りは軽いけれどもゆっくりと歩かなければならない。それらを、楽しみたいしね。

そうこうしているうちに、車が多く通る道路に出てきた。ここからは信号に従って移動することになる。信号がある分注意は必要だが、緩めることができる。

「はぁ」

こっちへ向かうのとあっちへ向かうのと一本ずつの道路ながら、ちょうどこの角は空地になっているので、空が開けてホッと一息つける。

空が広い。雲はあるがきれいな晴れ間だ。上空の風が強いのかもこもこしていない雲。水にぬれていない筆で水彩画をなぞったような線になっている。

「あ」

赤信号がいつの間にか変わっていたらしい。ひとつ逃してしまった。悔しがる自分の内心に驚き、急いでいないことを告げると逃げていく中身があった。なんだろう。

そのまま信号が青になってから渡る。

この先にスーパーマーケットがある。そこを通り過ぎて、さらに進んでいくとバス停がある。今回は市の図書館だからバス停二個分の移動だ。ここは美幸ちゃんにならって、節約をすることにした。

バス停で時刻表を睨みつけること三分ほど。してから歩き出す。

決めても歩き出したいと思って実際に歩き出すまでに時間がかかった。

水を水筒から飲む。

せめて一つ分くらいは歩いて見せる。

そうして移動すること十分。一つ分を歩くことができた。このバス亭では椅子に座って待てるように誰かが椅子を置いてくれている。その椅子に座るのが恥ずかしかったが、疲労を考えると座って休憩した方が後々のためになると考えて、座った。

太陽によって温められた座席はじんわりと疲労がたまった筋肉を程よく温めるので安堵するような心地がした。

もう少しだ。もう一つ分歩くぞ。

そうじゃなきゃ、四百円のお小遣い作りたいし。

「よし、気合いだ」

水を飲んでから、また歩く。

移動する道順はバスの道順にしている。わき道に入ると分からなくなるからだ。

バスから見た風景を頼りにバス停を頼りに歩く。

トイレに行きたくなってきた。

周囲を見渡すと、近くの信号がある十字路の向こうにコンビニエンスストアの看板が目に見えた。

あそこで借りよう。

借りるついでに安いものでいいから何か買った方がいいだろう。母もフィールドワークで立ち寄る町のスーパーには必ず立ち寄り何かしらを買ってその地を後にするようにしていると以前そんなお話しをしてくれた。それ以来、娘の秋もそうするようにしていた。まだ母さんには教えていないことだ。

なんとか間に合った。嬉しい気持ちが顔に出ていたのか、店に入る時にちょうど出てきたごついおじさんがこちらを見て訝しんでいた。

店員さんに話しかける。

「トイレ借ります」

「どうぞー」

叔母さんくらいの年の女性だ。

安堵する。

トイレの場所に行くと、開いていた。

トイレの清掃担当者が記録を付ける書類が目に入った。日付と掃除したという記録がなされている。

案の定、きれいだ。ありがたい。

トイレっとぺーバーもある。

電気は自動で点いた。

確認しながらも、切羽詰まってきた尿意にせかされながらしっかり扉の施錠をしてから鞄を掛けたまま用を足し始めた。間に合った。

「はあ」

間に合ったことか、解放されたことか、歩いてきて一休みできたことか。

大きなため息が出た。

「はぁ、ちょっと休憩」

座ってできる洋式ならではだ。

消臭剤も置いてある。関心感心。

もう少し座っていたい気持ちを宥め腰を上げる。衣服を整えて手を洗う。手洗い洗剤もあった。ありがとう、と心の中でお礼を言う。

ペーパータオルで手を拭く。

ココは当たりだ。

今後もトイレ行きたい時は利用しよう。買い安い品物があれば買い物の場所として自分の中で登録すればいい。

レジの店員に使用が終わったことを告げてお礼を言う。

それから買い物をすることにした。

なにか無駄にならなくて金銭的に無理がないもの。お菓子か。駄菓子系あるかなぁ。移動すると、安売りの籠に割引シールが張られたお菓子が入っていた。ネギマ味のチップスだ。珍しいし美味しいかもしれないと思ったが、今回の目標の残高の金額を考えるとちょっと遠慮しなくてはいけない。うーん。出会いをとるか金額をとるか。店員に近づく、避ける店員さんに「ありがとうございます。で、あそこの籠のお菓子について質問良いですか」

「な、なに」

「今後も入荷予定ですか?」

「えーっと、たしか限定品だったかと」

「いつまで、あ、あれこの質問私いずれ買うつもりだ」

頭を下げる。

「どうしたの」

「買うことに決めました」

「そ、それは毎度ありがとうございます」

商品をもって、レジへと向かう。その人もレジへと向いレジの人と何か言うと、がさごそとカウンターの下にあるものをとろうとしている。

会計が済む。最初の支払いとなったのは、珍しい味のお菓子となった。叔母さんに貰った千円札がこの店のレジの中に納まっていく。

さらばだ。

お釣りをしっかり財布に入れる。

叔母さんくらいの年齢の女性が「ありがとうございました」と営業の言葉をかけてくれる。「ありがとうございます」と丁寧に返す。まるで自分もその仕事の世界に居るみたいに感じて少し緊張する。

その気持ちの中に気を向けていた間に、カウンターの内側の下の段を

を見ていた店員さんが立ち上がった。

手に持っているものをカウンターに乗せた。仕事だろうと思い、頭を下げて移動する。と、

「あ、待って」

と声を掛けられた。

振り向くと、手招きされた。

「これ、好き?」

「え」

絵柄と叔母さん店員さんの顔を見る。横の店員さんの顔も見る。

「好きじゃないならあれだけど、もしよかったら。あまりものなんだ」

「いいんですか」

「構わないよ。こうして地域の方や遠くから見えたお客に対しての商品を買っていただく以外の交流の場ってやつさ」

「交流。コンビニが」

「そう」

「店先の休憩時間を過ごしていそうな方々みたいな」

「それもあるけれどね。地域のお子様の安全と安心の振る舞いをしたり、雨降りに雨宿りさせたり、避難を受け入れる場所になっていたりするだろう」

「ここ、そうでしたっけ」

「そう、覚えておいて、ここはこどもSOSの場所でもあるから」

「へぇ」

「君もね」

「はい」

「入り口に支払いとかATMの掲示のところにステッカー貼ってあるでしょ」

「ああ個人商店の店の入り口に貼ってあるの見たことありますよ」

「そうそう、そういうの」

「これ、キャンペーン終わって残りものだから。店長にどうしようか相談していたところで、配ってもいいという取引先からの承諾は得ているから。ただし子供さんなどへって言われてるんだ」

「店に来た子に配るんですか」

「ま、どっちかというと、子供会とかボランティア的なところへっていってたから」

「じゃ」

「そ、これは私からの秘密」

「え、ひ、ひみつ」

「そ、秘密。秘密が重いんなら、依頼」

「依頼?」

「どういうことですか?」

「このキャラクターって君の周囲ではどういう感じかなぁ。そもそもこのアニメ見ている?」

「い、いえ。私あまり見ないので」

「そうか」

「クラスの子はこのアニメのお話ししているかな?」

「ああ、調査ですか」

「そ、店長にそのこと伝えて、店でおくかどうかの目安になるでしょ」

母さんのフィールドワークみたいなことだ。

そう思うと、俄然やる気がみなぎってきた。

「クラスの男子が話しているのを聞いたことあります。頻度はあのシーン泣けたよねの話しの時は盛り上がっていました。それ以来そういえば聞いてないですね」

「おお、そうか。ありがとう。ちなみにクラスの子は買ったりしているかいこういったアイテム」

「こういうのか販売の形は分かりませんが、確かにこのキャラのものを持ち歩いているクラスメートや通学の時に持っている子は見かけます」

「多い?」

「見かけるのは四人くらい」

「多いの」

「他のキャラものも、それ以外も人気なので」

「おお。すごいなぁ、この子」

「ありがとうちなみに、他のキャラで人気な物は」

「これとこれとこれです」

店のお菓子のパッケージに描かれている子たちやカードやおもちゃを示した。さすが人気のキャラ、この店の商品として存在しているなんてすごいなぁ」

「その他ってなに?」

「ブランド品です」

「小学生が?!」

「鞄のブランド。スポーツのブランドなどですかね」

「ああ、学生さん。確かに学生が持ち歩いているものでブランドって言えるものあるわ」

「あぁ、いわゆる高級ブランドといわれているものとは違う種類の」

「そうそう。そうだった。ファッションというよりは主軸が別軸にありそうなタイプのブランド品かぁ」

今いちその表現で合っているのかわからないが、私にも言いたいことは伝わった。

「ありがとう。これは調査に参加していただいたせめてもの詫びです」

「これを受け取ってください」

名前と電話番号と小学校の名前が入っていて、親の職場の名前や番号が入っている。名刺だ。母さんが個人的に作っている時に一緒に作った物だ。

受け取った店員は、「はぁ、小学生が、名刺」

「まぁ、なんてこと。まぁ、私、ちょっと。ごめんね。ちょっとまってて」

店の奥に入って行く彼女を見る。

中から紙をもって出てきた。

「こ、これ」

渡された紙は名刺だった。

「これね。この名刺はこの店の店長の名刺。私のないから、ここに私の名前を書いておいたから」

確かにボールペンで書かれた名前は田中さんだった。

「田中さん」

「そう、私の名前」

「秋、野々村秋です」

「ありがとう」

「ちゃんとあなたの名刺も店長に報告するからね」

「はい。宜しくお願いします」

「名刺いただきます」

「はぁ、あなた小学生よね」

「はい」

「まぁ」

くれようとしてたのはクリアファイルだった。これは役に立つ。有難く頂戴するとともに、「なにか問題があれば言ってください。プリント入れにはしていると思いますが」

「わかった」

「それでは失礼いたします」

「まぁ、ご丁寧に失礼いたします。ご来店ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「ありがとうございます。失礼します」

「またのご来店お待ちしております」

頭を下げて店を出る。

なんだか今日の仕事を終えた気になりながら胸を張り、図書館の方へと歩いていく。

そうしてしばらく高揚間で歩いていると、散歩中の大型犬とすれ違うことになった。

大きすぎる。

ラブラドールより大きい。

私のおっかなびっくりがわかったのか、犬のリードを短く持ってくれた飼い主に感謝して通り過ぎる。

「ゆっくり歩いてそのまま通り過ぎてください」

「はい」

「そうです」

「あ、すみません、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。すみません」

「いえいえ。失礼します」

「ええ、また」

ふう。身体の中にあるドキドキを外へ追いやるために、身体を小刻みに震わし、鞄を持ち変える。

図書館に着くころにはすっかりお腹が空いてしまった。お昼を食べるにはまだ早いし、スーパーで弁当を買っていない。

水を飲む。

先ほど買ったお菓子をどこかで食そう。

しかたない。

外にベンチがあった。そこに座って食す。

すこしでいいかとおもっていたら、全部食べてしまった。

はぁ。水を飲んで紛らわそう。

ゴミを鞄にしまい、図書館に入る。

一階の自習室は半分くらい埋まっていた。ほとんどが高校生だった。

離れたところに陣取って、鞄から夏休みの宿題を出す。

日記の宿題の一日分を先ほどの珍しい味のお菓子に出会えたことまでを書いて提出しよう。日付は今日のでいいか。

文章を書いてから、絵を描く。下書き程度の絵に苛立ちながら、上手く描けない苛立ちで先に進みずらいので違うものに切り替える。

計算のドリルを行った。

すっかり苛立ちも収まり、計算に集中すること十分と少し、気分転換にトイレへ立った。

席に戻る途中に同じクラスの男子が居るのに気が付いた。他の塾の子供と居るのか見かけない子と一緒に居た。クラスでは見ない明るい表情だ。

その後、読書感想文に推薦されている図書を探して借りることにした。

興味をひくもので本の厚みが薄いもの。

厚みが薄くない。思ったよりも薄くない。

あまり読むのが進められそうにない。そして図書のお姉さんと話しをしたくなったこともあって。お姉さん。つまり図書館の職員さんに声を掛ける。

「この三冊の本の面白いところと私の学年の読書感想文として適当であるか教えてください」

「そうですね」

手渡した三冊を見ていく女性職員。

「どれも面白い内容ですが、こちらは童話のような話しの流れで、児童書という中でも分かりやすくファンタジーの世界を体験できますよ」

「ファンタジー」

「えぇ。冒険譚です。まぁ、他の冒険譚の中でもお話しは短めなんですけどね」

確かに短かった。

「こっちは、現代を舞台で団地のお友達とのお話しです。友達との友情や大人の事情を垣間見ることができます。人間関係について学べますね」


それは、知らない人の人とのトラブルってやつだろうか。

「人間関係といってもささいなケンカですか?」

「そうですね。大人からすればささいです」

「なるほど。もうひとつは」

「もうひとつは、専門書入門ですね。お花の中でもバラについて書かれている本で、子供にも分かりやすいように物語調になっているんです。ほら、中に写真もあるでしょう」

「ふぁ、ファンタジーにします」

虫が出てきたらヤダったので、ファンタジーにした。

「そうですか。それでは、こちらの二冊はこちらで返却しておきますね」

「ありがとうございます」

「こちらは借りられますか?」

「是非」

「会員カードありますか?」

「鞄に。持ってきますので、待っていてもらってもいいですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます。取りに行きます」

鞄の置いてある席まで移動し、カードを取り出す。

受付カウンターまで移動して戻る。

「お待たせしました。これが私のカードです」

「ありがとうございます」

「ちょうど更新日に近いので更新しておきましょう」

「お願いします」

良かった今日図書館に来て。

あっという間に手続きは終わった。

ファンタジーの本と会員カードを持って座席へ移動する。

自分のドリルだとか筆記用具はあった。

安堵する。

水筒から水を飲む。

トイレに行き、戻ってくると、もうお昼近くなっていた。

移動の時間も考えるとここをもう出た方がいいだろう。

鞄の中に仕舞って片づけていく。本も借りられた。二週間期間がある。

忘れ物チェックをして、図書館を後にして、スーパーへ寄って、家に帰って食べよう。

「いざ、参らん」

頭の中には「行かん」と浮かんでいた。

頭をひねるも答えは来ず。

まぁ、いいか。

と進む。

行きの緊張はなんだったのか、帰りは何を食べようかと考えながら歩いていたら、行きに立ち寄ったあっという間にコンビニエンスストアも通り過ぎていた。

トイレ行っとけばよかったか。

いやいや、あの店はそういう店じゃないから。買い物する場所だから。

そうだったそうだったと、また前進する。

水の残りも少しとなってきた。

スーパーにようやくたどり着いた時は、スーパーの店内の涼しさに癒される。はぁ、ありがたや。

ここのスーパーには無料のドリンクの機械が置いてある。そこで、お茶を選んで飲む。

小さな紙コップで提供されるそれはとても重宝されていて、歩いて来店するお客様に喜ばれている。特に夏場のご来店の子供たちに人気だ。

「どうぞ」

後ろに並んでいた女性客に場所を譲る。

「ありがとう」

にぎやかな店内に流れる音楽を心地よく聞きながら、今度はお弁当コーナーへ移動する。

お弁当の中でも良心的価格のものを確認していく。

値段を見て安いのを量もそこそこあるものを、と。今日はかつ丼と天ぷらうどんが安く出ていた。

うどんにはお稲荷さんもついている。有難いなぁ。ご飯欲しいときあるもんね。

まぁ、かつ丼選ぶけど。

かつ丼を選んで、持ってレジに行く間にお財布に残っているお金の数を思い出す。

「足りる足りる」

呪文でも唱えるように、言い聞かせてレジに並ぶ。

顔なじみになった女性店員さんだ。

「いらっしゃい。今年の夏もこっちに?」

「そうなんです。両親の仕事で叔母の家にいます。一か月くらい居る予定なので、また宜しくお願いします」

「まぁ、こちらこそ、いつもごひいきにしていただいてありがとうございます。お箸付けますか?」

「大丈夫です」

「そうですか。これよかったら、おばちゃんの出悪いけど」

「それこそ悪いですよ」

「いいのよ。直ぐに買えるし。グミとか嫌い?」

「いえ」

「じゃ、持って行って。今なかなか子供孫連れて帰ってこないからなんだかねぇ、おばちゃんあげたくなっちゃったのよ」

「なるほど。では、遠慮なく」

「そうそう」

お金を支払う。お釣りをしまいながらおばちゃんの渡してくれたものを手に持つ。

「グミありがとうございます」

「当分摂取して夏休みの宿題頑張ってね」

お辞儀をして、鞄の中にビニール袋に入れてくれたお弁当を入れる。財布も仕舞う。

もう一度お茶が飲みたくなった。

並んでお茶を飲む。

「あぁ、麦茶以外のお茶が身体に染み入る」

「わかるわ、それ」

気が付いたら声に出していた。

隣のおじさんが返事をしてくれた。

「ここじゃないと、烏龍茶とか他のお茶飲まないもんなぁ」

「たしかに」

「じゃ」

「はい、では」

店内のBGMを後ろに、外に出る。

外気温の高さが今の気候を教えてくれる。

別世界だった。

ここから家まではあと少しだ。

ご飯を楽しみに、歩いているとあっという間に帰ってこれた。

家に帰ると、美幸ちゃんは帰っていなかった。

ひとりの寂しさはあるが、だからといって拗ねるほどでもない。

私も大きくなったなぁと自分で自分に関心して、コップにお茶を淹れて、テーブルに置いて、お弁当を温めて、昼食の時間とした。

「いただきます」








いかがでしたか。移動は歩き、叔母の家。美幸ちゃんからのアドバイス。行く先々で出会う大人の人とのコミュニケーション。あんな感じの一日を過ごしたこともあったなぁと出かけることがおっくうだった私に教えてあげたいと思いました。歩いて祖父母の家に行ったことあるよねって。

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