最早ただの夫婦
「「「ただいま~」」」
「あっ、パパ……!」
「パパじゃないぞー。一人にしてごめんな、シャル」
シャル。俺の娘を名乗る第二の存在であり、鮫の亜人で外が苦手、来年からフェリル含め小学生なのに心配である。
「ん。シャルは気にしてない」
本当に気にしてないなら、あんな声出さないだろ……甘やかしたろ。
「ほら、フェリルもおいで」
「やったー!」
俺が呼ぶとフェリルは俺の膝にダイブ。シャルもおずおずと頭を乗せる。フェリルは頭のてっぺんをガシガシされるのが好きでシャルは背鰭や尻尾を撫でられるのが好きらしい。
俺は、ただなんと無く二人との出会いを思い出す。
フェリルは雨の日に外で倒れていたのを保護し、シャルは依頼で助けた時になつかれた。我ながら奇抜な縁である。
そもそも、亜人は人間に産み出された人種であり、それは俺もだった。遺伝子組み換えや生殖など、色々な方法があるらしいが、今では全て失われた技術だ。だって俺の父が全部消したから。ついでに人権も保証してくれた。マジナイス。見た目は人間が耳や尻尾を付けてコスプレしたようなものだ。本当は俺だってこの二人を娘にしたいが未成年のためできない。嘆かわしい……。
「辰己。今日は私がお風呂入れようか?」
「おう。頼んだぞ紅久留。……あ、そうそう」
「どうかした?」
「いや、俺もそろそろ配信者になろうかなと思ってな」
「最近有名だもんねぇ、doragnさん」
「だな。さすがにそろそろ無名はキツくなってきた」
俺がdoragnだということはもうばれているのだが、ファンとの恒例行事として、未だに知らないことになっている。これはファン全員だ。
「じゃあウィスタのチャンネルでも宣伝しとくね。ドラさんから電話あったよって」
「頼んだ」
「じゃあ二人とも、ママと一緒にお風呂入ろうね!」
「「分かった、紅久留」」
……意地でもママって呼ばないんだよなぁこの娘達。
「……もういっそ家族チャンネルみたくしてもいいんだが、紅久留が可哀想か」
ダンジョン配信はするつもりだ。だが、家族チャンネルみたくするなら紅久留が既にV配信者として活動しているため、困ってしまう。他に彼女を作る気はないし。
「取り敢えず、二人の意思次第か……」
フェリルは絶対嬉しがる。シャルも紅久留に憧れている様子がちらちら見るが人見知りなところがあるからなぁ。取り敢えず訊いてみるか。
俺は浴室のドアをノックする。
「あれ?なにかあったの?」
「いや、特には。二人に訊きたいことがあってな」
「パパー?いるの?」
「えいやーっ!」
「わっぷ!……リーちゃん、やったねぇ?」
「「きゃっきゃ!」」
きゃっきゃと楽しそうに遊んでいるようだ。……俺も入ろうかな。狭いだろうけど。
「入ったらダメだよ?狭いし」
「なら明日温泉行こう。皆で入れるとこ」
「パパとお風呂!!」
「シャルは本当に風呂好きだなぁ」
「リーも好き!」
「そうか。……ま、あとでいいや。アイス買ってくるけどなにがいい?」
「ミルク!」
スッパァンと勢いよく風呂のドアを開けるフェリル。もちろん奥にいる他二人の裸も見えるが、片や娘、片や愛しい恋人なのでお互いに全く恥ずかしくない。
「おぉう……風呂場で走るんじゃないぞ」
「シャル抹茶がいいー」
「相変わらず渋いねぇ……あ、私は辰己と同じのがいいな」
「了解」
二人の気持ちは後で聞くとして俺はコンビニまでひとっ走りするのだった。
やっぱり、鮫亜人は必要だなって……。かわいいじゃん。




