【バ美肉】少女モードオンライン! ログイン→強制美少女化!誰もがTSゲーム【短編】
※短編バージョン
連載版もあるので、そちらもヨロシクです。
【SMO】少女モードオンライン
第1話 ログイン:少女たちの開戦
風が、やたらとドラマチックに指先をすり抜けた。
現実のそれより湿度も温度も低い、VR特有の風だ。
ログイン完了。世界が開けた瞬間、眩しい草原の光が五人の少女を包む。
新作VRMMO《少女モードオンライン》
その名の通り、全プレイヤーが「少女アバター」で冒険するファンタジー世界である。
「うわ……ガチで全員、美少女じゃん!」
リーダーのユイナが、湖面に映る自分を見て歓喜の声を上げた。金の髪、透ける肌、無垢な瞳。
──完全に別人である。
「この髪の揺れ方、物理演算が神がかってるわね」
ナノが分析官のように落ち着いた口調で言う。
「てか見て! まつ毛の影、ちゃんと動く! これは神ゲー!」
ルルが興奮気味に顔を寄せてくる。
「わたしはピンク髪……可愛すぎて吐きそう!」
マリーは、手に持った杖をくるりと回し、中二病全開のポーズを決める。
「我が魔力、ここに具現せり……! フィールド・オープン!」
「チュートリアルスライム相手に詠唱すんなって! もう出てきてるぞ!」
ユイナが間髪入れずツッコミを入れる。
そして最後に、白い外套を翻して一人立つ。
「みんな、準備はいい? 最初のクエスト、受けるよ」
静かな声の少女──シオン。
その立ち姿は無駄がなく、妙に姿勢が良すぎた。
「任せて! 私、剣スキルだけは上げてきたから!」
ルルが胸を張る。
「いや、だからまだチュートリアルなんだってば!」
「細かいことは気にしないのが、このゲームの流儀でしょ?」
スライムを斬り、魔法を放ち、やたらとキラキラした花びらが舞う。
笑い声とエフェクトの光に包まれて、ギルド《リリカルハーツ》の冒険は、この美少女地獄の草原から始まった。
第2話 ぷにぷにの森の大混乱
青い葉が生い茂る「ぷにぷにの森」
フィールドBGMは、幼児向け番組のようにやけにのどかだ。
「スライム、また出現!」
ルルが剣を構える。
「可愛いけど、なんかヌルッとした手応えね」
ナノが分析ウィンドウを開く。
「HPバーの減り方が、ぷにぷにしてる割に粘るね」
「つまり、ぷにぷにしてるだけの耐久型か……! ユイナ、いくよ!」
だが、次の瞬間。
「きゃっ! 間違えて『キュートポーズ』が出た!」
ルルが操作を誤り、アバターがぶりっ子ポーズと共にハートマークを撒き散らす。
「おい、敵全員こっち向いたぞ!?」
「挑発効果ついてるの!? このエモートに!?」
「ルル! それ攻撃じゃなくて、誘惑だよ!」
ユイナの悲鳴が森に響く。
マリーの魔法が炸裂し、スライムは爆音と共に弾けたが、爆風に乗ってピンク色の花びらエフェクトが大量に舞い、視界がピンク一色になる。
「見えない! 敵どこ!?」
「味方もスライムも花もピンクで、もう何が何だか!」
混乱の中、シオンだけが静かに前に出る。
「落ち着いて。私が回復する」
《ライト・ヒール》が放たれ、全員のHPバーが効率よく回復。
光が晴れたとき、スライムたちは消えていた。
五人の少女が顔を見合わせる。
「……今日の戦い、なんか色々『ぷにぷに』してたね」
「語彙の壊滅っぷりよ」
「でも楽しかったから全部OK!」
ログアウト直前、ユイナがつぶやく。
「やっぱこのゲーム、中身がどうあれ最高だね」全員がうなずいた。
第3話 花の祭典イベント!
春限定イベン《花の妖精祭》。街の広場は、花のアーチとファンシーすぎる装飾で埋め尽くされていた。
「今日の目的は、花びら収集と防御値が怪しい衣装ゲットね!」
ユイナがミッションリストを確認する。
「わー! このスカートが短すぎる衣装、可愛すぎ!」
ルルが試着ウィンドウをタップする。
「一応、魔法布製で防御値は上がるらしいわよ。倫理観は下がるけど」
ナノが冷静に分析する。
マリーはステッキを構えて、いつもの詠唱を始める。
「我が花の魔力よ、解き放たれよ! スプリング・ブレイク!」
「マリー、イベントでまた変なスキル名考えてきたな!」
ユイナが苦笑する。
その背後で、花の冠をかぶった妖精型モンスターが襲いかかる。
「来たっ、戦闘入るよ! シオン、前衛お願い!」
シオンが前衛に出て剣を構えた。光の粒が舞い、冷静な一撃が花を裂く。
「うおおお、シオンの安定感、マジかっけー!」
「うん、頼もしいね! スクショ撮っとこ!」
イベントクエストを完走し、全員が特典の派手な花の冠をかぶる。
「はい、強制集合写真撮るよー!」
ユイナがエモートで無理やり全員をカメラに収めようとする。
「笑って! 三、二、一……キュートポーズ!」
”カシャッ”
フィールドの花びらが風に舞い、無駄に可愛いポーズで五人の少女が並んで微笑んでいた。
《リリカルハーツ》、初の公式イベント参加記念写真。
第4話 ギルドダンジョン突入!
ついに到達した高難度エリア《黎明の迷宮》
「これ、敵のレベル明らかに高くない?」
ナノが数値を確認する。
「ここクリアしたら称号もらえるんでしょ? 《春風の五乙女》……絶対ほしい!」
ルルが燃えるような目をする。
進むたびに罠が飛び出す。
「宝箱だ! いいもの入ってるかな? 開けるね!」
ユイナが勢いよく蓋を開く。
”ドンッ!!”
爆煙!
全員のHPがごっそり削れる。
「ちょっ……ユイナ!? 何開けてんのよ!」
「わ、わたし……善意で……」
「善意が私たちを殺すところだったんだよ!」
混乱しつつも、シオンが冷静に指示を出す。
「回復入れる。マリー、後衛支援。ユイナ、あなたは前に出ないで」
「りょ、了解!」
ボス戦。巨大な機械ドラゴン。全員のスキルがまるで事前に打ち合わせしたかのように連携し、光の渦が渦巻く。
(シオンの指示、精密機械かよ)ユイナは内心ツッコむ。
勝利のファンファーレ。ログが流れる。
《称号:春風の五乙女 獲得!》
「やったー!」
「最高! 例の短すぎる衣装に着替えてスクショ撮ろ!」
そして、ログアウト前にユイナが言った。
「ねぇ、今度リアルで会ってみない?」
「オフ会!? いいじゃん、楽しそう!」
「緊張するなぁ……」
「大丈夫、みんな仲良しだし!」
──そして、第5話 《リアル・ガールズ・フィナーレ》へ。
第5話 リアル・ガールズ・フィナーレ
春の夜、街角のカフェテラス。
光る看板に「GMOプレイヤーズオフ会」の文字。
待ち合わせ場所には、五人の影が並んでいた。
制服姿、スーツ姿、私服。誰もが美少女アバターとは似ても似つかない姿で、少しだけ緊張している。
「や、やぁ……はじめまして、ユイナです」
一人目が頭を下げる。声が低い。
「ルルだよ?! うわぁ、なんかリアルで会うの妙に新鮮!」
「ナノです。……なんか、アバターとギャップありすぎて照れますね」
「マリーです。実物は魔力どころか筋力も少なめです」
「……シオンです。よろしくお願いします」
五人は笑って、乾杯した。――全員の喉仏が動く。
談笑:真実の瞬間
最初のうちは、ただの世間話。ゲームの戦闘バランス、イベントのバグ報告。
「ねぇ、みんな声、思ってたより低いんだね」
ルルが笑う。
「ボイチャのフィルターで加工してたからなぁ」
ユイナが肩をすくめる。
「私もだよ。女の子ボイス設定、デフォルトでONだったし」
「そうそう、あれ切るとゲームの雰囲気壊れるもん」
そう言って全員が笑った。カフェの照明が揺れる。
一瞬の沈黙──。
「てか、さ」
ナノが言った。空気を切り裂く、乾いた声で。
「今さらだけど……」
「……うん?」
「みんな、リアルでも一応、女の子なんだよね?」
その瞬間。世界が止まった。
ユイナがテーブルの下で足を組み直し、ルルが笑いをこらえすぎて顔が赤くなり、マリーが紅茶を吹き出し、ナノが自身の問いの重さに固まる。
「……え、違うの?」
ナノの声がアバターボイスのように震える。
そして、ほぼ同時に。
「「「「実は俺、男なんだ……!」」」」
カフェの空気が爆発した。
「ええええええええええ!? 全員かよ!」
「じゃあ、シオンは!?」
全員の視線が、妙に姿勢の良い最後の一人に集中した。
白いマグカップを持ったシオンは、目をぱちくりとさせていた。
「……わたし? 女だけど?」
沈黙。誰も動かない。コーヒーの香りだけが広がる。
そして。
「「「「あぁ……やっぱりな」」」」
なぜか全員、妙に納得したようにうなずいた。
シオンは困惑して首をかしげる。
「え、えっと……?」
「いや、なんか冷静すぎる動きでそうかなって!」
「だよね! ゲーム中の指示の的確さでわかった!」
「……ほんとに?」
「うんうん、たぶん、たぶん!」
(……いや、絶対今知ったよね)
シオンは心の中で小さく、そして慣れたようにため息をつく。
帰り道:エピローグ
オフ会が終わり、夜風が頬を撫でる。
別れ際、ユイナがつぶやいた。
「なんかさ……笑いすぎて疲れたけど……」
「ん?」
「現実で会っても、やっぱみんな『仲間』って感じだね」
「わかる」
「性別とか年齢とか、もうどうでもいい感じ」
シオンが微笑む。
「うん。ゲームの中では、みんな同じ『少女』だったもん」
「……そうだな」
笑い声が重なり、夜の街に溶けていく。
次の日。《少女モードオンライン》の草原に、五つのアバターが並んでいた。
「今日もクエスト行くよー! ユイナ、宝箱は開けるなよ!」
「うす!」
現実では、それぞれ違う顔、違う年齢。
けれどゲームの中では、いつまでも同じ最高のチームだった。
光があふれ、ログイン音が響く。
──《リリカルハーツ》
今日も可愛く再出陣!!
【完】