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炎とトカゲと元王子

「……でさ、何をどうしても、村の職人たちは、ハンマーは貸さんって言うんだよな」


カンナの鍛冶村に入って一晩。村の広場にて、バスが腕を組んでふんぞり返っていた。


「そりゃ記憶喪失のドワーフが、俺は鍛冶屋だって名乗ってもねぇ……」


「ぐ……認められるには、結果を出すしかないのか……」


「ノイ〜」


悠真とノイがあきれたように見ていると、村のはずれから騒がしい声が上がった。


「火が出たぞーっ! 森だ、森が燃えてるー!」


「またか!? この一ヶ月で三度目じゃねぇか!」


「誰か、消火の魔法を――っ!」


「消火……魔法……?」


悠真の脳裏に、なぜか浮かんだ言葉は、火ではなく竜だった。


====


森へ向かうと、そこはすでに小規模ながら火の手が上がっていた。だが、村人たちは近づこうとしない。


「森の奥に……何かがいるって噂があってな」


「何かって……?」


「燃えてるのは確かだが、火の中心に誰かいるらしい。誰も近づけねぇ」


悠真はノイと目を合わせた。


「行くよ、ノイ。見捨てるわけにはいかない」


「ノイ!」


そして、バスも背後から言った。


「ふっ、男が一度火花を見たら、飛び込まずにいられるものか」


「名言風だけど、意味があるようでない!」


====


火の中心に、確かに『それ』はいた。


リザードマン――だが、鱗は艶やかな黒。尾は王者のように太く、何より瞳に知性と怒りが宿っていた。


「……人間か」


その声は低く、だがはっきりとした言葉だった。


「喋った!? 喋る系モンスター!?」


「違う。俺は……ザイド=ラナクス。かつて、この地の王だった者だ」


「かつて……?」


話を聞けば、彼はこの国の辺境で、リザード族の王子として育てられたが、ある日、国が滅び、すべてを失ったという。


「なぜ火を……?」


「身を守る術だ。俺の吐く《竜火》は制御が難しい。だが、それ以外に……俺にはもう何もない」


その言葉に、悠真は胸を締め付けられた。


「……それ誰かに伝えた? 助けを求めた?」


「必要ない。俺は一人で立つ」


「だったら、なおさらだよ!」


悠真が踏み込んだ。


「一人で立てるなら、誰かの隣にも立てる。今の俺だって、ノイがいて、バスがいて、それで……何とか歩けてるんだ」


ザイドは目を見開いた。炎が少しだけ弱まった。


「お前は……弱いのか?」


「そりゃもう!」


「……正直か。だが嫌いじゃない」


その時――森の奥から低い唸り声が聞こえた。


「来るぞ、あれは……」


現れたのは、魔獣。四つ目を持つ熊のような異形の存在。


「フォーレイジ・ビースト!? あれ、ゲームで見たような……!?」


悠真は棒を構え、バスは拳を握る。だが、ザイドが先に前へ出た。


「……王子だった俺は死んだ。だが、今ここで――」


彼の口から、真紅の炎が迸る。


「今の俺を生かすのは、この竜火だ!」


ビーストの突進を、ザイドが火で止める!


悠真とバスがその隙に飛び込み、ノイが「ノイッ!」と叫んで地面を爆発させる。


「またそれか!?」


だが、その一撃が決定打となり、魔獣は地響きを立てて倒れた。


====


戦いの後、ザイドは小さく言った。


「……王子でなくても、人は誰かのために戦えるのだな」


「なに名言風になってんの?」


「ふっ、俺も誰かの隣に立ってみたくなった。旅に連れて行ってくれ」


「え、あ、はい」


「ノ〜イ♪」


三人と一匹となった放浪団は、再び歩き出す。


次なる出会いは、耳と尻尾のあるツンデレ魔法使い――


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