スピンオフ特別編:勇者たちの晩餐会
(対談が終了したあと、舞台はリラックスムードの別室に移る。
木製の大テーブルを囲むように、食器が並び、香ばしい香りと温かな照明が漂っている。
司会のあすかも交えて、勇者たちが“素の表情”で語り合っている)
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料理と飲み物の紹介
あすか(笑顔で両手を広げて):
皆さん、お疲れさまでした! 対談のあとは、やっぱり美味しいものがないと始まりませんよね。
今日は皆さんに、それぞれ「自分がすすめたい一品」を持ち寄っていただきました!
(拍手と笑いが起こる)
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源義経の一品:鶴の子餅と温かい甘酒
義経(やや照れくさそうに):
私の第二の故郷、奥州平泉の“あんころ餅”です。
平泉では、節目ごとに餅を食べるのが習慣で、いつどのような種類の餅を食べるかを表す「餅歴」まであるのです。
もっちりとした餅に、なめらかな餡……戦の合間によく口にしたものでした。
そして、これが温かい甘酒。体が芯から温まります。
ジャンヌ(ひと口食べて、うっとりと):
やわらかくて…なんだか、懐かしい味がします。
これは戦の疲れも取れますね。
マキャヴェリ(興味深そうに):
甘くて不思議な飲み物だ。…酒と名がつくのに、酔わないのか?
義経(微笑んで):
はい。甘いだけの“善なる酒”です。
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ジャンヌ・ダルクの一品:ポタージュ・サンジェルマンとブリオッシュ
ジャンヌ:
私が用意したのは、グリーンピースのポタージュと、ふんわり焼き立てのブリオッシュです。
農村で過ごしたころ、豆のスープは母の味でした。素朴ですが、心が落ち着きます。
老子(スプーンを口に運んで):
ほう…これは、まさに“柔らかなる道”。
体に逆らわぬ味、よい気が流れておる。
義経:
このパン、ふわふわで上品ですね。
戦のあとの食事が、こんなに優しいものだったらなあ…。
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マキャヴェリの一品:トスカーナ風ワイン煮込みと赤ワイン
マキャヴェリ(自信ありげに):
イタリアは料理にも政治と同じだけの情熱を注ぎます。
私の一品は、牛肉の赤ワイン煮込み“ペポーゾ”。
粗挽き黒胡椒をきかせ、ワインでじっくり煮込んだ逸品です。
そしてもちろん、トスカーナの赤ワインを合わせて。
ジャンヌ(口に入れて、驚いたように):
……これは! すごく深い味わいですね……温かくて、力が湧いてきます。
老子(ややしかめ面で):
少々、刺激が強い。……だが、意外と気は整う。
マキャヴェリ(笑いながら):
“権力”の味は、強いからこそ癖になるんですよ。
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老子の一品:蓮の実粥とジャスミン茶
老子(静かに器を置いて):
私は蓮の実と米の粥、そして無香料のジャスミン茶を。
人は食においても、過ぎたるを慎むべき。
この粥は、静かに心を整えます。
マキャヴェリ(冗談っぽく):
まるで“心のブレーキ”のような食事ですね。
……でも、妙に落ち着きます。
ジャンヌ(お茶を一口):
この香り、すごくやさしい……。
皆さんの味、全部違うのに、どれも“勇”の在り方を表してる気がします。
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ほろ酔いトークと笑顔の応酬
ジャンヌ(頬を赤らめて):
こうして皆さんと“勇者談義”ではなく、ただ美味しいものを囲めるのって……不思議ですね。
義経:
まったくです。あなたと、こんな風に笑って餅を食べる日が来るとは……戦の最中には想像もできませんでした。
マキャヴェリ(ワインを回しながら):
対話というのは、剣より強い。
ただし、ワインの量には注意だ。真実がぽろっと漏れるからね。
老子:
それもまた、道の流れのままに。
あすか(笑顔で):
今日ここに集まったのは、奇跡かもしれません。でも、こういう奇跡は……たまにはあっていいですね。
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最後の乾杯
(全員がそれぞれの器や杯を持ち上げる)
義経:
敗れても、語り継がれる“勇”に――
ジャンヌ:
燃やされても、残る“希望”に――
マキャヴェリ:
現実の中の“理想”に――
老子:
そして、道を歩むすべての者に。
あすか:
――それでは、乾杯!
全員:
乾杯!
(笑い声と湯気、香りと笑顔が溶け合う夜。
歴史を越えた“勇者たち”が、今、ひとときの平穏を共に味わっていた)
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― 完 ―